
岩手医科大学附属病院は、岩手県内唯一の特定機能病院として高度先進医療を提供するとともに、地域医療の中核としての役割も担っています。それだけに同院にとって医療安全は重要な柱になっており、看護師にもより高い意識が求められています。このようななかIVナースの育成を続けてきた医療安全推進委員会看護師部会では、新たな認定制度をスタートさせました。さらなるステップアップの内容をご紹介します。

医療安全の取り組みとして着実に根付いたIVナース研修
岩手医科大学附属病院では、国が医療安全対策に乗り出した2001年から「医療安全対策マニュアル」の整備を進めており、医療安全推進委員会看護師部会(以下、部会)を中心に「IVナース(以下、IVN)認定制度」を行ってきました。
「医療安全の柱の一つとして、看護師が確実な静脈注射技術を習得していることを担保するのが目的。必要なときにルート確保や採血などを適切に提供し、患者さんの負担軽減を図りたいという思いもありました」と話すのは医療安全管理部看護師長の浅尾洋子さん。部会のメンバーとしてIVN認定制度の運営を取りまとめています。
IVN認定制度は2009年度からスタートし、すでに15年を迎えます。年間約100名の看護師が認定を受けており、この制度が院内にしっかりと根付いていることがうかがえます。




IVナースとしてのステップアップと確かな技術の提供へ
多くの看護師がIVNとしての確かな技術を身に付けたため、部会では2022年度からより侵襲の高い手技を担うIVNを育成する「エクストラIVナース(以下、 EX-IVN)認定制度」を開始し、次のステップを目指すことにしました。副看護部長で部会長を務める鳥居明美さんは、「患者さんへの安全で安心な医療の提供には、医療を途切れさせない迅速性も含まれると考えました」と話します。EX-IVN認定制度の実施は、同院における看護業務の範囲拡大にもつながります。そのため、安全性を追求し、マニュアルの作成には3年に及ぶ月日を費やしたといいます。
EX-IVN認定制度では、IVN認定とラダー?修了が受講条件となります。そのうえで、研修(6月、9月、 12月に実施)を受講し、研修月の1カ月の間にデモ機でトレーニングを実施。その内容と日常業務から管理職が適当と判定した看護師を医療安全管理部に推薦・申請し、審査を通過した人がEX-IVNに認定されます。
初年度の2022年度は1回のみの研修でしたが、 2023年度からは所定の6月から研修・審査が開始されています。対象となる看護職員1200名程のうち、3割の看護職員が受講し認定されました。
「EX-IVNが中心静脈カテーテルのポートへの穿刺、抗がん剤や造影剤の投与などを実施することで、医師が不在でも切れ目のない医療提供が可能になりました。医療安全推進委員会により医師との情報共有もできており、最近は『EX-IVNはいる?』と臨床で医師から確認されることもあります」
副院長で看護部長の佐藤悦子さんはこのように述べ、EX-IVNが早くも院内で浸透しつつあることを紹介してくれました。そして、求められる場所でEX-IVNの能力を有効活用できるようなフレキシブルな対応を実践していきたいと話しました。




エクストラIVナースの取得が新たなチャレンジの後押しになる
救急病棟看護師の宮川英之さんと西6A病棟看護師の武田実緒さんは、2023年6月に誕生したEX-IVNです。宮川さんは「できることが広がり、造影CTなど検査につなぐ時間も短くなりました。その分重い責任があることを忘れないよう心がけています」と話します。武田さんも「抗がん剤投与や輸血が施行できるようになり、自分の病棟にとどまらず、他の診療科の応援に行くことも増えました」と充実感をにじませます。宮川さんは特定行為研修受講を、武田さんはLTFU研修*1受講や臨床輸血看護師*2取得を目指しており、EX-IVNの資格を得たことがその後押しになると話していました。
「2023年度から医師も中心静脈カテーテル挿入についてのライセンス制度を導入しており、院内の医療安全に対する意識はますます高まっています。 EX-IVN、特定行為研修修了者も増えており、患者さんを第一に考えた安全な環境づくりが進んでいくと思います」(鳥居さん)
*1 同種造血細胞移植後フォローアップ研修。日本造血・免疫細胞療法学会が開催。
*2 日本輸血・細胞治療学会による認定資格。



DATA
岩手医科大学附属病院
岩手県紫波郡矢巾町医大通2-1-1
https://www.hosp.iwate-med.ac.jp/yahaba/
開設●1928年
病床数●1000床
職員数●2600名、うち看護職員1232名(2024年2月1日現在)
看護体制●一般病棟7:1
特定機能病院/岩手県高度救命救急センター/基幹災害拠点病院/がん診療連携拠点病院/肝疾患診療連携拠点病院/総合周産期母子医療センター
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2024年4月号 TiaraNo.148より転載しています。
