
大学が有する学部と連携して多角的な医療を展開している名古屋市立大学病院。地域拠点病院として診療所や医師会と連携し地域医療を支えるほか、新たな取り組みも進めています。 2022年度診療報酬改定では術後疼痛管理チーム加算が新設されましたが、同院ではそれ以前から術後回診チームを始動させ、患者さんの苦痛の低減とより早期の回復に取り組んでいます。その活動の様子をメンバーの皆さんにうかがいました。

患者さんへの最善を目指し術後回診チームを段階的に構築
名古屋市立大学病院の術後回診チーム(以下、回診チーム)は、中央手術部看護主任(当時)*1の岡田悠揮さんが麻酔科医師とともに、周術期管理で患者さんにとっての最善を目指したいと立ち上げました。メンバーは麻酔科医師、中央手術部看護師、薬剤師、臨床工学技士*2。まずはIV-PCA*3患者さんを対象に、2016年に週1回の回診からスタートしました。これは、同院の周術期ケアセンター開設(2019年)、診療報酬術後疼痛管理チーム加算*4新設(2022年)に先駆けてのことでした。
「当時は多職種によるチーム医療が盛んになってきたころでしたが、回診チームの活動に対する院内の理解にはまだばらつきがありました」と話す岡田さん。そのため、院内外での活動報告や研究発表、IV-PCA患者評価プロトコルの作成、チームロゴの作成などにより、他職種とともに周知を図りながら段階的にチームの活動を確立していったといいます。
「多職種が協働して術後患者さんに総合的なケアを行い、術後の早期回復、合併症の低減、患者満足度の向上につなげることを目標に掲げ、職種ごとの役割も明確にしました」(岡田さん)


チームに参加したことで変化や気づきを得たメンバーたち
現在回診チームの活動は毎平日行われています。朝のブリーフィング*5で当日の回診メンバーが訪室対象を抽出し、9時30分〜11時の間に10人程度の患者さんを回診します。IV-PCA、硬膜外麻酔、一晩のみのPCA、神経ブロックなどの疼痛コントロールを施行している術後患者さんが主ですが、合併症が生じていたり、病棟から依頼があった場合も対象としています。回診後には振り返りのデブリーフィング*5を実施しています。
メンバーである中央手術部看護師は現在7名。吉谷千枝さんは「術後の痛みや嘔気への対策・予防にも看護師が積極的にかかわることで、患者さんの術後の経過を変えられることを実感しています」と話します。杉本菜摘さんは「疼痛コントロールに難渋しているケースなどで、各職種から知識や経験による意見を得たときは、次に生かすための勉強は欠かしません」とチーム活動には新たな学びがあるといいます。中央手術部看護主任の榊原愛子さんは「以前から周術期には関心があり、看護師が術前訪問で得た情報を術後にも結びつけたいと考えています」といい、実際にそれがうまくいったケースについて話をしてくれました。
一方、薬剤師は5名。チームの設立時メンバーである榊原諒子(さかきばら あきこ)さんは「チームによって薬剤師のできることは大きく広がったと思います。たった1回の介入でも患者さんは覚えていらして、退院時に声をかけてもらえたときは嬉しかったですね」といい、新たなやりがいを発見した様子でした。



総合的に術後対応ができるチームとしてより多くの患者さんをフォローしたい
麻酔科医師の徐民恵(そう みね)さんは、同院にIV-PCAを導入したこともあり、設立時からチームのオブザーバ ーとしてデブリーフィングに参加しています。
「当初は皆が手探りのような状態。でも現在は、メンバー全員が多角的鎮痛法*6を理解し当然のように行っている。そして、患者さんにいかによい術後環境を提供するかというスタンスで、主治医や病棟看護師に対して提案が行えています」(徐さん)
岡田さんは「加算がついたから回数を増やすのではなく、必要な患者さんに質を担保した回診を続ける姿勢が大切」と話し、そのフォローを術後患者さんにもれなく届けるためメンバーの増員に向けて動いているといいます。看護師については評価表に基づいた人材育成が始まっており、薬剤師も術後回診への参加が新人研修に取り入れられています。
「痛みに限らず嘔気や不安も含め術後患者さんを総合的にみられるチームになったと思います。今後は病棟など院内との連携をより深めていきたい」と、岡田さんは次のステップを見据えていました。

*1 現在は看護師長で、周術期ケアセンター副センター長。
*2 ME機器の保守・管理、看護師等への勉強会などの面から参画。
*3 経静脈的自己調節鎮痛法。
*4 術後患者に対する質の高い疼痛管理を推進する観点から、多職種で構成される「術後疼痛管理チーム」による疼痛管理を評価した加算。
*5 ブリーフィングは事前に要点を報告・確認すること。一方、デブリーフィングは事後に成果の報告・評価をすること。
*6 作用機序や薬効の違う複数の鎮痛法や薬剤を組み合わせて疼痛管理を行うこと。
DATA
名古屋市立大学病院
愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1
https://w3hosp.med.nagoya-cu.ac.jp
開設 ●1931年
病床数 ●800床
職員数 ●2179名、うち看護師956名(2023年11月1日現在)
看護体制 ●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/特定機能病院/災害拠点病院/地域がん診療連携拠点病院/肝疾患診療連携拠点病院/救命救急センター/総合周産期母子医療センター/小児がん連携病院/がんゲノム医療連携病院

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2024年3月号 TiaraNo.147より転載しています。
