
東京山手メディカルセンターは東京都区西部の急性期病院として機能するなか、特に大腸肛門疾患について先駆けとして取り組みを進めてきました。1960年に大腸肛門病センター、2006年には炎症性腸疾患センターを開設し、全国から患者さんを集めています。看護部もそれに合わせて人材を育成。専門性を身につけた看護師たちがストーマケアや皮膚・創傷ケアにおいて意欲的に力を発揮しています。その活動について話を聞きました。

大腸肛門疾患の患者さんを長年にわたり支えるストーマ外来
東京山手メディカルセンターにストーマ外来が誕生したのは1991年。当時は認定看護師制度*1 がなく、1986年にETナース*2 一期生となった看護師が活動をスタートさせました。そして現在その外来を担うのは副看護師長で皮膚・排泄ケア認定看護師の積美保子さん。1998年に認定資格を取得し、2000年からストーマ外来の運営に加わりました。


「大腸肛門疾患に力を入れている背景から当センターはストーマ造設患者さんが多く、術後だけでなく継続的なフォローをいかに行うかが課題でした。退院時にしっかり指導をしても、装具の扱いや漏れなどに困って問い合わせたり来院したりする患者さんが後をたたない。支援の充実を図るため、週に1日だった外来の実施日を増やすよう病院に働きかけ、実現することができました」(積さん)
2000年以降ストーマ外来は月曜から金曜の週5日間になり、2023年度の受診件数は延べ898件。原因疾患は、多い順にクローン病、大腸肛門管がん、潰瘍性大腸炎、その他となっています。クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の場合、合併症のリスクも高く、若い年代の患者さんが多いことから受容が進まないケースもあります。「状況に応じストーマ外来から皮膚科医師やリエゾン看護師につなぎ、より専門的なケアが受けられるようにしています。ストーマを理由に患者さんがやりたいことをあきらめずに実施できるようサポートをしたい」と積さん。そのためにも、認定看護師による術前外来(現在は依頼があった場合にのみ実施)をすべての患者さんに行えるようにしたいと話します。
積さんは、ストーマ外来とともに大腸肛門外科に併設されている排便機能外来(火曜午前実施)も担当しています。「皮膚・排泄ケア認定看護師には幅広い役割があり、役に立てることはやりたいという気持ちで取り組んできました。これからは認定看護師の育成をさらに後押しし、新たな人材へのバトンタッチも考えていきたいですね」と今後にも目を向けています。 2024年6月からは毎週水曜日に大腸肛門外科の病棟でストーマケアカンファレンスを開始。人材育成も着々と進行中のようです。
*1 日本看護協会による認定制度で1995年度に創設された。高度化し専門分化が進む医療の現場において、水準の高い看護が実践できる看護師を認定するもの。 2020年度からは特定行為研修を組み込んだ新たな制度がスタートしている。
*2 Enterostomal Therapistのことで、ストーマケア、褥瘡などの創傷管理、排泄ケアを専門的に行う看護師。ストーマ療法士ともいわれる。日本では1986年から教育が始まり、現在は皮膚・排泄ケア認定看護師に移行したETナースも多い。




特定行為を身につけたことで実現した患者さんの利益とタスクシフト
院内には特定行為研修*3 を修了し、病棟内で活躍の場を広げている看護師もいます。7階東病棟看護師の永崎純さんとICU・CCU看護師の児玉尉里さんです。創傷管理関連ほかの区分別研修を修了し、現在はストーマ閉鎖時の陰圧閉鎖療法に携わっています。
「大腸肛門科の病棟で医師の補助をしながら、自分にももっとできることがあるのではと考えていました。知識・技術を習得することで患者さんへのタイムリーな処置が可能になる特定行為研修を知り『これだ』と思いました」と、永崎さんは研修に取り組んだ理由を話してくれました。「初めての処置のときはものすごく緊張しましたが、傷がきれいに治っていく経過をみながら喜ぶ患者さんの姿によかったなと感じます」と充実感を滲ませます。
一方児玉さんは「自分のできることを増やして、自分も意見を出しながら医師とタッグを組んでスピーディに何かできたらいいなと思いました」と、タスクシフトも視野に入れて研修を受講したといいます。現在はICU・CCU所属なので、永崎さんが処置にあたれないときにフォローしているとか。
2023年度のストーマ造設は122件、閉鎖は17件で、陰圧閉鎖療法が実施されたのは延べ23件。永崎さんと児玉さんが担当したのはおよそ半分になり、成果は着実に上がっています。
専門分野に力を入れている同センターでは、それに比例して専門性の高い看護師たちが育ち活躍しています。そして、その成果はそれぞれの現場を守る看護師たちにも確実に浸透しているようでした。
*3 2015年に施行された「特定行為に係る看護師の研修制度」による研修。特定行為は21区分38行為ある。基本的には共通科目に区分別科目を組み合わせて受講する。




DATA
独立行政法人地域医療機能推進機構東京山手メディカルセンター
東京都新宿区百人町3-22-1
https://yamate.jcho.go.jp
開 設 ●1947年
病床数 ●418床
職員数 ●673名、うち看護職員304名(2025年1月現在)
看護体制●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/東京都災害拠点病院/地域医療支援病院/東京都がん診療連携協力病院

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2025年6月号 TiaraNo.155より転載しています。
