
70年余にわたり大阪府の医療を支えてきた大阪急性期・総合医療センターは、高度急性期医療と高度専門医療を両軸に36の診療科が連携して総合的な医療を展開しています。
看護部ではそんな医療の現場を担える看護師を育成するため、きめ細かな教育プログラムを構築しており、特に新人教育には力を入れています。
スタートしたばかりの新人看護師たちが歩み続けられるよう行っている「振り返り研修」をご紹介します。

技術だけに偏らず頭や心を使って考える看護を
大阪急性期・総合医療センター看護部は「HeartArt&Science」を理念に掲げ、「人の心を大切に信頼される看護を行う」「安心で安全な質の高い看護を行う」「自己研鑽に励み誇りのもてる看護を行う」ことを目指しています。
「当センターは重症度の高い急性期の患者さんや高度な専門医療を要する患者さんを対象とすることが多く、看護師にはそれに対応できる知識や技術が求められます。そのため、特に新人看護師は技術面に意識が集中しがちです。しかし、看護はそれだけでは成り立ちません。看護理念で謳っている看護の実践に向け、プログラムの見直しを行っています」
教育担当副看護部長の亀井葉子さんはこのように話します。同センターの新人看護師研修プログラムには、画像診断や検査データ、人工呼吸器など一般的な新人研修よりも高度なテーマがみられる一方で、看護倫理や看取りの看護、病態関連図など観察・思考・判断が求められるテーマもあります。
「技術だけでなく、頭や心を使って考える看護を身につけてもらいたいと考えています」と亀井さん。展開の早い急性期病院だからこそ、看護師は命を取り巻くさまざまな場面に出合います。新人のときから幅広い看護を身につけていく必要があるようです。



新人看護師が自由に話し合う「振り返り研修」を継続
そんななかおよそ20年間変わらずに継続されてきたのが「振り返り研修」です。毎年の実績を省みて、あるいは時代の変化に合わせて、ブラッシュアップをしながら継続してきたそうです。
看護師長の弥武美紀子さんは振り返り研修について「特にテーマは設定していません。入職あるいは前回研修から過ごした期間を振り返って、新人看護師たちが仲間と話し合う場としています。みんな同じようなレベルのところでつまずいたり、悩んだりしていて、それを乗り越えているということを共有し、共感し合う。『自分だけじゃなくみんな同じ』ということに安心を感じ、乗り越えていく力を得る機会になっていると思います」と話します。
これまでは3カ月、6カ月、12カ月を経過したタイミングで行ってきましたが、2025年度からは1カ月後も加え、年に4回実施しています。「最初の1カ月で意欲を損なうケースも出てきたことから、それをフォローできればと新たに設けました」と弥武さん。
この研修のみ2年目看護師がファシリテーターとして参加し、新人看護師が立てた1年後の到達目標などに対して、経験に基づいてアドバイスを行います。そこで聞いた先輩の歩みは、新人看護師にとってのお手本になるといいます。




1年を通して行ってきた振り返りが着実に成長へと結びつく
この振り返り研修を支えているのは新人教育担当者会*フォローアップグループで、事前準備や当日の運営を担っています。主体的に学ぶ姿勢を身につけられるよう、新人看護師に会場設営の段階からかかわってもらうことも考えているそうです。
取材当日は6カ月研修中。新人看護師たちがグループに分かれ、話しながらポスターを作成していました。メンバーは1年間変わらず、次第にグループとしての絆が生まれていくそう。和気あいあいと自由に話し合う姿には、入職直後に見え隠れしていたという不安げな表情はまったく窺えません。
「新人看護師としての1年を経て、翌年度の4月を迎えると、みんなヒョイと2年目看護師へと成長した顔になる。私たちにとっても1年間の新人研修の成果を実感できる瞬間です」と亀井さんはいいます。「その2年目看護師たちが、次に入職してきた新人看護師の指導にあたる。それがまた自身の成長にもつながる。こういう連鎖が20年間続いているんです」と笑う弥武さん。
集合研修により多様な学びの機会をつくる傍ら、振り返り研修を重視し新人一人ひとりに合わせた成長を促す同センターの新人教育が実を結んでいるようです。
*看護部教育委員会には、職場教育委員会、新人教育担当者会、実習指導担当者会、キャリア開発支援委員会、看護研究委員会が置かれ、それぞれ活動を行っている。




DATA
大阪急性期・総合医療センター
大阪府大阪市住吉区万代東3-1-56
https://www.gh.opho.jp
開設●1955年
病床数●865床
職員数●1590名
うち看護職員1027名(2025年4月1日現在)
看護体制●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/基幹災害医療センター/地域医療支援病院/高度救命救急センター/地域周産期母子医療センター/地域がん診療連携拠点病院/がんゲノム医療連携病院/大阪府難病診療連携拠点病院
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2026年1月号 TiaraNo.158より転載しています。
