
2018年度旭川医療安全ネットワーク研修会リポート
旭川市内の4病院の医療安全管理者で組織されている旭川医療安全ネットワーク会による4回目の研修会が開催されました。2018年6月2日に大雪クリスタルホール(北海道旭川市)で行われた研修会には約70名が参加。北海道大学病院医療安全管理部教授の南須原康行先生の講演と「ワールド・カフェ」によるグループワークから、医療事故と医療安全について学び考えました。
医療事故調査制度の振り返りからわかる事故要因と防止策

解説:南須原康行 先生<北海道大学病院 医療安全管理部 教授>
北海道大学病院医療安全管理部教授の南須原康行先生は、長年医療安全に取り組み、医療事故調査・支援センター(日本医療安全調査機構)による研修事業にも携わっている医療安全・事故のエキスパートです。その講演が、第1部、第2部で行われました。
第1部「医療事故調査制度の現状」では、2014年に成立、翌15年に施行された医療事故調査制度について話しました。
同制度での報告内容を分類すると、診察や治療など医療に起因する(起因が疑われる)ことが明瞭ではない、不作為によるものが多いという現状が明らかになりました。原因分析の際に仮定に基づいた評価が必要で判断が難しいためです。超高齢患者の増加により、療養生活や転倒・転落、誤嚥など、患者さん自身に事故の原因がある可能性が高まっていることも要因となっています。
南須原先生は、これらを踏まえ、判断に難しい場合どのように考えればよいかを4つの事例を挙げて解説。そのなかで、「寝たきり」「がん末期」「造影剤」「誤嚥」などが、判断を困難にするキーワードとして浮き彫りになりました。
次に、医療事故再発防止に向けての話がありました。ここでは、特に事故報告件数の多い「注射剤によるアナフィラキシー」を取り上げました。アナフィラキシーはあらゆる薬剤、かつて複数回安全に使用できた薬剤でも起こり得るもので、造影剤、抗菌薬、筋弛緩薬での発症例が多くなります。その事故防止のためには「使用後は投与開始から5分間は注意深く観察すること」「アナフィラキシーのリスクが高い薬剤を使用する場合は、アドレナリンを配備し、発症を疑うような症状が現れたらためらわずに筋肉内注射を行うこと」と提言しました。この「注射剤によるアナフィラキシー」をはじめ、「中心静脈穿刺合併症」「急性肺血栓塞栓症」については、医療事故調査・支援センターが発行している『死亡の分析』* において医療事故の再発防止に向けた提言がまとめられており、南須原先生は「ぜひ参考にして、医療安全に役立ててほしい」と結びました。
*現在は『気管切開術後早期の気管切開チューブ逸脱・迷入』も発行
気をつけたい中心静脈カテーテルの抜去時の処置

講師の南須原先生も急遽グループワークに参入
第2部では、「中心静脈カテーテル抜去時における空気塞栓事例について」と題し、実際に起こった事例について、より具体的な解説が行われました。
座位のまま患者さんの中心静脈カテーテルを抜去したところ、血管内に空気が流入し、脳空気塞栓症に至った事例がありました。心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などで心臓にシャントがなければ、静脈から流入した空気が脳に至ることはないという認識をもつ人は少なくありません。しかし、静脈圧は極めて低く、流入した空気が血流と逆方向に上行するのは容易です。南須原先生は、中心静脈カテーテルの抜去時には「姿勢は仰臥位で抜去後も維持」「抜去後は圧迫止血し、止血確認後滅菌フィルムドレッシング材で密閉」「フィルムドレッシング材は24時間以上経過後に除去」などのポイントを押さえることが重要だと注意を求めました。
同じ立場同士が話し合うことで解決のヒントを探る

解説:前田章子 先生<旭川医療安全ネットワーク会(旭川赤十字病院医療安全推進室)>
講演の後は、旭川医療安全ネットワーク会の前田章子先生(旭川赤十字病院医療安全推進室)をメインファシリテーターに、「医療安全活動の困難とその対策」をテーマにしたグループワークが行われました。今回のグループワークは「ワールド・カフェ」によるもの。4〜6人ごとのグレープに分かれ、4つのステップごとにラウンドしながら話し合いを進める方法です(図)。

グループごとの話し合いは、自己紹介から始まりました。最初は遠慮がちでしたが、お互いが医療安全に携わる立場であるため、話題が具体的な悩みや課題になると熱心なディスカッションが行われるようになっていきました。1ラウンドは約15分程度ですが、時間が足りないという声も聞かれました。

旭川医療安全ネットワーク会のメンバーもグループの話し合いに参加

グループワークは真剣ななかにも和気あいあいとした雰囲気に
話し合いの中でさまざまな問題点が出され、第4ラウンドにそれらについての解決策が話し合われ、最後にグループごとの発表が行われました。例えば「インシデント・アクシデント指数がゼロレベルのレポートをもっと出してもらえるようにしたい」という課題については、「レポートの書式を簡略化するなど提出しやすい環境を整える」「レポートの提出に対する表彰制度を作る」など、具体的な案が出されていました。
最後に、旭川医療安全ネットワーク会の北川佳奈子会長(旭川医科大学病院医療安全管理部)による挨拶があり研修会は終了しましたが、終わってからも話を続ける人たちもおり、参加者の医療安全に対する意欲が感じられる研修会となりました。
旭川医療安全ネットワーク会
「医療安全の知識の習得」「地域の医療安全ネットワークへの寄与」を目的に2015年8月に結成。年に1回定期的に研修会を実施し、地域の医療安全に携わる医療者等に学びと交流の場を設けている

メンバー
北川佳奈子さん<会長/旭川医科大学病院 医療安全管理部 副部長>
葛西佳代子さん<市立旭川病院 医療安全管理課 課長補佐>
加賀絵里子さん<旭川厚生病院 医療安全管理室 看護副部長>
前田章子さん<旭川赤十字病院 医療安全推進室 看護副部長>
今野真都佳さん<旭川医科大学病院 医療安全管理部 副部長>
事務局
〒078-8510 旭川市緑が丘東2条1丁目1番1号
旭川医科大学病院 医療安全管理部内(担当 北川会長)
TEL.0166-69-3203
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2018年8月号 TiaraNo.117より転載しています。