
京都府山城北医療圏の急性期医療を支える宇治徳洲会病院。2015年の新築移転以降も設備や機能の充実を進めながら、高度救命救急センターや地域災害拠点病院など地域の基幹病院として重要な役割を担っています。同院ではかねてから多職種の幅広い活用を進めており、それが近年の医療におけるタスクシフト/シェアの動きにも結びついています。臨床現場で看護師をサポートする各職種に話を聞きました。

将来の可能性を見据えて新たな人材の採用・育成へ
宇治徳洲会病院では、20年ほど前からさまざまな専門職の幅広い活用に取り組んできました。
「その始まりは救急救命士(以下、救命士)と臨床工学技士(以下、工学技士)。当院が救急告示医療機関*1であることから、何らかの業務を担ってもらえるのではと、当時はあまり例のなかった救命士の採用を進めたといいます。一方で工学技士も採用数を増やしていて、2008年には両職種の活躍の場を確立するため臨床工学救急管理室*2を立ち上げました」と話すのは看護部長の北川きよみさん。とはいえ、当時救命士が院内でできる業務は限られており、救急外来で看護補助に就いていました。工学技士の業務もまた、医療機器の操作や保守・点検など本来の業務を超えるものではありませんでした。
これを変えたのは、2021年の医師の働き方改革に伴う業務範囲の拡大*3。救命士は院内(救急外来)での救急救命処置が、工学技士は手術室などにおける清潔野での器械出しが可能になりました。
「専門職の活用には、看護師の業務負担が軽減されるという二次的な効果も期待できましたが、そもそもは両職種の活躍の場を広げることが目的でした。それがタスクシフト/シェアに結びついたかたちになりました」(北川さん)
*1 救急隊が搬送する傷病者の収容および治療を行う医療機関。救急病院等を定める省令基準を満たすことが条件で、都道府県の認定が必要。
*2 現在は臨床工学科と救命救急士科に分かれている。
*3 診療放射線技師法、臨床検査技師等に関する法律、臨床工学技士法、救急救命士法が改正され、2021年10月から各職種の業務範囲が拡大された。



活躍の場を広げる薬剤師、看護師のスキルアップにも貢献
同院では、薬剤師もまた業務範囲を広げています。2012年の診療報酬改定以降、病棟薬剤師が配置され、服薬指導のほか、臨時薬の配薬や持参薬のチェックを行っています。副看護部長の上岡智美さんは「看護師の病棟業務は煩雑ですから薬剤師によるサポートはとても助かっています。同時に医療安全面でも心強い。すぐに薬剤についての疑問や効果の確認、相談ができます」と話します。
「看護師の業務負担軽減だけでなく、薬剤師の活躍の場が広がっているととらえています。薬剤師が薬の処方意図や副作用、服用時の観察点などの情報を提供することで、看護師のスキルアップとよりよい医療提供に貢献できるのではと考えています」
薬剤部薬局長の橋本昌幸さんはこう話し、病棟の一員としてナースステーションに薬剤師のデスクを設置したことを教えてくれました。
新たな業務に挑戦する救急救命士と臨床工学技士の思いとは
実際に現場で活躍する救命士と工学技士にも話を聞きました。
救急救命士科室長の能登路賀一さんは2009年から同院に勤務。かつては消防に限られていた救命士の活躍の場を病院にも広げたいという思いをもってきました。「院内での処置が可能になったいま、質の担保はますます重要になる。救命士に認められた救命救急処置*4のうち、まずは医師の包括的指示による処置をしっかりと行い信頼を高めていくことが大切だと考えています」と能登路さん。入職した救命士の教育を担当している救急救命士科係長の松原僚さんもまた「信頼される『病院の救命士』として全員を独り立ちさせることが目標。自分がリーダーになったとき自信をもって新人を牽引できるようになってほしい」といいます。
臨床工学科主任の弘田一世さんは手術室にかかわるスタッフの教育を担当。自身も器械出しに携わっています。スタッフはまず看護師から教育を受け、半年かけて知識・技術を身につけていくとか。現在8名が整形外科手術で器械出しを担当しています。
「業務を引き継ぐ側として、タスクシフト/シェアではチーム連携が大切であることを改めて感じました。お互いの業務範囲を認識し、職種同士が理解し合うことでうまくいく。そういう関係づくりも指導していきたいと思います」(弘田さん)
タスクシフト/シェアにおいて、看護師は業務を引き受ける、渡すという双方の立場になり得ます。同院の取り組みは今後のタスクシフト/シェアを考えるうえで参考になるかもしれません。
*4 救命救急士が実施できる救急救命処置は33項目あり、医師の具体的指示が必要な特定行為(5項目)と、医師の包括的指示に基づいて行うもの(28項目)に分けられる。






DATA
医療法人徳洲会 宇治徳洲会病院
京都府宇治市槇島町石橋145
https://www.ujitoku.or.jp
開 設●1979年
病床数●479床
職員数●1608名、うち看護師633名(2025年4月1日現在)
看護体制●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/高度救命救急センター/地域災害拠点病院/地域がん診療連携拠点病院/地域周産期母子医療センター/地域医療支援病院

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2025年8月号 TiaraNo.156より転載しています。
