
旭川感染管理ネットワークは、道北地域医療機関の知識・技術の向上とエリア全体の能力の底上げを目的に、毎年研修会を実施してきました。第13回を迎えた2019年4月20日の研修会は、連携を主軸に6つの演題で構成。670名の参加があり、同時に開催された企業展示も盛況で、会場となった旭川トーヨーホテルは熱気にあふれていました。今回はプログラムのなかから3つの演題をレポートします。
お宅の病院どうしてます?感染対策のあんなこと、こんなことインフルエンザ対策−気になる他施設の取り組み—<旭川感染管理ネットワーク>

参加者のスキルアップと地域の感染管理向上を目指し研修会がスタート
旭川感染管理ネットワークのメンバーが座長・シンポジストとして、所属する医療機関のインフルエンザ対策の実際を報告。対策で迷うことの多いポイントを「流行前の対策」「発生者の把握(報告)」「ベッドコントロール」「対策の開始と解除」「対策の周知方法」「面会制限・禁止の基準」「予防投与の基準」「アウトブレイクの判断基準」に分け、各自が直面した問題への具体的な対処法を紹介しました。
○発生時の報告書をチェックリスト方式にして情報漏れ防止と早期対応を図る。(旭川医療センター)
○隔離ができない場合は、陽性者脇を1床分空け、カーテンやパーテーションを用い陰性者と1m以上離す。(市立旭川病院)
○旭川市または近隣での流行を確認、あるいは外来で1例目を確認した時点で対策を開始。注意報が出されたら強化対策を実施。(旭川医科大学病院)
○面会者への対策の周知は、病棟入り口(廊下)とカウンターでの掲示、および1日5回の院内アナウンスを実施。(旭川赤十字病院)
○患者への予防投与は、投与基準をマニュアル化し対応している。(旭川厚生病院)
いずれも、ガイドライン等を踏まえたうえでそれぞれの実状に合うよう工夫がなされており、すぐに現場で活用できる情報ばかりでした。
保健所のお仕事−感染症対策について

講師:鈴木直己先生<旭川市保健所 保健所長>
地域で感染対策を円滑に行うためには、保健所がどのような役割を担っているかを知っておくことが必要です。鈴木先生はまず、医療機関には保健所に対しどのような場合どのような報告等が求められるかを説明。加えて、報告と同時に施設内ですべきことについても触れました。この際「医療機関等における事故発生時の報告事務取扱要領(旭川市役所)」を例に、行政でも、福祉施設を含めて事故や感染の対応を考えるようになっており、地域を網羅した対策に結びつけることを目指していると話しました。
また、感染対策マニュアルは施設ごとに整備が必要とし、その際重要になるのが感染経路を把握することだと強調。早めに報告・相談することが必要で、対応においては場合によりほかの医療機関との連携も考慮すべきであると話しました。
薬剤耐性(AMR)対策における保健所の役割についても触れ、自身が「積極的疫学調査」に携わった経験から、迅速な初動の重要性を訴えました。さらに、参加者に対し「感染対策が自施設の職員に浸透・徹底されているか」を問い、実践的な研修と発生事例の振り返りがポイントであると結びました。

参加者の質問・相談に応える感染管理認定看護師たち

多くの参加者を受け入れるため、メイン会場に加え、モニタで視聴する第二会場も設けられた
感染管理認定看護師がお答えします!−日頃の疑問Q&A−
旭川感染対策ネットワークのメンバーをはじめとする感染管理認定看護師たちが、参加者の個別の質問に直接答える、同研修会の人気コーナーです。当日はそこに講師の先生も加わり、参加者の質問に対応しました。
横一列に座った認定看護師らの前には真剣に話をする参加者が並び、その後ろには順番を待つ質問者がずらり。質問や相談の内容は、自施設が抱えている問題や感染管理者として判断に迷っていることなどさまざまです。感染管理者は一人でその務めを担っていることも多く、質問・相談の貴重な機会を得た参加者は、1秒でも無駄にしたくないとばかりに、認定看護師らと熱心に話し合っていました。
本文でご紹介できなかった演題
●『病院清掃を成功させる鍵 −病院清掃受託事業者とICTのコラボレーション−』
東京医療保健大学大学院 医療保健学研究科 感染制御学 教授菅原えりさ先生
●『周術期における院内感染対策 −ATPを活用して−』
病院衛生研究所 所長/山陽小野田市立山口東京理科大学 客員教授 尾家重治先生
●『地域包括ケアにおける感染管理の考え方』
沖縄県立中部病院 感染症内科地域ケア科 医長 高山義浩先生


大勢の参加者であふれる企業展示会場
旭川感染管理ネットワーク
旭川地区の感染管理認定看護師道内1期生が中心となって2007年に発足。各医療機関の感染管理の知識・技術の向上を図り、道北地域の感染管理向上の支援が目的。年1回の研修会開催のほか、地域内での日常的な連携にも寄与している。
メンバー
桐 則行さん(会長/市立旭川病院 医療安全管理課)
石上 香さん(旭川医科大学病院 感染制御部)
市川 ゆかりさん(旭川赤十字病院 感染管理室)
近藤 奈津子さん(JA北海道厚生連旭川厚生病院 感染対策科)
小林 かおりさん(JA北海道厚生連旭川厚生病院 感染対策科)
木元 史子さん(国立病院機構旭川医療センター 感染対策室)

事務局
市立旭川病院 医療安全管理課感染対策
旭川市金星町1-1-65 TEL.0166-24-3181
知識を知恵に変える方法をもち帰ってほしい

解説:桐則行さん<旭川感染対策ネットワーク 会長>
第13回を迎えた研修会のテーマは「連携」。行政、他職種、地域など、連携を多角的に捉えてプログラムを構成しました。一方で、最新の医療材料等に触れる機会として続けてきた企業展示は、過去最多の60社に協賛いただき、より充実した内容になりました。
感染対策の遵守・徹底のためには、ガイドライン等におけるエビデンスを理解し異なる環境下でも生かせる「知識を知恵に変える方法」が重要です。私たちの研修会を通し、参加者がそれを持ち帰ってくれることを期待しています。そしてその方法をうまく活用してもらうことが、各施設・地域の感染管理向上につながると思っています。
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2019年10月号 TiaraNo.124より転載しています。