
「マグネット認証*1」を知っていますか。これは米国看護師認証センター(ANCC)による認証制度で「看護の卓越性および質の高い患者ケアを提供する医療機関」を認証するもの。聖路加国際病院(東京都中央区)は2019年に日本で初めてこの認証を受け、2024年には更新を果たしました。この認証がどのようなものか、そして取得により何がもたらされたか、認証取得・更新に取り組んだみなさんに話を聞きました。

6年の期間をかけて取り組んだマグネット認証*1
「当院では、医療・看護の質を可視化し改善することを重点課題としています。その一環として、医療の質と安全についてはJCI認証*2を取得。では看護については?と考えたとき、マグネット認証*1(以下、認証)に行きつきました」
聖路加国際病院副院長兼看護部長の鈴木千晴さんは認証取得の経緯についてこう話します。病院の重点目標として2013年に取得に着手、書類審査や実地審査などを経て2019年に認証を獲得しました。
「この認証プログラムは、1980年代にアメリカで深刻な看護師不足が起こった際に行われた研究がベースになっています。プログラムには、看護師だけでなく、全職員、そして患者さんも惹きつけて離さないための要素が包括されており、それらを有する病院かどうかを審査します」(鈴木さん)
書類審査では、組織概要や事例、数値データの提出が求められ、プログラムの要件に合ったものを揃えて提出することはかなり大変だったようです。「提出事例は79に及び、データはアメリカの病院と比較・評価されます。日本には他院と比較できるシステムがないためです。当院には実績があると自負していましたが、エビデンスに基づき要件に沿ったかたちで優位性を示すにはかなりの工夫が必要でした」と鈴木さんは当時を振り返ります。
その後の実地審査は同院内でANCC審査官が実施。提出事例の確認などについて700人以上のスタッフや他職種に対しインタビューが行われました。



認証取得を支えた力「ナースの代表者会議」と「マグネックス」
認証取得に際し、2014年には「ナースの代表者会議(以下、代表者会議)」と「Magnet Express(通称Magnex。以下、マグネックス)」が誕生しました。代表者会議はスタッフナースが主役の会議体で、アイデアを出し合って患者さんへのケアや職場環境の改善を実践しています。一方マグネックスは、認証活動を院内に浸透させ、みんなでその活動に前向きに取り組むためのチームです。
マグネックス代表で看護師の小林紘子さんは「ほとんどが各部署から希望して参加したメンバーたち。やらされるのではなく自主的に楽しむという思いで取り組んでいます」と話します。マグネックスが行ったナーシングフェスティバル*3などを通して、自分たちの実践を互いに認め合い、評価し、さらに高めていくという考え方が院内のスタッフに浸透していきました。
「よいと思ったら自信をもって堂々と表現する、データなど裏付けをもとに改善や達成に動くなど、看護に向き合う姿勢が変化したと思います。私たちの現場での取り組みを患者さんや他職種に評価してもらえたことも励みになりました」(小林さん)


マグネット認証*1取得がスタッフにもたらした財産
2024年の認証更新は取得時の経験を生かしスムーズに進められたようです。そしてそれは現場の看護師たちが身につけた力によるところも大きいとか。鈴木さんは「認証取得後も質改善の取り組みについてのデータ収集は継続され、年に4回その結果が上がってきます。スタッフはその結果について自分たちで考え、計画的に対応しており、それが更新にも生きている。認証を取得・更新できたことは病院にとって大きな成果ですが、スタッフが課題解決の能力を高めたことも貴重な財産だと思います」と話します。
そのうえで、より多くの病院にこの認証について知ってほしいといいます。
「認証はアメリカのプログラムなので、チャレンジすることは簡単ではないと思います。でも、自分たちが体験してみて、そこには実に多くの学びや次につながる体験がありました。人を惹きつける病院にするためには何が必要か、認証の内容を知って組織としてのあり方を参考にするだけでも得るものは少なくないと思います。ぜひ広く紹介していきたいと考えています」(鈴木さん)


*1 Magnet Recognition 米国商標登録第2936437号
*2 JCI(Joint Commission International)は医療の質と安全性を国際的に審査する機関。病院、大学医療センター、外来診療、臨床検査、在宅ケア、長期ケア、医療搬送機関、プライマリーケアセンターのプログラムで認定が行われている。
*3 各部署の優れた取り組み事例を紹介し評価するもの。認証の審査の過程で行われた。
*4 Magnet 米国商標登録第6063487号
DATA
聖路加国際病院
東京都中央区明石町9-1
https://hospital.luke.ac.jp
開設 ●1901年
病床数 ●520床
職員数 ●2186名 うち看護職962名(2024年4月現在)
看護体制 ●一般病棟7:1
特定機能病院/JCI認定病院/マグネット認証病院/東京都救命救急センター/東京都災害拠点病院/東京DMAT指定病院/東京都地域がん診療連携拠点病院/東京都難病診療連携拠点病院/東京都地域周産期母子医療センター/東京都地域連携型認知症疾患医療センター

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2025年2月号 TiaraNo.153より転載しています。
