
大阪大学医学部附属病院看護部では、2004年にキャリア開発センターを設立し、研修プログラムの提供などによる看護師のキャリア開発を推進。2022年からは、看護ユニフィケーション*1に主眼を置いた体制にシフトし、大阪大学医学部保健学科との連携をより強化したかたちで、継続した人材育成とキャリア支援をスタートさせています。そんな同センターの取り組みについて話を聞きました。
*1 「ユニフィケーション」は「統合」などの意味をもつ語で、看護分野では「看護(連携型)ユニフィケーション」として、病院と大学など異なる組織が連携し、臨床と教育の乖離を解消して、臨床看護と看護教育双方の質向上を図る。

学習スタイルの変化を受け新たなキャリア支援を導入
ライフスタイルの多様化、教育分野でのオンラインやオンデマンドの浸透を受け、大阪大学医学部附属病院看護部キャリア開発センター(以下、センター)は機能の見直しを図りました。「研修プログラムの提供だけでなく、看護師一人ひとりに寄り添ったキャリア支援により注力すべきだと考えました」と副病院長兼看護部長でセンター長も務める岩崎朋之さんは話します。そして、センターが培ってきた大阪大学医学部保健学科(以下、保健学科)や地域との連携を一歩進んだかたちの人材育成につなげるため、保健学科に働きかけを行ったといいます。
「看護ユニフィケーションの提案をしました。医療人材が不足する現状のなか、志をもって保健学科で頑張っている学生たちを、その彼らの未来につながる病院の看護師たちを、互いの敷居を超えてサポートしていきませんかと」(岩崎さん)
先駆的な施設からの情報収集、自分たちの特性を生かした取り組みや人事交流のルールづくりなど、2022年から2年間は主に看護ユニフィケーションの実施に向けた土台づくりが行われました。
そして2024年、新たな取り組みがスタートしました。学生と病院看護師をつなぐ「ユニフィケーション・カフェ(以下、ユニ・カフェ)」を実施する一方、2023年から看護師がキャリアを考える機会として行っていた「キャリアカフェ」についても、病院看護師と保健学科教員をつなぐ新たなプログラムを組み込みました。



病院と保健学科の人材が相互に学び合う交流を実現
ユニ・カフェでは、看護部長から病棟看護師まで所属を異にする病院看護師と保健学科学生が、採用試験対策や看護師のキャリアなどのテーマで交流を図りました。センター運営委員会のメンバーである大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻教授の樺山舞さんは「学生たちは、ユニ・カフェのなかで授業では体験できないものに出合いました。たとえちょっとした一言であったとしても、彼らがそれを心に留めることが、未来への動機づけや自身の目指すものにつながっていくのだと思います」と話します。
キャリアカフェでは、保健学科教員がそれぞれの専門分野を生かし、病院看護師たちの疑問・質問に答えました。この際、キャリアカフェが次のステップへの可能性を探る場になり得ること、「教員に会いたい、話したい」という思いをもつ看護師が少なからずいることが示されました。保健学科教員は、「看護研究・看護実践報告支援*2」の指導も行っており、病院看護師の報告・研究の質向上にも一役買 っています。看護師長で副センター長(専従)の松本留美さんは「このような体験が臨床看護師の科学的根拠に基づいた看護実践への意識を高めるのではないかと思っています。大学院を目指す道につながるかもしれませんね」と期待を滲ませました。
*2 看護実践報告や看護研究、学会発表などに取り組む看護師は、センターに申請すればセンター専従看護師(松本さん)や保健学科教員による指導やサポートが受けられる。


新たな取り組みも進行、看護師のキャリアを地域で支える
また、地域と連携した「1日訪問看護体験*3」や「(民間病院との)人事交流*4」も始まっています。
継続看護に生かすために、あるいは今後のキャリアの選択肢として、地域を体験したいという病院看護師を支援する取り組みです。「現在は病院から地域へという流れですが、将来的には双方向の交流にできればと思っています」と岩崎さん。参加者の満足度は高く、地域で得た経験を今後の看護実践やキャリア設計に役立てたいと話しているそうです。
「仮に病院から地域へと進路を変更したとしても、それはその人が選択したキャリア。私たちはその人の看護師としてのキャリアを支援していきたい。優れた人材を地域全体で育成し共有するという考え方がこれからは必要だと思っています」(岩崎さん)
同院の看護師たちは、臨地実習*5の際学生を将来の仲間として受け入れているといいます。着実に進む看護ユニフィケーションの取り組みは、このような文化に裏付けられているのかもしれません。
*3 地域の訪問看護ステーションと提携し、病院看護師が1日を通して実際の訪問看護を体験できる仕組み。
*4 病院に籍を置いたまま、急性期、回復期リハビリテーション、療養、緩和ケアなど、地域民間病院で多様な病棟業務を体験することができる。期間は1年間〜最長2年間。
*5 臨地実習の受け入れ環境の整備は看護教育支援室が行っている。




DATA
大阪大学医学部附属病院
大阪府吹田市山田丘2-15
https://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp
開 設 ●1869年
病床数 ●1086床
職員数●2950名 うち看護職員1129名(2025年5月現在)
看護体制 ●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/特定機能病院/大阪府災害拠点病院/大阪府総合周産期母子医療センター/大阪府肝疾患診療連携拠点病院/大阪府難病診療連携拠点病院/大阪府小児がん拠点病院/地域がん診療連携拠点病院

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2025年10月号 TiaraNo.157より転載しています。
