
コネクタの誤接続による医療事故を防止するため、医療機器の国際規格の制定が進められています。わが国でも基準改正等の対応がなされてきましたが、国際規格の制定に伴い、その導入を進めることになりました。医療分野全体にかかわるこの動きについて、日本看護協会常任理事の熊谷雅美さんに新規格の概要と導入に向けた同協会の取り組みをうかがいました。

解説:熊谷雅美さん<公益社団法人日本看護協会 常任理事>
医療機器に国際規格を導入し今まで以上の医療事故防止を
輸液ラインに誤って経腸栄養剤を注入するなどチューブや医療機器の誤接続による事故を防ぐため、国では「医療事故を防止するための医療用具に関する基準の制定等について※1」を発出し、製品分野間の誤接続を防止する対応を行ってきました。その後、さらなる医療安全確保のため、「相互接続防止コネクタに係る国際規格(ISO[IEC]80369シリーズ)の導入について※2」が発出され、国際規格に従った誤接続防止コネクタの段階的導入が始まっています。
導入される新規格製品は、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)によるもので、ISO(IEC)80369シリーズです。医療機器の接続に使用される小口径コネクタが対象で、神経麻酔、経腸栄養など6つの製品分野となり(表1)、異なる分野間での相互接続が不可能な形状となっています。

*1 規格はすでに制定済み *2 神経麻酔分野(ISO 80369-6)の対象となる小口径コネクタ製品は、麻酔用滅菌済み穿刺針など「神経麻酔分野の小口径コネクタ製品の切替えについて」(2017年12月27日通知)の別添表に示すもの。なお、施術部位や手技にかかわらず、皮下用の注射針等は神経麻酔分野の対象とならない *3 皮下注射および血管系等のコネクタは、新規格製品となっても既存製品コネクタとの接続が可能
すでに2018年末から神経麻酔分野での製品の切り替えが進められており、続いて経腸栄養分野での実施も予定されています。いずれも、既存規格製品の出荷終了期日(神経麻酔分野:2020年2月末、経腸栄養分野:2021年11月末)は決まっており、それまでには切り替えを完了しなければなりません。
※1 2000年8月31日医薬発第888号
※2 2017年10月4日医政総・薬生薬審・薬生機審・薬生安発1004第1号
未然防止の視点で組織全体で取り組むことが必要
新規格製品への切り替えにあたって最も注意しなければならないのは、新規格製品と既存規格製品の混在です。新規格製品と既存規格製品は、コネクタの太さや形状が異なるため接続ができません(図1)。

そのため、新規格製品と既存規格製品が混在し、両者をつなげようとして非嵌合(ひかんごう)が生じ、必要な医療が提供できない事態が予測されます。切り替えにあたっては、現場に新旧の製品が混在しないよう計画的に切り替えることが望ましいでしょう。
また、すべての医療機関や高齢者施設等が新規格製品への切り替えを終了するまでには一定の期間を要すると考えられます。他施設と連携・協働して患者・利用者ケアにあたる際には、製品と使用方法について共通認識を形成する必要があります。経腸栄養分野に限っては、胃ろうなど長期留置の場合があるため、新規格製品と既存規格製品を接続するためのコネクタ(変換コネクタ)の備えが必要になります。
新規格製品への切り替えにあたっては、現場で安全上どのような懸念があるかを検討し、切り替えに伴う事故を防止するという未然防止の視点で、組織全体で取り組む必要があります。そのためには一定の準備のもと計画的に行うことが重要です。医療品医療機器総合機構(PMDA)では「医療安全情報No.53 誤接続防止コネクタの導入について※3」で必要となる準備を呼びかけ(表2)、プロトコルやチェックリストをホームページ※4で公開しています。

さらに、新規格製品では、接続する際の手技が変わります。そのため、切り替えと同時に新たな手技の習得が進まないと、必要な医療が行えません。実施者は、切り替え前に手技をマスターすることも重要です。経腸栄養分野の場合、在宅で実施者となる家族等にも指導が必要です。
※3 2018年3月通知
※4 https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/medical-safety-info/0185.html
医療分野にかかわるすべての機関・団体が一つになって推進
行政、本会、企業、医療安全にかかわる機関など、すべてが一つにならなければ安全で確実な実施は叶いません。現在は、それぞれの機関や団体が連携しながら、準備・実施しているところです。本会では、日本医療機器テクノロジー協会(MTJAPAN)と協力し、2018年夏の学会等で新規規格製品の形状がイメージできる視覚的なものを使い普及する場を設けたり、全国隅々まで普及できるよう各都道府県看護協会と協働して周知活動に取り組んでいます。
特に経腸栄養分野については、切り替えの対象となる製品を使用する患者数が多く、流通する範囲も医療機関、高齢者施設、在宅と広いため、周知方法には工夫が必要です。病院と地域医療に携わる関係者(訪問看護師や行政保健師など)と情報交換をしながら進めていく必要があります。
情報交換をする際には、栄養剤だけでなく、在宅で流動食として注入している製品や薬剤の通過性を確認しておくなど、利用者個別の状況に応じたリスク対策も話し合ってほしいと思います。また、導入前に、投与セット、延長チューブ、カテーテル、内服注入器などすべてのパーツを接続し、接続できるかを確認してほしいと思います。さらに、患者さんの療養を支える視点から、切り替えのタイミングと経腸栄養用チューブなどの交換時期をなるべく合わせられるようマネジメントしましょう。
医療機器を操作・管理することが多い看護師が主体的にかかわることで、患者さんの安全はより高まります。今回の切り替えでは、医療機器を使用する各職種、製造する企業、安全を守る機関・団体が三位一体となって取り組むことが大切です。看護師の皆さんもその輪の一員であることを意識し、連携してほしいと思います。
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2019年8月号 TiaraNo.123より転載しています。