
愛知県名古屋市の北東に接する春日井市の市立病院として1951年に誕生した春日井市民病院。1998年に現在の地に新築移転し、地域基幹病院として先進技術や専門的な機能の拡充を続けています。同院看護部では、積極的な病院の動きを支えるために、看護の安全と質のさらなる向上を目指して「IVナース育成プロジェクト」を始動させました。約2年をかけ成果を上げつつあるその取り組みについて聞きました。

新たに院内認定制度を設け知識と技術のレベルを確立
春日井市民病院の「IVナース育成プロジェクト(以下、プロジェクト)」は、2023年度にスタートしました。2020年に厚生労働省が「現行制度上実施可能な業務の推進について」においてタスクシフトを推進したい業務内容を具体的に示したことが、その背景の一つに挙げられます。
「医師の指示に基づき看護師が行う静脈注射は、保健師助産師看護師法第5条に規定する診療補助行為の範疇として取り扱われるようになりました。当院でも、看護師の技術と知識のレベルを確立することが必要と判断し、前看護局長がIVナース養成の取り組みをスタートさせました」と経緯を説明するのは現看護局長の田垣美紀子さん。プロジェクト運営にかかわる看護師たちを支援しています。
看護局は、まず外部研修「IVナース指導者研修」*1を活用してIVナース指導者(以下、指導者)2名を育成。全ての看護師が患者さんに安全な静脈注射を実施できるよう、研修管理室前看護師長の大島京子さんが中心となり2023年度にプロジェクトチームを発足させました。「『2024年度内に看護師全員のIVナース認定資格取得』を目標にどのような動きが必要かを考えました」と話すのは、プロジェクトリ ーダーを務めた病院安全推進室看護師長の岡山佐都子さん。初年度に「院内認定IVナース養成研修(以下、IVナース養成研修)」と「IVナースインストラクター養成研修」を組み立て、指導者らがIVナースインストラクター 34名を育成しました。
指導者の1人である研修管理室看護師の駒澤裕美さんは「インストラクター資格を取得するのはラダ ー?以上の看護師。過去の経験や価値観から受け止め方が異なる場合もあり、研修の目的を納得してもらえる指導が重要です。声の掛け方や指導のタイミングなど外部研修で得た学びが役立ちました」と話します。2023年度に2名、2024年度に1名が外部研修に参加。指導者の育成も継続されています。
*1 IVナース育成の指導に必要な知識やスキルを身につけられる研修。ニプロ株式会社が2019年度から実施している。


スタッフに研修受講を促す告知方法にもひと工夫
2024年度にはそのインストラクターたちが各部署の看護師にIVナース養成研修を実施しています。研修は「事前課題(eラーンング)受講・テスト→ 演習→実技試験→合格(認定)」というステップで進みます。対象は院内の看護師全員で約600名。基本的に水曜日に演習、金曜日に実技テストを行い、これが12月ぐらいに終了する予定です。
指導者で病院安全推進室看護師の大野知子さんは、IVナース養成研修のスタッフへの告知方法について、院外研修の課題として取り組みました。
「研修の動機づけになる導入動画を作成し、ポスターのQRコードをスマホで読み取ることでアクセスできるようにしました」(大野さん)
動画では静脈注射にかかわるインシデント事例も具体的に取り上げ、見た人が現実味をもって研修の必要性を受け止められる内容になっています。





新たな展開に向けてインストラクターの増員も検討
プロジェクトの到達点はみえてきましたが、さらにすべき課題も挙がっています。岡山さんは「インストラクターを増やし、配置転換があっても各部署にインストラクターがいる状況にしたい。そうすれば部署ごとの更新試験*2も可能です」といいます。抗がん薬を扱える資格を増やす予定もあるそうです。一方、駒澤さんは「インストラクター同士に横のつながりが生まれたので、それをベースに各部署の情報共有の場や機会を作ることで、指導する側のフォローもできたらと思っています」と話します。
「今回研修を確立したことで基礎知識・技術の重要性があらためて確認できました。行為はHOW TOのままでは看護にはならず、応用もできません。IVナース養成研修を行うことは応用力のある看護師の育成につながると思います」と岡山さん。その言葉の先に新たなステップへの挑戦がみえてきます。*2 院内認定IVナースについては5年ごとの更新制となる。


DETA
春日井市民病院
愛知県春日井市鷹来町1-1-1
https://www.hospital.kasugai.aichi.jp
開 設●1951年
病床数●552床
職員数●1241名うち看護職員646名(2024年10月1日現在)
看護体制 ●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/地域中核災害拠点病院/愛知県がん診療拠点病院/DMAT指定医療機関/地域医療支援病院/救命救急センター/第二種感染症指定医療機関

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2024年12月号 TiaraNo.152より転載しています。
