
この春ニプロ株式会社は汎用超音波画像診断装置「ニプロIPエコーTM」の販売を開始しました。このエコーを多くの医療者の皆さんにご紹介するため、2019年2月14?15日にグランドプリンスホテル新高輪・国際館パミール(東京都品川区)で開催された「第34回日本静脈経腸栄養学会学術集会」に出展。そのブースで行った大阪大学国際医工情報センター特任教授の井上善文先生によるハンズオンセミナーの模様をお伝えします。
安全なTPNの実施に有益なPICCとは
PICC(peripherally inserted central catheter)とは、末梢挿入式中心静脈カテーテルのことで、肘または上腕の静脈を穿刺して上大静脈内に先端を留置させる中心静脈カテーテル(central venouscatheter:CVC)です。
カテーテル挿入時に気胸や血胸などの重篤な合併症が生じるリスクがなく、鎖骨下穿刺によるCVC挿入よりも患者さんの恐怖心が軽減されるという点でメリットがあります。一方、肘からの挿入では、肘が曲がることによる輸液の滴下不良や静脈炎の発生頻度が高いなどの問題がありますが、穿刺位置を上腕にすることで解決できるとされています。
適応は、胸部や頸部からのCVC挿入と同じで、中心静脈栄養(total parenteral nutrition:TPN)の実施、刺激性薬剤(血管作動薬、抗がん薬など)の投与、末梢静脈経路の確保が困難なケースなどとなります。患者さんが、安静の保持や挿入時の体位の維持ができなかったり、出血傾向がある場合は実施が難しくなりますが、人工呼吸管理、呼吸不全、胸郭変形、胸部手術の既往など、胸部や頸部からのCVC挿入のリスクが高まるケースに対しても実施できるのが特徴です。
2015年10月に創設された「特定行為に係る看護師の研修制度」では、PICCの挿入が特定行為の一つとされており、同研修を修了し、すでに臨床でPICCの挿入を実践している看護師もいます。PICCは、今後普及が進むことが予想され、看護師として理解しておきたい臨床手技といえるでしょう。

多くの参加者が井上先生の手技を見つめる
エコーガイド下穿刺で行うPICCの安全な手技のために
PICCの挿入は、エコー(超音波画像診断装置)ガイド下穿刺によって行われることで、より安全性が高まります。また、血管と針の位置を視覚的に確認しながら穿刺が行えるため、施術者の緊張も軽減されます。
このPICCのエコーガイド下穿刺に活用できるのが「ニプロIPエコーTM」です。従来ではモニタとケーブルで結ばれたプローブを手に持って、離れたところにあるモニタでエコー画像を目視しながら穿刺を実施します。一方「ニプロIPエコーTM」の場合は、プローブと一体化された本体を直接手に持って使用します。
この「ニプロIPエコーTM」の実際を学ぶハンズオンセミナーは、学術集会が行われた両日2回ずつ(14日:14時〜・16時〜、15日:11時〜・14時〜)ニプロ展示ブース内で行われました。
取材したのは、14日14時から行われたセミナー。多くの人で賑わう展示会場内に設置されたニプロ展示ブースで、井上善文先生(大阪大学国際医工情報センター栄養ディバイス未来医工学共同研究部門特任教授)が、「ニプロIPエコーTM」による穿刺のシミュレータ研修を行いました。
まずは、エコーのモニタで静脈の走行と太さを確認して穿刺する血管を決め、ニードルガイドをエコー本体に装着し、そこに穿刺針をはめ込んで静脈に穿刺します。井上先生が、「挿入部とエコーの画面が同一の視野に入るので、手元に意識が集中できます」と製品の特徴を説明しながら手技を実施。その手元を見ようとのぞき込む人も少なくありませんでした。
ひと通り手順等を説明した後、希望者が井上先生の指導を得て「ニプロIPエコーTM」による穿刺を体験しました。日頃から手慣れた人はもちろん、最初は要領を得なかった人も、コツをつかめば短時間で穿刺が可能に。体験者はその使用感を実感し、より関心を深めたようでした。
会場に集まった人は、医師だけでなく、看護師や臨床検査技師の姿も見られ、穿刺を体験した看護師は「とてもスムーズに穿刺ができました」と驚いた様子。看護師の場合、PICCの挿入は現在「特定行為に係る看護師の研修制度」修了者のみが行える手技ですが、その挿入を擬似体験することでPICCに対する理解を深めたようでした。

希望者が井上先生の指導で「ニプロIPエコーTM」による穿刺を体験。

エコーの画面で静脈の走行と太さを確認

ハンズオンセミナーが行われたニプロの展示ブース
◆特別インタビュー:栄養療法では静脈栄養法をうまく活用しよう

解説:井上善文先生
<大阪大学国際医工情報センター 栄養ディバイス未来医工学 共同研究部門 特任教授>
食べられても栄養が不十分な患者には静脈栄養法を
栄養不良を改善するために行われる栄養療法には、経口栄養法、経腸栄養法、静脈栄養法の3つの方法があります。患者さんが入院時の栄養評価で栄養不良とされたら、腸管が使える場合、基本的に経口栄養または経腸栄養を選択することになります。
つまり、静脈栄養法は経腸栄養法が行えない場合の選択肢です。しかし、経口栄養や経腸栄養を行っていても、十分に栄養が投与できていないことはないでしょうか。そういった場合、私は静脈栄養法の併用を考慮すべきだと思っています。
看護師の皆さんは、患者さんが経口で食事ができるよう一生懸命ケアをしているでしょう。しかし、食べられるかどうかという機能にばかり目が向いてしまい、栄養状態がどうなっているかを後回しにしてはいないでしょうか。もちろん食べるという機能を維持・改善することは重要です。しかし、患者さんの治癒を早めるためには、栄養不良を効率よく改善することが先決です。
栄養状態の改善は、病気の治癒と共に身体機能も向上させ、つまりは食べるための機能も高めることになるのです。そういう意味からも、静脈栄養法をうまく取り入れるという視点をもってほしいと思います。
NSTの活用と看護師にできること
この場合、食べられない患者さんに対する栄養サポートチーム(nutrition support team:NST)の活用も重要になります。個々の医療機関によって違いはあると思いますが、その多くはNSTをうまく生かしきれていないように見受けます。
そもそもNSTのみで入院患者さんに対する栄養管理全般を行うのは難しい。ですから、NSTは経口摂取ができない患者さんを、食べられる患者さんは管理栄養士が、それぞれ担当してしっかりと栄養管理を行うようにします。そうすることで、診療報酬上の加算(栄養サポートチーム加算、栄養食事指導料)にも合った役割のすみ分けが可能になります。
看護師の皆さんは、患者さんの一番近くにいます。ですから、その強みを生かして、患者さんの栄養状態や今どのような栄養療法が実施されているのかをきちんと把握していただきたい。そして、NSTや管理栄養士とうまく連携し、患者さんにとってよりよい栄養管理を実践するための一翼を担ってほしいと思います。
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2019年6月号 TiaraNo.122より転載しています。