
岐阜県南東部に位置する東濃可児地域の基幹病院である岐阜県立多治見病院。2010年度に地方独立行政法人として新たにスタートし地域医療の充実に努めてきました。同院では、先進的で高度な急性期医療の拡大に伴い検査数が増加したことから、中央放射線部に専従看護師を配置。医師に代わり静脈穿刺を実施し放射線技師に穿刺技術の指導を行っています。専従看護師の取り組みの様子を紹介します。

増加する検査数に対応するため放射線技師へのタスクシフトを実施
診療放射線技師法の施行規則が一部改正になり、 2021年10月に造影CT検査や核医学(RI)検査での放射線技師(以下、技師)の静脈路の確保が可能になりました。検査数の増加に伴い医師の業務負担が増していた岐阜県立多治見病院では、技師による静脈路確保を進めるため、これまで看護部が検査介助を行ってきた中央放射線部(以下、放射線部)に専従の看護師を配置することにしたのです。放射線部では血管造影、内視鏡、RI、MRI、CTなどの検査を扱いますが、造影剤・検査薬投与の際は医師と看護師が静脈穿刺を行ってきました。今後は専従看護師と技師が中心になって実施することになります。
放射線部専従看護師はRI・MRI・CT検査を担当。看護部はそのほかの検査を担います。2023年度に看護部から放射線部へ異動した看護師の桂山裕加里さんは、主に造影CTの担当者として技師の育成にあたりながら、自らも穿刺業務を行っています。
放射線部の技師たちは日本診療放射線技師会の法律改正に伴う実技研修を受講していますが、同院ではさらに「静脈路確保放射線技師育成プログラム(以下、技師育成プログラム)」を作成し院内研修を実施。 3段階(静脈注射トレーニングパッド/ RI検査/CT検査)の研修で承認を受けた人が岐阜県立多治見病院静脈路確保技師(以下、静脈路確保技師)として認定されます。この院内研修で指導・監督を担うのが6名の専従看護師で、桂山さんもその1人。リーダー的な役割を果たしています。


安全なサポート体制構築のため造影IVナース育成プログラムを作成
桂山さんは、技師の指導に当たる一方で「IVナースレベル?造影剤:造影剤使用に関する育成プログラム(以下、造影IVナース育成プログラム)」を作成しました。今回配属されている専従看護師のなかには造影剤を扱ったことのない人もおり、安全な造影剤使用のためには看護部が定めるIVナースプログラムレベル?造影剤を取得できるまでに育成する必要がありました。
「看護部のIVナースの規定にならいながらも、技師育成プログラムに対応した放射線部独自の造影IVナース育成プログラムが必要でした。でも、私自身マニュアルをまとめた経験がなく、始めたときは手探り状態でした」と桂山さん。そんなとき、中央放射線部副部長兼放射線技師長の近松薫さんから勧められた「IVナース指導者養成研修」*に参加したことで、マニュアル作成への理解を深め、無事に完成させることができました。同時にシミュレーション研修の進め方や指導時の話し方など学んだことは少なくないといいます。
造影IVナース育成プログラムでポイントになったのがアナフィラキシーショックや血管外漏出など有害事象への対応です。
「造影剤についての知識とともに、有害事象への対応は安全な検査の施行には欠かせない能力になります。これをしっかり身につけることが重要。技師も同様です」(桂山さん)
この言葉を裏付けるように、検査室には有害事象が起こった際の対応フローチャートが掲示され、いつでも確認できるようになっていました。
* IVナース育成の指導に必要な知識やスキルを身につけられる研修。ニプロ株式会社が2019年度から実施している。

看護師が技師とタッグを組み安全で効率的な検査の実現へ
「現行法上、技師は静脈の確保はできますが、投与する薬剤や有害事象への対応は制限されています。ですから、技師と看護師がタッグを組んで業務にあたる必要があります。有害事象発生時のマニュアル整備により両職種の安全を担保することも、この体制をスタートさせるには重要なことでした」
病院の求めに応えて体制づくりを進めてきた近松さんは、静脈路確保技師の数を現在の6名から順次増やしていきたいと話します。医師の業務負担を減らし効率的な検査を実現することが、患者さんにもメリットをもたらすと考えた同院の取り組み。今後の動きに期待が寄せられます。


DETA
地方独立行政法人 岐阜県立多治見病院
岐阜県多治見市前畑町5-161
https://www.tajimi-hospital.jp
開 設 ●1939年
病床数 ●539床
職員数 ●1248名 うち看護職員588名(2024年8月現在)
看護体制 ●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/地域医療支援病院/地域災害拠点病院(地域災害医療センタ ー)/地域救命救急センター/地域がん診療連携拠点病院/エイズ治療拠点病院/地域周産期母子医療センター/感染症指定医療機関

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2024年10月号 TiaraNo.151より転載しています。
