
ニプロ株式会社では、全国各地で医療者向けの各種セミナー・講習会を実施しています。そのテーマは多岐にわたり、宮城県県北地区でも最新の感染対策の知識が学べるセミナーを定期的に行っています。2018年10月20日に古川商工会議所(宮城県大崎市)で実施された「みやぎ県北感染対策セミナー2018」の模様をお伝えします。
基調講演 各院から学ぶ日常の感染対策における取り組み

座長:吉田眞紀子先生<東北大学大学院医学系研究科 感染制御・検査診断学分野助教/東北大学病院検査部>
セミナーは、およそ100名の参加者を集め、主催者のあいさつの後、13時30分から3名の講師による基調講演が始まりました。
環境整備を評価してみよう!

演者:大石貴幸さん<済生会横浜市東部病院 感染管理対策室 副室長>
基調講演の座長であり講師でもある大石先生は、日常の環境整備の重要性をテーマに講演を行いました。
医療機関内には、人が接触する機会の多い高汚染箇所があります。その感染対策を日常から徹底して行うことは、長期生存微生物によるアウトブレイクを防ぐためにも重要です。そしてその際に気をつけたいのが「場所に合った薬剤・物品選び」。「消毒と除菌の違いを理解し、医薬品か雑貨品かを見極めて、適切に使用することが大切です」と大石先生は言い、高リスクの場所には医薬品を用いるように呼びかけました。
さらに、手指消毒剤や環境クロスの使用量とMRSAが検出された患者数との関連性など、感染対策の効果はアウトカム指標(医療の結果・成果を表す指標)により評価することで結果が明確になり、有効な対策につながると話しました。
多職種チームで取り組む人工呼吸器関連肺炎予防策

演者:松本亜紀先生<石巻赤十字病院感染管理室 感染管理認定看護師>
気管内挿管による誤嚥が原因で発生する人工呼吸器関連肺炎(ventilatorassociatedpneumonia:VAP)を予防するためには、感染対策の一つであるケアバンドルを取り入れることが有効です。
石巻赤十字病院では「VAPバンドル」を定め、VAP予防に取り組んでいます。これに加え、ICT、RST、NST、OMT、ASTという院内多職種チームが連携して「チームバリケード」を構築。合同ラウンド・会議を行ったり、症例検討シートを分析・共有するなどして、VAPバンドルの効果を高めています。
松本先生は、「ポイントを明確にして現場スタッフの積極性を引き出すことが、取り組みの徹底につながります」と述べています。
ディフィシルの感染対策予防策

演者:佐々木みゆき先生<総合南東北病院感染防止対策室 看護師長/感染管理者>
ディフィシル(偏性嫌気性グラム陽性桿菌)はヒトや動物の腸内に住む常在菌。芽胞形成菌であるため環境表面下で数カ月〜数年の間生存し、消化器感染症を引き起こす可能性があります。この感染症は再発が多いため、早期発見により患者間での伝播を予防することが大切になります。
総合南東北病院では、ディフィシルによる毒素(トキシン)を検出するCDトキシン検査と培養法を組み合わせることでより精度の高い検出を実現。そのうえで、ディフィシルに対する拡散防止を徹底しました。佐々木先生は、「菌の特性を捉えた対応でアウトブレイクを起こさないことが重要です」としました。
特別講演 根拠のある感染対策活動

演者:坂本史衣先生<聖路加国際病院QIセンター 感染管理室マネジャー>
「根拠のある感染対策活動は、感染対策に関する最新情報の収集から始まり、その際には英語による情報に積極的にあたること」と坂本先生は強調しました。
英語で発信される情報は量と質共に日本語情報を上回るからです。また、目にする情報は鵜呑みにせず、ガイドラインを読む場合は推奨度を確認し、論文の場合は「PECO」に注目しながら批判的に読むことで、紹介されている感染対策の科学的根拠を見定めることを勧めました。PECOとは、論文の内容を「patient:どんな患者に」「exposure:何をすると」「comparison:誰と比べて」「outcome:何が起こるか」という4つの視点で把握する方法です。そのうえで基本的な疫学や統計学の知識を活用しながら、論文の質を評価し、紹介されている感染対策を採用する意義を検討します。また、採用した感染対策が効果を発揮するには、マニュアルの作成で終わらず、継続的な実践に結びつけなければなりません。
坂本先生は「感染対策が定着するには、サーベイランスによるアウトカム評価に加え、さまざまな戦略を用いて現場に働きかけることが重要です」と話しました。
この特別講演を受け、座長である吉田先生は、「息の長い対策を行うためには、その第一歩として根拠ある感染対策活動とは何かを自ら考え進めていく必要があります」と結びました。

会場はおよそ100名の参加者でいっぱいに

現場で感染対策に携わっている参加者は、実践的な内容の講演に真剣に耳を傾けていた

会場にはニプロの製品も展示。積極的に質問をする参加者も多かった

熱が冷めないまま講演会場を後にする参加者たち

今回のセミナーで登壇いただいた演者の先生方
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2019年4月号 TiaraNo.121より転載しています。