
診療、研究、教育という大学病院の役割をベースに安心・安全な医療の提供を行う一方、高度先進医療と高度急性期医療を担うべく施設設備や組織の設置を進める京都大学医学部附属病院。そんな同院で自立した看護職員を育成するため、看護部では新入職時から着実にステップアップできるような教育体制を整備しています。その企画・運営を担当している看護管理室教育専任副看護師長のみなさんに話をうかがいました。

プリセプター制度から新人看護師を支える2つの制度へ
「当院では、組織人・専門職業人として責任を果たすことのできる能力を身につけられるよう教育・研修を組み立てています。特に、そのスタートとなる新人教育には力を入れてきました。現在は『クリニカル制度』『サポーター制度』という2つの制度で1年目の看護師を支援しています」
副看護部長で教育を担当する松野友美さんはこのように話し、新人看護師の教育体制を説明してくれました。クリニカル制度では、認定看護師をはじめ臨床経験豊かな実践能力の高い看護師を各部署に1名ずつクリニカルコーチとして配置。部署の新人教育の中心的役割を果たしながら、新人看護師に対して実践力を養う指導を行います。またサポーター制度は、新人看護師を2〜3年目の先輩看護師1名が担当し、職場や業務に適応できるようサポートするもの。2017年に、プリセプター制度から2つの制度を両輪とするこの体制に切り替えられました。
「クリニカルコーチは基本的看護技術を指導するだけでなく、新人の集合研修にも参加して、学びを実臨床での業務に結び付けられるように配慮します。一方サポーターは、仕事生活の過ごし方や悩みなど何でも話せる相手として新人看護師をマンツーマンで支えるようになっています」とは看護管理室教育専任副看護師長の森下理恵さん。新人教育(実践?)を担当し、クリニカルコーチに対するフォローアップも行っています。クリニカルコーチを担うことは担当者のスキルアップにもなるといいます。



一人前を目指して年次ごとのステップアップを図る
同院には森下さんを含め6名の教育専任副看護師長がおり、4年目までの看護師に対する教育・研修の企画・運営を担当しています。
新人看護師のメンタルケアを担当しているのが古谷和紀さん。年に3回新人看護師への面談を行い、業務や生活状況の話に耳を傾け、悩みなどを受け止めています。いつでも新人看護師から頼られる相談窓口でありたいといいます。
その新人看護師も2年目になるとサポーターを担うことになります。自身の経験をベースにサポートできるので新人の共感が得られやすいと2年目研修(実践?)担当の梅井歩さんはいいます。看る力を育む研修やメンバーシップ研修なども行われるほか、1年目の10月〜2年目の間には、自部署ではかかわらない看護技術等を他部署で体験できる「院内留学」を実施。この体験は新人看護師が自身のキャリアを考える機会にもなっているようです。
「3年目は自立のための準備期」というのは3年目研修(実践?)担当の角裕子さん。リーダーシップ研修や臨床倫理研修を通して、受講する看護師たちが物事を論理的に捉え自ら発言する力を身につけていく様子を肌で感じているそうです。
いよいよ一人前となる4年目には、指導者研修や在宅療養支援研修が行われます。4年目研修(実践 ?)担当の伊藤なるみさんは「2024年度は休止していたホスピスや回復期リハビリ病院などを訪れる院外研修を復活、拡大させたい」と話します。
同院の新人看護師の育成は、このように継続的にステップが重ねられるよう設計されています。




なりたい看護師を目指せるそんな教育を提供していきたい
病院長補佐で看護部長の井川順子さんは「『患者さん中心の安全で温かみのある看護』を実現できる、医療人としてふさわしい倫理観、知識と技術、患者さんを思いやる感性を身につけられる教育を提供したいと考えています。私たちが目指すのは画一的な看護師像ではなく、一人ひとりが自分を大切にしながら、患者さんのためにやりたい看護ができる看護師。そんな看護師になれるようサポートしていきたいと思っています」と話します。
新人看護師を丁寧に支援し、年次ごとのステップアップをつなぐ同院の教育体制。なりたい自分の姿を目標に看護師たちは知識と経験を深めています。



DETA
京都大学医学部附属病院
京都府京都市左京区聖護院川原町54
https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp
開設 ●1899年
病床数 ●1141床
職員数 ●3350名うち看護職員1221名(2023年4月現在)
看護体制 ●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/特定機能病院/総合周産期母子医療センター/肝疾患診療連携拠点病院/がん診療連携拠点病院/小児がん拠点病院/京都府災害拠点病院/ISO9001認証病院

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2024年6月号 TiaraNo.149より転載しています。
