
宇都宮記念病院は、1963年から60余年にわたり宇都宮市を中心に地域医療を支えてきました。31の診療科をカバーし、救急医療にも力を入れる一方で、腎・透析センター、呼吸器病センター、腰・膝・股関節センターを設立し、専門性に特化した医療の提供も行っています。
そのなかから、高齢患者さんに向けて新たな取り組みをスタートさせている腎・透析センターの看護師に話を聞きました。

幅広く腎不全患者さんを支援したいそんな思いを込めスタート
宇都宮記念病院が腎・透析センター(以下、センター)を開設したのは2019年。栃木県は透析患者さんが多く、2024年には人口100万人当たりの透析患者数が3470.6人となり、全国値を700人以上上回ります*1。その傾向は宇都宮市も同様です。
「当センターが名称に『腎』を入れたのは、南木(なんもく)浩二センター長のある思いがあったためです」とその名の由来を話してくれたのは、センター師長で透析看護認定看護師*2の前囿(まえぞの)光昭さん。南木医師には、透析療法や腎移植といった腎代替療法、さらにシャント治療も含め、幅広く腎不全患者さんを支えたいという思いがあり、それを施設の名に込めたといいます。
「私たちスタッフも、より広い情報を提供し、患者さんの希望やライフスタイルに寄り添って治療が選択できるよう考えています」(前囿さん)
*1 正木崇生. 他:わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在). 透析会誌 2025;58(12);524-590.
*2 日本看護協会による認定看護師制度が2019年度に改正され、現在教育課程はそれまでのA課程(2029年度まで認定実施)と、特定行為研修を加えたB課程がある。分野によっては資格の名称が異なり、透析看護認定看護師(A課程)はB課程では腎不全看護認定看護師となる。




高齢化の影響は透析治療にも新たに腹膜透析(PD)導入を検討
腎代替療法は、大きく血液透析(HD)、腹膜透析(PD)、腎移植に分けられます。HD患者さんが圧倒的に多く、高齢化も進んでいます*3。前囿さんはその理由を「HD導入の高齢化や超高齢社会における慢性腎臓病患者の増加が背景にあり、また自立度も低くなるため、腎代替療法の説明の際に専門のスタッフに任せられる施設で行うHDを選択する方が多い傾向にあります」と話します。
高齢者の場合、HDによる合併症の発生や通院時の負担は大きくなります。
「高齢者が1日4時間、週に数日の透析を継続するとフレイル*4に陥ることも多くなり、通院できずに透析も継続が困難となる。そこで、在宅でも治療を続けられる方法を模索し、PD導入の可能性を探ることにしました」(前囿さん)
HDが機械的に人工腎臓を通して体外で血液を浄化するのに対し、PDは腹腔内に透析液を貯留し腹膜を介して緩徐に血液内の尿毒素等を移動させます。センター看護師の千々和(ちぢわ)京介さんは「PDの場合、大体4〜6時間で液を交換し、それを1日1〜2回からスタートするのが主流です。液の交換時以外は普段通りの生活が送れるので、高齢患者さんの負担は少なくなると考えています」と話します。
千々和さんは20年ほどPDにかかわった経験があり、患者さんの生活に触れながら、安定した治療の継続をサポートすることに魅力を感じているといいます。
「PDは在宅での施行が主で、通院は基本的に月に1度。食事制限も緩やかです。ただし、透析液バッグの交換など手技の習得が必要。患者さん本人が高齢の場合、家族の協力も含め、どのように支援できるかが重要になります」と前囿さん。
現在PD導入に向けて動いている高齢患者さんがおり、受け入れ先である施設の看護師さんにPDについての知識や手技、観察ポイントなどを指導する段階にあります。入所後も継続して連絡をとり、チームとして継続して動けるようにしていきたいといいます。
*3 *1の資料によると、血液透析患者が占める割合は約97%、70歳以上の透析患者は約56%となる。
*4 加齢による運動機能や認知機能の低下に加え、慢性疾患などの影響もあり、心身が虚弱になった状態。生活機能が障害され、健康な状態と介護状態の中間にある。



地域ネットワークの構築に向け院外の専門職との協力体制を始動
この取り組みを通じて、地域ネットワークの必要性を痛感した前囿さんと千々和さん。
「栃木県にはPD研究会を設ける機会がありませんでした。そこで院外の勉強会への参加者同士で話をし、ネットワーク構築に向け動き出すことにしました。ゆくゆくは治療体制の確立にもつなげたい」と2人は期待をにじませています。
同院看護部では、このような専門性の高い看護師の育成に今後より力を入れていこうと考えています。
「患者さんが求めていることを常に考え、その人生に手を差し伸べることに喜びを感じられる看護師であってほしい。そのためには、専門性を磨き新たなことに向かっていける力を身につけることが大切です」と、統括看護部長の勝城友子さんは話します。
専門性を身につけた同院看護師たちがどのように活躍していくのか、これからの展開を注視していきたいものです。
DATA
宇都宮記念病院
栃木県宇都宮市大通り1-3-16
https://www.nakayamakai.com
開 設●1963年
病床数●193床
職員数●711名 うち看護師257名(2026年3月現在)
看護体制●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/感染症法に基療研究事業委託づく指定医療機関/特定疾患治医療機関/肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業指定医療機関/栃木県難病医療協力病院

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2026年4月号 TiaraNo.160より転載しています。
