
医療機関にとって勤務する看護職の育成は重要な位置付けにあります。看護職の業務には多様な専門知識と技術が求められるだけに、各施設ではその研修のあり方を振り返りながら、よりよいものをつくりあげていこうとしています。2020年度から新人看護師に対する「新人注射勉強会」を見直し、新たなプログラムをスタートさせた真生会富山病院の研修の様子をご紹介します。
早期・確実な新人看護師育成のため現場での対応力までカバーする内容に
富山県射水市にある医療法人真生会 真生会富山病院は、1988年に医院として開院し、着実に機能を増やしながら2000年には99床を有する病院となりました。現在診療科は22となり、総合病院として地域のニーズに対応しています。その業務を支える看護職は180余名(補助者含む)で、新人看護師も貴重な戦力として数えられています。そのため新人看護師研修には「早期に確実に育成すること」が求められ、特に注射については、短期間で即戦力となり得る知識・技術を身につけることが期待されています。
このような現状を受け、看護部ではこれまで手技の習得を中心に1日で行ってきた「新人注射勉強会(以下、勉強会)」を、2020年度から2日間かけることにしました。新たにシミュレーション演習を取り入れ、現場での対応力も含めたスキルの獲得を目指した研修を始めたのです。
「注射は針を穿刺して薬液を注入できればいいというものではありません。臨床では、注射を施行する前の声かけから注射後の観察まで、さらに急変などが起こった場合にはその対応まで行うことが求められます。新人看護師がこのような流れで注射を早期に実践できるようにするため、これらが身につけられる教育を構築していく必要があると考えました」勉強会を担当している黒川依子さんはこう話します。黒川さんは、看護部教育部会新人担当として5年前から勉強会を企画・運営。その後2019年に指導者として自身のスキルを高めたいと「IVナース指導者養成研修」*を受講したことを契機に、勉強会の内容を見直す必要性を感じ、2020年度に新たなプログラムを導入したそうです。
*IVナース育成の指導に必要な知識やスキルを身につけられる「IVナース指導者養成研修」。ニプロ株式会社が2019年度から実施。e-ラーニングと講義・演習によるプログラムで、e-ラーニングは受講後も使用できる。


注射の技術の獲得を目指す一方で新たな試みでは課題も浮き彫りに
2021年の勉強会は、5月12〜13日に実施されました。受講した新人看護師は6名です。
1日目は、注射についての理解と基本となる手技の習得を目指したプログラム。注射の種類や適応、注射の方法などに加え、施行時の確認や患者説明の要領まで、注射の基礎知識についての講義から始まりました。続いて動画と実践による手技の演習へ。受講者2人に対し1〜2名の指導者がつき、受講者の疑問等に応えながら、手技のポイントや実施のコツなどをレクチャーしました。最後に各注射方法についてのタスクトレーニングを行い、それぞれの流れを確認しました。
「受講者はまだ臨床経験が不足しているので、現実感をもって手技にあたるのは難しいでしょう。そのため理解するのに苦労している場面もありましたね。勉強会では、注射における注意事項を理解し、一つ一つの技術を基本からしっかり獲得してもらうことに主眼を置きました。そのうえで、それを臨床で実践し、観察・対応までできるようになってほしいという思いをもって指導にあたりました」(黒川さん)
2日目はシミュレーション演習と輸液ポンプ・シリンジポンプの取り扱いです。
シミュレーション演習では、「アナフィラキシーショック」と「迷走神経反射」の2事例について対応を考えます。ところが、今回の勉強会では当日になって予定が変更に。各事例についての標準的な対応を確認した後、1日目に学んだ基本の技術の確認となりました。経験のない新人看護師がシミュレーションを行うには、状況をイメージして動き方を考えなければなりません。受講者たちには前日に事例への対応が課題として与えられましたが、イメージと自らの動きを具体的に結びつけることは難しかったようです。シミュレーション演習の運び方に課題を残すことになりました。
輸液ポンプ・シリンジポンプの取り扱いに関しては、予定どおり講義と演習が行われました。



2021年度勉強会の振り返りから受講者により役立つプログラムを
2021年度の勉強会におけるシミュレーション演習で生じた課題について、黒川さんは次のように振り返りました。
「新人看護師に考える糸口を見出してもらえるような働きかけが必要であることを痛感しました。SNSや動画を活用するなど、わかりやすく状況が把握できる方法を考えなければいけませんね。シミュレーション演習では、急変対応だけでなく、基本知識・技術の応用も身につけられます。常に応用が求められる臨床現場に立ったとき、受講者に少しでも役立ててもらえるプログラムにしたいと考えています」
2020年度の勉強会は、新型コロナウイルス感染症対応(発熱外来の開設)により6月の実施でした。 1カ月ではありますが、受講者が臨床現場を長く体験していたことで、シミュレーション演習の際も実際の様子をイメージしやすかったようだといいます。勉強会の実施時期も来年度以降の検討要素の1つになるのかもしれません。
新しい試みを行う際の難しさがうかがえる一方で、新人看護師が自信をもって業務に取り組めるよう育成を進めたいと、新しい試みに取り組んだ看護部の熱意が感じられる勉強会でした。


本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2021年10月号 TiaraNo.133より転載しています。
