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Tiara Interview|東京都医師会 尾﨑治夫 会長

ティアラNo.141の表紙看護情報誌ティアラ2023年3月号(No.141)掲載誌面PDFを読む
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地域医療のなかで人々を支えるパートナーとして看護師のみなさんには私たちとともに活躍してほしい

高齢化が進み超高齢社会を迎えたいま、医療のあり方も変化しています。特に地域医療は、これからの人々の暮らしを支えるものとして、重要度が増しています。看護師はこれにどのように向き合っていけばよいのでしょう。地域医療の現状と、これからの医療者に求められるものについて、東京都医師会の尾﨑治夫会長にお話をうかがいました。

地域医療のなかで人々を支えるパートナーとして看護師のみなさんには私たちとともに活躍してほしい

尾?治夫氏<東京都医師会 会長>

高齢化に伴い変わる患者さん医療も変わらなければならない

 私が医者になったばかりの40年ほど前は、日本の平均寿命は70代でした(1980年:女性78.76歳、男性73.35歳)*1。その頃は、医療も今ほど進んでいません。ただ、患者さんの多くは60〜70代で、さほど身体が衰えていなかったため、病院や診療所は病気を治療することを主としており、その役割はシンプルでした。

 現在は、たとえば進行がんであっても、手術、放射線、化学療法など多様な治療法があり、生存率も上がっています。しかし、70代、80代、90代という後期高齢者の患者さんが多く、そういう人は加齢による身体的衰えがあることは否めません。そうなると、治療を終えて地域に帰ったとしても、体力が低下してしまっていて、診療所にも通えず、介護サ ービスや在宅医療が必要になるケースが多くなります。つまり現在の社会は、病気を治すだけの医療では立ち行かない状況になっているということです。

 ですから、そういう高齢者を医療、介護、福祉が一体となって地域で支える「地域包括ケアシステム」の構築が国によって進められています。これまで、病院では進んだ医療を提供することが最重要でした。もちろんそれも大事なことですが、先端医療ばかりを追い求める医療では、今後はやっていけないということも事実なのです。

地域で働く医師や看護師が不足しているという現実がある

地域で働く医師や看護師が不足しているという現実がある

 このように、医療において「地域」が重視されるようになるなか、医師だけでなく、看護師のみなさんに求められる役割も広がっています。近年では、専門・認定看護師資格の取得や特定行為研修の受講など、専門性を高める動きがクローズアップされ、力を入れているように見受けられます。それは院内でのチーム医療の仲間としては頼もしいことですが、その一方で、地域において、医療、介護、福祉のなかで、横断的に役割を果たす看護師も必要であり、非常に重要な存在になっています。

 このような現状を考えると、地域で活躍する医師や看護師を増やしていくことは急務です。本来は国の率先した取り組みに期待したいところですが、残念ながらそこまで至っていないように感じられます。

 医師の現状になりますが、日本専門医機構による新専門医制度で「総合診療科」が基本領域として位置づけられ、2018年度から専門医の養成がスタートしました。総合診療医とは、幅広い診療科に通じ、小児から高齢者まで診られる医師のこと。地域医療での活躍にも期待が寄せられています。しかし、約9400人といわれる医学部卒業生のなかで、総合診療医を目指す人は200〜300人。地域医療もカバーするにはまだまだ足りないのです。

 看護師もまた、積極的に地域に出ようという人は多いとはいえないように思えます。私自身、地域の診療所で医療に携わっていますが、就業してくれる看護師がなかなかいないことを実感しています。

 2040年には65歳以上の高齢者が全人口の半分を占めるという推計*2も示され、日本社会の高齢化率は今後も高まっていくでしょう。このような社会に即した医療のあり方に向け、医療者自身も意識を変えていかなければならないと思います。

地域で問題となる「フレイル」人々の健康を守ることも重要に

地域で問題となる「フレイル」人々の健康を守ることも重要に

 現在もすでに超高齢社会であるわけですが、そのなかで問題となっているのが「フレイル」です。心と身体の働きが弱くなってきた虚弱な状態のことで、健康と要介護の間に位置します。健康診断の結果ではどこも悪くないのに、痩せや筋力低下、認知機能低下などがみられます。

 そういった要介護予備軍が増加傾向にあるいま、求められるのは、地域の人々の健康を守る医療者です。地域で求められる医師は、いろいろな病気が診られて、在宅もこなし、予防医療も含めた幅広い視野をもって医療と介護をうまく結びつけ、役割をきちんと振り分ける力をもち、地域のリーダーになれる人。

 これは看護師も同様です。そういう意味では、新しいタイプの看護師を育成するという発想があってもいいのかもしれません。基礎的な看護スキルを備えたうえで、介護や福祉の知識をもち、コーディネ ーターとしての役割を果たせる職種を設けて人材教育を行うことも、1つの方法ではないでしょうか。もちろんそんな職種は設けずとも、地域包括ケアシステムのなかで、医師と一緒になって、医療と介護を結びつけながら、患者さんのために働いてくれる看護師が増えてくれたらいいなと思います。

医師として、看護師としてその役割を認識することが大切

 私は、地域医療において看護師は医師の大切なパ ートナーだと考えています。互いに意見を言ったり、相談したり、カバーし合える関係でありたい。私のようにズケズケと物を言ってしまう人間はみんなに怖がられてしまいますから(笑)、物腰が柔らかく、打ち解けやすい雰囲気をもった看護師がそばにいて、他職種との橋渡しをしてくれたらありがたいですね。

 みなさんご存じのとおり、日本は高齢化率(65歳以上人口比率)で世界のトップ。つまり、それはこれからの日本の医療が、超高齢社会における医療のモデルになり得るということです。これからの地域医療をつくり上げる医療者として、医師、看護師、そのほかの医療専門職は、介護分野や福祉分野の他職種ととともに、それぞれの役割を果たしていくことが必要です。そのためには、医師も看護師も、まずは地域のなかで変化する自らの役割を認識することが必要なのかもしれません。

Profile●プロフィール

1977年順天堂大学医学部卒業。1979年順天堂大学医学部循環器内科学講座入局、 1987年同講座講師。1990年おざき内科循環器科クリニック開設。引き続き、非常勤講師として順天堂大学医学部循環器内科学講座に在籍。2011年東京都医師会副会長。2012年日本医師会監事。2015年より現職。2016年日本医師会理事

*1 厚生労働省:第20回生命表(完全生命表)、参考資料1 平均余命の年次推移 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/20th/ss01.html
*2 厚生労働省:令和2年版厚生労働白書 第1章 平成の30年間と、2040年にかけての社会の変容 第1節 高齢化の伸びの鈍化と人口減少 1人口の動向の見通し 図表1-1-1 人口の長期推移 https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/19/dl/1-01.pdf

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2023年3月号 TiaraNo.141より転載しています。

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