
2020年度診療報酬改定は、医療機関にとって、医師の働き方改革に向けての組織づくりの指標ともいえます。そして、これからの地域医療がどのように形づくられていくのか、それに伴い看護職はどのように進めばよいのかを知る手がかりをみつけることもできます。前号から引き続き、診療報酬を専門とする株式会社ウォームハーツ代表取締役の長面川さよりさんに、そのポイントを解説していただきます。

解説:長面川さよりさん<株式会社ウォームハーツ代表取締役>
専門性と経験・実績の両面で看護師を評価する内容に
これまでの診療報酬改定と同様に2020年度の改定でも、専門性の高い看護師として認定看護師*の配置が要件になっている加算がいくつかあります。「?-3-? 多職種チームによる摂食嚥下リハビリテーションの評価」では、摂食機能療法の経口摂取回復促進加算を見直し「摂食嚥下支援加算」に名称を変更して、摂食嚥下支援チームの設置を施設基準としています。チーム内には摂食・嚥下障害看護認定看護師*の配置が要件となっています。同様に「?-7-2-? 認知症ケア加算の見直し」でも、認知症ケア加算が2段階から3段階に変更になり、加算2では、「専任の医師または認知症看護認定看護師*を配置し、病棟での認知症患者へのケアの実施状況を把握、病棟職員に対し必要な助言等を行うこと」が要件です。加算1の認知症ケアチームの介入が難しい医療機関においても、専門の看護師による病棟職員教育等への役割評価と考えられます。
また、看護師の日々の医療提供支援の経験を評価した新設項目もあります。「?-4-? 移植を含めた腎代替療法情報提供の評価」では、「腎代替療法指導管理料」が新設。「医師と共同で腎臓病患者の看護に従事した3年以上の経験を有する専任の看護師が指導・相談を行うこと」が要件です。「?-1-?排尿自立指導料の見直し」で新設された「排尿自立支援加算」でも、施設基準となる排尿ケアチームのメンバーに「下部尿路機能障害のある患者の看護に従事した3年以上の経験があり、所定の研修を修了した専任の常勤看護師」が含まれています。
*日本看護協会による認定資格

ICT、AI、IOTの活用で看護職の日常業務も変わる
近年では多様な分野での活用が進んでいるICT(information and communication technology:情報通信技術)ですが、診療報酬においても、2018年度改定から情報通信機器を用いたカンファレンス等が算定されるようになりました。2020年度改定では、さらにその活用を推進しようとする動きがあります。「?-4-? 情報通信機器を用いたカンファレンス等の推進」では、感染防止対策加算1・2、入退院支援加算1、退院時共同指導料2、在宅患者緊急時等カンファレンス料、在宅患者訪問褥瘡管理指導料、訪問看護療養費における在宅患者緊急時等カンファレンス加算において、「やむを得ない事情でない場合」でも情報通信機器によるカンファレンスが実施可能となりました。
その動きは看護の現場でも明確化され、「?-2-?夜間看護体制の見直し」のなかで、要件として、ICT、A I(artificial intelligence:人工知能)、IOT(internetof things:モノのインターネット)等の活用によって、看護要員の業務負担軽減を行っていることが含まれています。今後は、これらを効率よく活用するために、日常業務の洗い出しを行い、検討することも必要になるでしょう。
診療報酬のなかにはこれからの看護を見直すヒントが
診療報酬改定については、院内で勉強会などが行れていても、日常業務のなかでみなさんが意識することは少ないのではないでしょうか。しかし、加算の内容やその要件を知っておくことが、日々の業務を対価(評価)に反映させることにつながったり、日常の看護に新たな視点を与えてくれることもあると思います。
先にお話しした摂食嚥下支援加算では、対象とする患者の規定が外され、より広い患者に適用されることになったため、支援の機会が増えました。また、これまで何気なく行ってきた口腔ケア等の間接訓練や食事介助等の直接訓練、食形態の調整依頼、嚥下しやすい頸部角度のポジショニング調整などを、多職種共同による摂食嚥下支援計画書に組み込むことは、支援効果を上げることにつながると思います。また、「?-1-? せん妄予防の取り組みの評価」で新設された「せん妄ハイリスク患者ケア加算」では、せん妄のリスク因子の確認と対策のためのチェックリストの作成が必要です。そのため、予定入院患者についてのリスク因子の確認を、入院時支援加算での情報収集の評価と併せて行うことができれば、両方の加算を算定することができるうえ、看護業務の効率化が図られることになります。
診療報酬の内容を丁寧にみていくと、このような気づきがたくさんあるはずです。看護職として行ってきた業務の1つ1つが評価され、算定に結びつくことは、看護のプロとしての自信にもつながるのではないかと思います。
医師の働き方改革がスタートする2024年度までの間、医療機関には、医師の業務負担を減らすだけでなく、看護職はじめ各医療職を有効に生かせる組織づくり、さらに活用できる医療職の育成が求められます。この4年間は、看護職のみなさんが、組織の動きに合わせ、自らのキャリア形成を考えるチャンスになるかもしれません。
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2020年9月号 TiaraNo.129より転載しています。
