
新型コロナウイルス感染症対策が進められるなか、医療分野にはさまざまな変革が求められています。そして、そのひとつが「オンライン診療」。2020年度診療報酬改定でも「オンライン」がキーワードになっています。現在注目されているオンライン診療について、東日本税理士法人代表社員・所長の長英一郎さんにお話をうかがいました。

解説:長 英一郎さん<東日本税理士法人 代表社員・所長>
再診および初診での「オンライン診療」が可能になった
「オンライン診療」は、医療従事者と患者さんが直接かかわることなく診察が行えることから、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策の一環として国も推進しています。オンライン診療は、新型コロナ感染対策で重要となる「接触を避ける」という観点から、人的接触のない有効な方策であるといえます。
2020年2月28日に厚生労働省医政局医事課事務連絡が出され、継続的な医療・投薬が必要な慢性疾患等を有する定期受診患者に対し、電話や情報通信機器による診療や処方、服薬指導が可能になりました。この時点で、国としてはあくまでも「初診に関しては対面で」としてきましたが、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策(同年4月7日閣議決定)」が発出されたことで、これに即し、同年4月10日に、時限的・特例的な対応として、初診の患者にもその対象を広げる同事務連絡が通知されました。同日に診療報酬の算定も認められています。このようにして、限定的ではありますが、再診および初診におけるオンライン診療が可能になりました。
現状では新型コロナ対策としての注目度が高まっているオンライン診療ですが、そもそも2020年度診療報酬改定においても、「オンライン」はキーワードのひとつになっていました。オンラインによる診療・指導等については、多くの項目で要件の緩和や新たな算定が行われています(表1)。さらに、オンラインによるカンファレンスについても、多くの算定要件や施設基準のなかで、その適用が広げられました(表2)。


診療報酬改定における「オンライン」の活用は、患者さんの利便性と医師をはじめとする医療従事者の働き方改革がベースにあります。そこに、新型コロナの感染対策という目的が加わり、その推進が加速したのです。
3つの「オンライン」に対してどのように向き合えばよいか
医療機関では、今後「オンライン診療」「オンライン服薬指導」「オンライン会議」という3つの「オンライン」が重要なキーワードになってきます。
そこで各医療機関に求められるのが、オンラインに対応できるインフラ整備です。オンライン会議については、すでに以前から行われるようになっているので、オンラインによる通話・会議ができる環境が整っている施設は少なくないと思います。しかし、オンライン診療やオンライン服薬指導となると、患者さんからの支払いの仕組みを構築しておくことが必要になります。その方法としては、請求書を郵送し振り込みをしてもらう、あるいは次回の来院時に清算してもらうなどがありますが、クレジットカードやQR決済などによるキャッシュレスの導入を考えるのもひとつの方法です。
また、オンライン診療では、処方に伴ってオンライン服薬指導がセットで行われることが予測されます。オンライン服薬指導は薬機法改正により、2020年度9月から保険薬局が外来患者と在宅患者に対して行うことが認められるようになりました。これに規定して診療報酬も算定されています。
オンライン診療を考えるときには、受診する患者さんへも配慮しなければなりません。慢性疾患患者さんの場合高齢者が多く、ICT(information and communication technology:情報通信技術)の扱いに慣れていないことが考えられます。実施に際しては、家族の協力が得られる状況であるかを確認することも必要になります。場合によっては電話診療を検討するという視点も求められます。
新たにオンライン診療を導入する場合、例えば二プロハートラインTMのような既存の遠隔診療システムに目を向けるのもいいでしょう。

オンラインの活用、特にオンライン診療が行われているかどうかは、医療機関のこれからを占う要素のひとつになってくると思われます。つまり、オンライン診療の有無が、人々の医療機関選びのチェック項目に加わるということです。これまでは、近所だからと地の利を優先して医療機関を選んでいたものが、オンライン診療での受診が可能であれば、地の利よりも、専門性の高い医師がいる、地域の評判がよいなど、別の観点から医療機関を選択する可能性が出てくることになります。新型コロナ感染対策の流れではありますが、厚生労働省でもホームページ上でオンライン診療を実施している医療機関のリストを公表しています*。このリストも患者さんが医療機関を選択するうえでの目安になってくるかもしれません。
2020年度診療報酬でオンライン診療の要件が緩和されましたが、対面診療よりも診療報酬の点数が低いため、経営的な面からは踏み出しにくいところはあるでしょう。しかし、新型コロナの感染対策からオンライン診療が推奨される現状のなか、今後はオンライン診療なしに外来診療を進めることは考えられなくなるかもしれません。
新型コロナ感染対策によって、患者さんはオンライン診療の便利さを体感し、また受診機会を減らしたことで長期処方にも慣れることになります。これに伴い、人々の受診行動に変化が現れることは想像に難くありません。なるべくオンライン診療で受診する、軽症の疾患では来院しないなどの行動から、来院が減少することも考えられます。各医療機関では、このような変化を踏まえたうえで、早急に環境整備を行い、どのような方向性をもって診療体制を再構築するか考える必要があるといえるでしょう。
*厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について,関連情報,?対応医療機関リスト https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00014.html(2020年6月12日閲覧)
長さんがYouTubeチャンネルを開設しています。医療・介護について多角的な解説が視聴できます。
長 英一郎 医療経営チャンネル
https://www.youtube.com/user/ eiichir49
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2020年7月号 Tiara特別号より転載しています。