
八千代病院は、1900年の開院以来、地域に不足する医療に率先して取り組み住民が困らないようにする「地域のため」という考え方のもと、医療提供を続けてきました。急性期から介護まで多角的な医療・看護を実践するなか、同院看護部では患者さんに対してより安全で質の高い静脈注射を行うため、2022年度からIVナース院内認定制度をスタートさせました。タスクシフト/シェアに向けて行われたその取り組みを紹介します。

タスクシフトを求める流れを受けIVナース育成プロジェクトを始動
行政解釈が変更されて2002年に看護師による静脈注射が認められ、八千代病院では、2004年に看護師による静脈注射の実施範囲を規定しました。そして2020年、厚生労働省がタスクシフトの具体的項目を示した*1ことを機に、IVナース育成プロジ ェクト(以下、プロジェクト)に取り組むことにしました。
「院内ではダイナミックCT*2での穿刺業務をはじめ、看護師による注射業務の範囲の拡大を望む声も出ていました。具体的項目が示されたことでタスクシフトの必要性が高まったことから、より安全な静脈注射の実施に向けて、2021年度にプロジェクトを立ち上げました」
看護課長でプロジェクト委員長を務めた坂田徳一さんはこう話します。これにより、IVナース育成ガイドライン(以下、ガイドライン)と教育体制を整備し、2022年度からIVナース院内認定制度(以下、認定制度)の運用が始まりました。
ガイドラインの柱は「安全に実施するための基準」。看護師の技能を5段階のレベルに、取り扱う薬品を4つのクラスに分け、技能レベルごとに実施可能な注射業務を明確にしたのです。同時に、看護師の技術と知識を担保するための教育体制を整え、認定制度を開始しました。
「タスクシフトの実施には安全面の保証が第一。看護師自身を守るためにも、確実な技術と知識の習得が必要だと考えました」(坂田さん)
*1 第6回医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討委員会が「業務制度上実施可能な業務の推進について」を提示。
*2 造影剤を速い速度で静脈注入し、臓器の血行動態がわかるタイミングに合わせて複数回撮影するCT検査。



病院として安全を担保するために看護師に求められる確かな技能
認定制度は、ガイドラインに準じて、IV-1a・1b・2・3・4と5つの技能で段階的に認定が進められ、まずは入職1年目でIV-2までを目指します。認定方法はeラーニングによる自主学習と院内認定研修の修了。 IV-3以上になるとIVナースを名乗ることができ、IV-3は院内認定研修、IV-4(IVナースインストラクター)は外部指導者研修の修了が必要となります。
救急外来看護課長の加藤留美さんと4C病棟看護師の清水菜央さんは、IV-4の認定を得るため2023年度に「IVナース指導者養成研修」*3を受講しました。加藤さんは「ロールプレイを取り入れた模擬研修を体験して、言葉にして教えることの難しさを痛感しました。研修で学んだ指導方法を2024年度から新たに行うIV-2認定者へのフォローアップ研修に取り入れたいですね」と話します。清水さんも「今までの指導では十分でないと感じました。人材の育成のためには指導者の再教育が重要だと思っています」と研修で得た気づきを口にしていました。
看護部長の植村真美さんはプロジェクトについて「タスクシフトが進むなか、医師の負担軽減を業務上支える場面が増えるのは看護師です。なかでも注射業務は大きなポイント。看護師には正確で適切な技術・知識が不可欠になります。そのような看護師を育成するためにライセンス制度を設け、さらにその指導者を養成することは重要。外部研修には費用がかかりますが、専門的な視点から『指導』を学べる機会は貴重です。プロジェクトは、病院として患者さんの安全を担保することにつながるものだと思っています」と述べます。
*3 IVナース育成の指導に必要な知識やスキルを身につけられる研修。ニプロ株式会社が2019年度から実施している。




ガイドラインの着実な浸透が確かな技術の習得につながる
薬品クラスの変更などガイドラインの改訂を終え、プロジェクトは2023年度に終了。IVナースに関することは主任会に引き継がれました。
「ガイドラインの運用は始まったばかりなので、完全に遵守されるのは難しいかもしれない。むしろ縛られることで業務に支障を来たし、患者さんに不利益が生じてはならない。まずは安全な注射業務のための拠り所として活用し、浸透させていくことが大切だと思います」と坂田さんは話します。
プロジェクトにより「安全」を再認識した同院の看護師たち。確実な技能の習得が同院のタスクシフトを今後も後押ししていきそうです。


DETA
社会医療法人財団新和会 八千代病院
愛知県安城市住吉町2-2-7
https://www.yachiyo-hosp.or.jp
開 設 ●1900年
病床数 ●420床
職員数 ●1050名うち看護職員386名(2024年4月現在)
看護体制 ●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/愛知県認知症疾患医療センター
[病棟構成]一般病棟270床・地域包括ケア病棟46床・療養病棟52床・回復期リハビリテーション病棟52床

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2024年8月号 TiaraNo.150より転載しています。
