
神奈川県川崎市川崎区にあるAOI国際病院は、急性期、回復期、慢性期に対応するケアミックス病院として多様な医療サービスを提供しています。近年は救急医療への需要が高まっており、緊急入院が増え、受入先となる急性期病棟にはその影響が生じてきていました。これを受け、看護部では緊急入院受け入れ体制の改革に着手。看護職が働きやすい環境づくりを目指した取り組みの様子をご紹介します。

緊急入院の増加に伴い急性期病棟の業務を見直し
AOI(エーオーアイ)国際病院では、2018年の救急外来開設後、二次救急指定病院として緊急入院が増加しています。現在の救急搬送件数は月平均約200件。4割が緊急入院となり、それらを症状に応じてICUか急性期病棟で受け入れています。
看護部長の佐藤直也さんは「当院はケアミックス病院で急性期病棟が2単位(4階・5階)しかなく、ICU以外の緊急入院はそこで受け入れることになります。救急搬送の増加に伴って、予約入院と緊急入院が多い日だと10件以上になることもあり、この対応に追われて、病棟の看護職は疲弊していました。何とか負担軽減しなければと考えました」と話します。そこで、この状況を改善するため緊急入院患者受け入れ専用の病床を設けることにしたのです。
2022年4月、もともとあったHCU4床に一般病床4床を加えて転用し、「救急受入病床」をスタートさせました。緊急入院の患者さんは、ICU対応以外は、すべてこの病床で受け入れます。ここでワンクッション置くと、その後の一般病棟での受け入れが計画的に行えるようになるといいます。
「24時間体制で5名の看護師(日勤3名、夜勤2名)を配置しています。緊急入院が立て込むケースを想定して、安全で円滑に対応できることを最優先に考え、手厚い人員配置にしています」(佐藤さん)
毎朝の看護部ミーティング後にベッドコントロー ル会議を開き、基本的に入院翌日の転室を目指し、救急受入病床患者さんの転室先を決めています。


救急受入病床の設置が看護職の働き方にもたらした効果
「救急受入病床ができたことで、一般病棟にはゆとりが生まれました。何よりスタッフの残業時間が半減しました。受け持ち患者さんとかかわる時間も増し、心にもゆとりが生まれているようです」
こう話すのは4階病棟師長の野口沙果実さん。救急受入病床による効果を体感しています。同病床は4階病棟の一部分を利用していますが、以前はこの病床に単独で師長を配置していました。体制の安定に伴って、2022年12月からは4階病棟師長が一般病床と併せて管理しています。その先には、スタッフをローテーションさせるという構想がありました。
「救急受入病床では短期間の看護を数多く繰り返します。ですから、継続看護という観点からはやりがいを感じにくい。スタッフからの要望もあり、一般病棟と救急受入病床のスタッフを一定期間でローテーションさせることにしました」(野口さん)
ローテーションは2023年4月から開始。まずは業務に慣れたスタッフ2名を固定とし、残りのメンバーを1カ月単位で入れ替えることにしました。





看護職の思いに配慮しながらよりよい改革を目指す
4月から救急受入病床に入った4階病棟看護師の山下綾子さんは「救急受入病床は全診療科対応。知らない疾患にも出合うので勉強になりますね。30分おきに2〜3人が入院することもあり、そのときは確かにバタバタしますが、みんなで分担できるので、今のところ負担を感じることはありません」と話します。手が空けば患者さんとかかわる時間も長く取ることができ、家族から情報を得る機会も多いそうです。「ここで初動対応を経験すると、一般病床に戻ったときに入院時の症状も理解しやすく、患者さんのその後の管理にも活かせそうです」と、新しい環境での学びに意欲をみせていました。
「救急受入病床は、働く看護職のやりがいや思いへのフォローがより重要な部署であることを、看護部としてこの1年間で学びました。今後も、そこに配慮しながら、修正を重ねて体制をブラッシュアップさせていきたいと思っています」(佐藤さん)
組織がこれまでの体制を変えることは容易なことではありません。しかし「看護職の働き方改革のためにはやらなければいけないこと」と佐藤さん。今後はさらなる体制の充実も検討するとのことで、よりよい職場環境づくりはまだ続きそうです。
DATA
医療法人社団葵会 AOI国際病院
神奈川県川崎市川崎区田町2-9-1
https://www.aoikai.jp/aoiuniversalhospital/
開設 ●2013年
病床数 ●328床
職員数 ●700名 うち看護職243名(2023年5月1日現在)
看護体制 ●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/二次救急指定病院
[病棟構成]一般急性期病棟1床14床・集中治療室6床・医療療養型病棟120床・回復期リハビリテーション病棟60床・緩和ケア病棟28床

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2023年8月号 TiaraNo.144より転載しています。
