
新たな社会で役割を果たしながら職能団体としてできることすべきことを再確認し看護職の将来への道を支えたい
3年に及ぶコロナ禍を経て、新型コロナウイルス感染症は感染症法の5類に移行になりました。いま社会は新たな局面を迎えつつあります。このような動きを踏まえ、東京都看護協会は看護や看護職との新たな向き合い方を模索し、いくつかの取り組みをスタートさせています。その舵取りをする柳橋礼子会長にお話をうかがいました。

東京都看護協会 柳橋礼子 会長
地域包括ケアシステムの強化に向け各地で新たな交流を開始
団塊の世代が75歳以上を迎え後期高齢者となる2025年問題に向け、国では医療介護総合確保推進法*1に基づいて効率的で質の高い医療提供体制の整備と地域包括ケアシステムの構築を進めています。その2025年があと2年に迫り、東京都看護協会では地域包括ケア委員会の活動をより充実させていきたいと考えています。手始めとして、都内6地区支部が各々の地域の課題を掘り下げ、特性に応じた新たな交流をスタートさせました。他職種を巻き込んだり、看護職間のより密なかかわり方を探るなど、地域の連携をより深めていく方向です。
職能委員会については、これまでの研修企画に加え、研究活動の推進による課題解決を進めていく予定です。そのため、大学など学術分野からも委員を迎え、保健師・助産師・看護師・准看護師の各領域でそれぞれに課題を抽出し、そこに向けたアプローチ法を模索しています。データ収集や実態調査も始めました。
一方で、本会に対する理解とかかわりの実態を確認するためのニーズ調査を2022年10月に行いました。コロナ禍が社会にもたらした影響は、私たち看護職が医療従事者としての自らのあり方や周囲とのかかわりを考えさせられるきっかけにもなりました。そこで、いまの看護職と本会との関係を見直してみようと考えました。その結果、20代、30代の若い看護職の参加が少ないことなどが明らかになり、また多くの意見・要望が寄せられました。
これを受けて、2023年度から新たな研修を開始しています。実践年数の浅い看護職に向けては、心電図や血液ガスの読み方を学ぶ研修をオンデマンドで配信し、繰り返し学び直しができるようにしました。全看護職向けとしては、自身のキャリアや将来設計を考えたり、ITのスキルアップを図る研修等を企画しています。
変わる若い世代の仕事観を理解し新たな働き方の仕組みづくりを
私がいま感じているのは、若い世代の変化です。昨年から、役員が都内の大学や看護学校を回り、看護学生のみなさんと話をする機会を設けていただいています。そこでみえてきたのは、自分が同世代の頃とは働き方に対する考え方が違っているということ。1カ所に長く留まるよりも、非常勤でいいからやりたいことをしていきたいという思考を強く感じました。現在の看護学生やここ2〜3年の間に入職した看護職は、コロナ禍の影響をより強く受けています。実習も十分にできず、人との直接的なコミュニケーションの機会も減り、何より明日がどうなるかわからないという不安のなか、どのように看護と向き合うか悩み、考えてきたのだと想像します。
私は看護職の先輩として、まずは若いみなさんを理解したいと思っています。そして、それぞれに合 ったかたちで看護の道を歩んでいけるよう、育成方法や支援の仕方を構築していければと考えています。もちろん、看護の道を極めて、いわゆるエキスパートナースを目指すという人に対する期待は大きいです。しかし、そうでない、自分らしい看護職を目指すという人も応援したい。そういう気持ちです。
そんな若手が希望する多様な働き方を支えるためには、プラチナナース*2の力を借りることも一つの選択肢だと思っています。医療・看護の分野は2025年に向けて人材の確保が急務です。若い世代も、中堅を担う世代も、プラチナ世代も、それぞれの看護職にできるかたちで、医療体制に貢献してもらえるような仕組みづくりをすることは、本会の役目なのだと思います。
より身近な存在として現場の課題や要望を事業に反映

現在、先にお話しした大学や看護学校以外に、地域の医療施設にも足を運ばせてもらっています。学生や教員に加え、多くの現場の看護職や管理者と顔を合わせる機会を得て、その声を聞くうちに、本会には、みなさんにより身近に感じてもらえるような距離感も必要なのではないかと思うようになりました。職能団体として、理想を掲げて模範となることも重要ですが、個々の看護職に寄り添う姿勢も求められているのではないかと。そこで、昨年末からTwitterをスタートさせました。本会の活動の様子をより広く伝えられるようになったことで、人々に理解を深めてもらい、親しみをもってもらえることを期待しています。
今後は、これまでの実績を踏襲しながら、教育や臨床の現場の課題や要望をすくい上げ、本会の活動に生かしていけたらと思います。私たちの事業が看護職のみなさんの気持ちや期待とずれてしまうことは避けなければなりません。ニーズ調査の実施にはそういった意味合いもありました。さらに、2023年度は3年ぶりに対面で総会を行います。本会にとって、これからはコミュニケーションがキーワードの一つになってくるのではないかと思っています。
一人ひとりが思いを大切に迷わず羽ばたいてほしい
私たちには公益社団法人としての「都民の健康な生活の維持・向上を実現する」という目的があります。そしてそのためには、職能団体として看護をどのように高めていくかが問われます。
私は、本会が看護職の道標になれたらと思っています。社会の動向や医療政策の行方をしっかりと捉え、知の拠点として看護の将来の方向を指し示すことで、看護職一人ひとりが思い思いに羽ばたきながらも、道に迷うことなく進めるようにしたい。そんな役割が果たせればいいと考えています。
みなさんには、自らの看護に対する思いを大切に、でも時々は道標を確認してもらいながら、信じた道を進んでほしいですね。

Profile●プロフィール
聖路加看護大学(現聖路加国際大学)卒、同大学院博士前期課程修了。2010年河北総合病院看護部長。2013年 聖路加国際病院副院長・看護部長。在職中はマグネット?ホスピタル認証取得(2019年11月)に尽力。2019年常磐大学看護学部准教授。2022年より現職。
脚注
*1 2014年に制定。
*2 定年退職前後の就業している看護職員で、自分のこれまでの経験をふまえ、もっている能力を発揮し、いきいきと輝き続けている看護職員の呼称。
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2023年8月号 TiaraNo.144より転載しています。
