
出水総合医療センターは、鹿児島県の最北、熊本県に隣接する出水市の医療を支える基幹病院です。地域に根ざした医療を展開する同院の看護部では、より人々に喜んでもらえる看護を目指し、さまざまな取り組みを行っています。看護管理者研修もその一つ。各部署の中堅管理者を育成し、患者さんに求められる看護の実践に結びつけようとしています。今回は2022年度の活動の様子をうかがいました。

多様な看護管理者研修のなかで近年の注目株は「看護実践計画」
出水総合医療センター看護部で看護管理者研修(以下、管理者研修)が始まったのは2009年度です。「対象は師長・主任といった中堅の管理者で、研修内容は年度により必要に応じて変わります。看護部の柱である科学的看護論に基づいた事例検討会を実施したり、ワールドカフェスタイルで自部署をアピ ールする時間を設けたりと、硬軟とり混ぜたものにしています」と同院副看護部長で教育担当の溝下晴美さん。2022年度はここ数年同様、看護実践計画書*を活用した研修を実施しました。
「テーマを選択し、自部署の現状分析をして計画を立てるので、看護師の多くが苦手意識をもつデータの収集や分析の仕方などを学習できます。さらに課題解決が現場での実践につながるため、研修終了後の発表者の達成感も大きいようです」(溝下さん)
2023年3月9日の発表会では10名が研修成果を披露しました。今回から、これまで看護部が行ってきた講評を所属長が担当。身近な上司の親しみのこもった言葉は、発表者の励みになったようです。
*看護管理者が自組織の課題を発見・明確にし、その課題に取り組むために作成する行動計画書。
2022年度研修で成果をみせた管理者たちの発表から2題
外来副師長の冨永美佐子さんは「大腸内視鏡検査前の転倒リスク評価の標準化」をテーマに看護実践計画を立案・実施しました。大腸内視鏡検査前に検査対象者に使用している確認表を見直し、転倒リスクを点数化してスタッフの熟練度や経験に頼らない統一した評価ができるようにするというもの。「収集したデータから、全国平均よりも当院の検査対象者の高齢化が進んでいる現状がわかり、患者さんの安全のためにはより確実なリスク評価が必要だと感じました」と冨永さんは言います。
「通常業務内で行ったため、外来スタッフ全員による評価の実施は難しかったのですが、『点数での評価がわかりやすい』との声もあり、定着に向けた取り組みにつながればと思っています」(冨永さん)
外来師長の岩下睦さんは「冨永さんは一人でどんどん進められる人だけに、むしろスタッフを指導して実践してもらうことに難しさがあった。それを学べたのではないかと思います」と評しました。
一方「感染症病棟勤務における不安軽減への取り組み」について発表したのは感染症病棟主任の瀬涯里美さん。同病棟は、急性期病棟からローテーションで2〜3名の看護師が2カ月ごとに配置される体制です。初めて業務に就くスタッフは不安を感じることが多いため、事前にオリエンテーション冊子を各自に配布し、その軽減を図ることにしました。
「事前に感染症病棟と感染対策への理解を深めてもらうことで、不安を和らげるとともに、習得した知識と技術を自部署での感染症対応に役立ててもらうことを目指しました」(瀬涯さん)
配属者にアンケートを実施したところ、不安の有無が勤務前後で83%から33%に減少。事前および配属中に冊子が活用されたこともわかりました。「頑張った甲斐がありました」と瀬涯さん。
「初めての看護実践計画だったにもかかわらず、コツコツ派の瀬涯さんらしく順調に進められたと思います。私自身も発表が楽しみでした」と、感染症病棟師長の谷口由美さんは話しました。



次につながる研修が生む効果、指導者を視野に入れた研修の実施も
2023年度管理者研修を受けている脳外科外来主任の古田さと子さんは「緊急搬送で入院した患者さんの病棟訪問を行いたい」と進め方を計画中。「2022年度の発表が刺激になっています」と話します。
このような研修成果の連鎖は、人材に加え管理者研修自体もボトムアップさせると溝下さん。今後は、科学的看護論による看護実践の再確認も行いたいと、院内教育について語ります。
「そのためにも、指導者となる管理者の育成を視野に入れて研修を構築する必要があると考えています。まずは、看護部の理念をベースに管理的視点を伸ばしていきたいですね」という溝下さんの言葉に、同院看護部の今後の歩みがみえてきました。




DATA
出水総合医療センター
鹿児島県出水市明神町520
https://www.hospital-city.izumi.kagoshima.jp
開設 ●1925年
病床数 ●261床
職員数 ●500名、うち看護職185名(2023年8月31日現在)
看護体制 ●一般病棟10:1
日本医療機能評価機構認定病院/災害拠点病院(地域災害医療センター)/鹿指児定島病県院災/害鹿派遣児医島療チーム(鹿児島県DMAT)県がん診療指定病院/へき地医療拠点病院/地域医療支援病院

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2023年12月号 TiaraNo.146より転載しています。
