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特集:医療現場とICT|オンラインで結ぶことで新たな可能性が広がる 見守り支援システム「ニプロハートラインTM」リポート

ティアラ特別号の表紙看護情報誌ティアラ2020年7月号(特別号)掲載誌面PDFを読む
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医療現場でのICT(information and communication technology:情報通信技術)の活用が進むなか、注目を集める「オンライン診療」。新型コロナウイルス感染症対策の一環としても推進さ れており、それぞれの医療機関で取り組みが始まっています。ニプロ株式会社が発売している見守り 支援システム「ニプロハートラインTM」は、オンライン診療でも活用できる医療機関と地域を遠隔 で結ぶシステム。どのようなもので、どのように活用できるのか、ティアラ編集部がリポートします。

地域全体で患者さんを見守る心を結ぶ遠隔システム

「ニプロハートラインTM」は、医療者等と患者さんを遠隔で結ぶシステム。地域包括ケアシステムの構築が進むなか、在宅医療の現場からの声に応え、医療者と在宅患者さん、さらに医療者間、多職種間での連携を支援するために開発されたものです。このシステムを医療機関等に紹介し、導入・運用をサポートしているニプロ株式会社国内事業部メディカル営業本部の岡田洋平さんに、その機能や使い方を説明してもらいました。

「『見守り支援システム』と称しているとおり、さまざまな医療者や介護職が継続して患者さんを見守るために活用することができます。かかりつけ医と患者さんだけでなく、保険薬局、訪問看護ステーション、介護事業所などの多職種が連携して、患者さんのバイタルサインほかさまざまな情報を共有。テレビ電話機能やアラート機能により迅速な対応が可能になっています」(岡田さん)

表1 ニプロハートラインTMの機能 width=

例えば、医療機関と在宅で血液透析や腹膜透析を行っている患者さん、保険薬局との連携があります。透析医師が患者さんの状態や透析用監視装置の情報を確認し遠隔で診察することで、透析の施行を安全に保ちながら、万一のトラブルに備え、透析治療に必要となる薬剤等を薬局と調整するといった使い方ができます。患者さんの情報をリアルタイムで把握することが可能になるため、往診をしなくても対応することができるようになるわけです。

ニプロハートラインTMには、ユーザー管理、患者基本情報登録、画像管理など16の機能があるとのこと(表1)。これらを組み合わせて活用すれば、患者さんそれぞれの状況に応じた医療提供の仕組みが考えられそうです。

事前準備の負担が少なく既存の設備で運用ができることも

それでは、このシステムを使用するにはどのような準備が必要なのでしょう。

「Wi-Fi環境が整っていれば、医療機関側でパソコンやタブレットに専用ソフトとカメラをセットし、患者さんは自分のスマートフォン等にアプリをダウンロードするだけで使用することができます」と岡田さん。これであれば、既存の設備・機器のみで導入できるケースもあり、事前の準備が負担になることは少なそうです。

ニプロハートラインTMでのオンライン診療は、決められた診療日に、医師など医療者がビデオ通話で患者さんに電話をすることで始められるとのこと。患者さんは、毎日バイタルサインなどを測定して自分のスマートフォン等を使用しアプリ上に記録。医療者は、この記録をパソコンやタブレットで共有し、そのデータを参考に診療を進めることになります。

慢性疾患患者さんの場合、セルフケアがうまくいかず、病態の悪化をもたらすことがあります。このシステムを利用することで、患者さんにとっては、体温や血圧、血糖値などの測定や生活のチェックが習慣化できるほか、医師との連絡が取りやすいことで不安が軽減されるという効果もあるようです。

新型コロナ対策の一環として新たな活用に向けての動きも

オンライン診療は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大を受けて国が行っている対策のひとつになっています。現在では、再診だけでなく初診の患者さんに対しても実施が認められ、医療機関から保険薬局へのオンラインやFAXでの処方箋の送付も可能です。さらに2020年9月からは同薬局によるオンライン服薬指導が認められます。

ニプロハートラインTMは、このような新型コロナ対策におけるオンライン対応についても活用できるものとして期待が寄せられています。遠隔で行えるさまざまな機能を生かして、具体的にいくつかの場面での活用が想定できるとのこと。岡田さんに4つのパターンを挙げてもらいました。

パターン1:医療機関等内での二次感染を防ぐ

新型コロナ感染患者さんが入院している感染症指定医療機関等での二次感染のリスクを低減するためにニプロハートラインTMを使用します。

患者さんにバイタルサイン測定機器とタブレットを1人1セット付与し、それを使用して収集されたデータを参考に、医療者が離れた場所から患者さんの経過を観察。医療者間で情報を共有する一方、テレビ電話機能を利用して患者さんと顔を見合わせながらコミュニケーションをとることもできます。患者さんの容体に応じてバイタルサインなどの閾値を設定しておけば、データが閾値から外れると自動的に色やアラームで通知されるため、異常を随時把握し、適切に診察・処置を行うことが可能です。

直接的な対面を減らすことによる感染リスクの低減に加え、防護服等の着脱に費やす時間や手間が少なくなります。また、マスクや防護服などの資材の使用を減らすことにもつながります。

感染症指定医療機関等での病棟のほか、夜間などスタッフが少ない時間帯の医療機関、無症状・軽症者の療養施設等での活用が想定できます。

パターン2:新型コロナ感染を疑う患者さんの経過を観察する

新型コロナ感染者との濃厚接触があったなど、感染が疑われる患者さんについて、在宅での経過観察にニプロハートラインTMを使用します。

バイタルサイン測定機器等を送付し、患者さん自身のスマートフォンにアプリをダウンロードしてもらいます。ニプロハートラインTMで結ばれることで、在宅でも患者さんの体調を監視できるようになります。テレビ電話で、患者さんから相談を受けたり、指示することもできます。来院が必要になった場合には、あらかじめ受診環境を整えることも可能です。

感染症指定医療機関だけでなく、クリニックなど地域かかりつけ医でも活用できます。

パターン3:定期受診が必要な慢性疾患患者さんの二次感染を防ぐ

糖尿病や心疾患など慢性疾患等を有する患者さんの来院による新型コロナの二次感染リスクを低減するためにニプロハートラインTMを使用します。

患者さんとニプロハートラインTMでつながることで、医療機関は患者さんが自宅で測定した体温や血圧、血糖値などのデータを共有。日々その経過を観察し、医師が定期的にオンラインによる診察を行います。必要に応じて問い合わせもできるので、患者さんの不安・疑問を解消することも可能です。患者さんのかかりつけ薬局とネットワークを結べば、薬局が処方に基づいて調剤し、オンラインで服薬指導を行って、処方薬を患者さんの自宅に送ることもできます。

パターン4:高齢者施設利用者さんの二次感染を防ぐ

定期受診が必要な高齢者施設の利用者さんに対し、ニプロハートラインTMを使用することで、新型コロナの二次感染のリスクを低減することができます。

施設にタブレットを付与したり、利用者さんのスマートフォンやタブレットにアプリをダウンロードして、ニプロハートラインTMの利用環境を整えます。そして施設内でバイタルサインの測定を行い、医療機関はそのデータを共有。経過を観察して、医師がオンラインで診察を行います。同時に処方も行い、それに基づいてかかりつけ薬局が調剤し、オンラインで服薬指導を実施し施設に処方薬を送ります。

利用者さんや施設職員が医療機関を訪れることによる感染リスクを減らし、施設へのウイルスの持ち込みも予防できます。

このように、ニプロハートラインTMの特性を生かせば、状況に応じ多くの活用が考えられるようです。「医療機関等の状況や目的に合わせて、さらにさまざまな応用を構築していきたいと考えています」(岡田さん)

ニプロハートラインTMの開発を推進した常務取締役の吉岡清貴さんは、離島や過疎地域での見守り支援システムとしてスタートしたシステムが、最近では都市部での在宅医療や高齢者施設へとその運用を広げていると話します。

「突然襲ってきた新型コロナへの対策の一環であるオンライン診療・服薬指導への運用が増えることが見込まれます。時限的・特例的とされる初診でのオンライン診療については、新型コロナ収束後の恒久化に向けた議論も始まっています。第二波、第三波を視野に入れ、人々は新たな生活様式の構築を進めなければなりません。オンライン診療・服薬指導は、今後の医療に欠かせないものになってくると思います」(吉岡さん)

地域での見守りを担うシステムには、人々の安心な生活を支援するさらなる可能性があります。ニプロハートラインTMを通し、これから私たちが向き合う暮らし方をイメージすることができました。

コラム:糖尿病患者さんの在宅療養でのニプロハートラインTMの活用を検証

解説:日? 徹さん<日本赤十字社医療センター糖尿病内分泌科部長>

糖尿病患者さんには、薬物療法に加え、食事療法や運 動療法が必須で、治療は日常生活の一部であるといえます。ですから、在宅と結ぶことのできる遠隔診療は、糖尿病患者さんの治療の助けになるのではないかと、以前から可能性を感じていました。

現在ニプロハートラインTMを使用して、オンライン診療でどのような効果を得られるのか検証をしています。ご協力をいただいているのは、60〜70歳代2型糖尿病の患者さん5名。万一のリスクを考慮し、コントロールが良好で、比較的治療意欲の高い方に、2カ月という期限でお願いしました。患者さんには、日常的に体温、血圧、 血糖値の測定、食事内容の撮影を行ってもらいます。データはニプロハートラインTM上に記録してもらい、それを参考に2週間に1回の頻度でオンラインでの診察や指導を行っています。その際には管理栄養士にも同席してもらい、私は問診と全身状態を、管理栄養士は毎日の食事内容をチェックします。

糖尿病の場合、定期診療では採血検査や尿検査などに よる評価も必要なので、オンラインのみで診療を完結するのは難しい。しかし、在宅にいる患者さんとつながることで、実際の生活を感じることができ、外来診療ではみえなかったものがみえてきたように思います。より具体的に患者さんの生活がイメージできるようになりました。患者さんも、自身の体調や食事内容への関心が高 まっているようです。

これまでの結果から、オンライン診療は、長期にわた りサポートが必要な患者さん、慢性疾患を有する患者さんに対して大きな可能性を確認できました。今後も継続して検証を続けて、より有効なオンライン診療のあり方を模索していきたいと考えています。

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2020年7月号 Tiara特別号より転載しています。

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