

第25回日本看護管理学会学術集会 スポンサードセミナー「アフターコロナ時代の看護ケア(オンライン面会)の構築 タブレット端末を活用した面会システムの導入から定着」(現地開催/ LIVE配信:2021年8月29日 神奈川県横浜市・パシフィコ横浜ノース 共催:ニプロ株式会社)が開催されました。
新型コロナウイルス感染症の影響で続いている面会制限。患者さんに及ぼす影響は見逃せず、看護の立場から新たな動きが始まっています。同セミナーからその取り組みの内容をリポートします。

東京都看護協会オンライン面会支援事業の概要
公益社団法人東京都看護協会 危機管理室 オンライン面会支援事業事務局 菊地美貴先生
東京都看護協会では、2020年度から行っているさまざまな新型コロナウイルス感染症対応のひとつ「医療用物資無償提供」の一環として、タブレット端末を提供し、「オンライン面会支援事業」を立ち上げました。
東京都内の参加医療機関185施設に対し、2021年8月までに、必要機器(タブレット、ケース、タブレットスタンド、アームスタンド)の提供と機器設定のサポ ートを実施。9月以降は、オンライン面会導入手順書や必要書類等書式などを順次提供する一方で、タブレ ットの使用方法の助言、タブレット端末活用事例調査を行っていく予定です。併せて、施設内の通信環境の整備にも活用できる「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」についての情報提供も行っています。
今後もオンライン面会の必要性は継続すると考えられます。「実施には職員の負担を増大させる懸念もありますが、部門横断的に取り組むことでカバーできます。医療機関全体のプロジェクトとして定着させることが必要です」と菊地先生。さらに、感染対策上面会ができずに苦慮する現場がまだまだ多いことを踏まえ、「オンライン面会は、患者さんや家族に安心をもたらし、治療・療養に対する意欲も高めます。看護サ ービスの新たな提供方式として確立されていくことに期待しています」と話しました。


クラスター発生後家族面会中止からオンライン面会導入まで
社会福祉法人浄風会中野江古田病院 看護部長八鍬美香子先生
中野江古田病院では、2020年4月に新型コロナウイルス感染症によるクラスターが発生。感染状況が落ち着き通常診療が再開した8月以降も、一般患者さんの面会制限は継続していました。その期間が1年以上に及んでいたとき、東京都看護協会から呼びかけがあり、オンライン面会に取り組むこととしました。
職員には院内感染拡大や業務負担を懸念しての抵抗感がありましたが、同協会からの支援内容と職員の負担にならない方法を考慮することを管理者が丁寧に説明し、職員の理解と協力につなげました。面会は、予約制で週2回、1患者10分とし、タブレットを使用して実施します。予約は医事課スタッフ、面会者対応は外来看護スタッフ、患者対応は病棟看護スタッフと、役割分担をすることで職員の負担軽減を図りました。
同年4月の試行期間中には10組の患者さんと家族がオンライン面会を実施。家族からは、「1年ぶりの再会が嬉しかった」「今後も継続してほしい」という声が多く聞かれました。職員も必要性を強く感じたといいます。
「協会のサポートが力強く感じられました。さらに、患者さんと家族のあふれる笑顔が、スタッフの気持ちを後押ししたと思います」と、八鍬先生は試行事業を実施しての感想を述べました。そして家族や職員はもとより組織としても継続を希望するとしました。

オンライン面会一部導入から組織としての定着促進
一般社団法人衛生文化協会城西病院看護部長 立石久留美先生/療養病棟主任 町田裕美先生
地域包括ケア病棟と医療療養病棟を擁する城西病院では、継続的医療が必要な患者さん、終末期や看取りの患者さんが多く、2020年4月からの面会全面禁止が継続するなか、家族から面会を希望する声が高まりました。これを受け、感染対策が取れる方法としてオンライン面会を検討。同年7月にはWi-Fiを使用した面会方法で試験運用を始めました。当初はなかなか浸透しませんでしたが、次第に家族やスタッフから好評を得て、月に30件実施するまでになりました。
「しかし、マンパワーと使用スペースの不足、電波状態の悪さ、落ち着かない環境などで面会予約がシステム化できず、患者さんや家族の要望に添えないことが多くなりました」と町田先生。次第にその限界を感じるようになったといいます。
そんな課題を抱えていた2021年5月、東京都看護協会からオンライン面会支援事業の説明を受けました。これまでの実績と現状から試行事業を開始。SIMカード付きタブレット端末で電波トラブルが減少したことで、十分な面会時間が確保できるようになり、スタッフのトラブル対応の負担もなくなりました。
立石先生は、今後は対象者を広げる工夫とシステム構築・人材確保が必要とし、「オンライン面会を院内の看護として定着させたいと思っています。そのために、看護管理者として組織への働きかけを行っていきたい」と述べました。
セミナーの座長を務めた東京都看護協会会長の山元惠子先生は「オンライン面会支援事業では、面会制限を乗り越えるための問題解決方法として(1)感染対策の徹底と管理、(2)ITの導入・活用、(3)新しい面会システムの構築、(4)多職種との協働と連携を行います」と解説。これにより、IT環境の改善、患者さんと家族の満足、院内のチーム力向上、業務の省力化が実現され、オンライン面会がよりよい看護実践を確認できる機会となることに期待していると結びました。





本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2021年12月号 TiaraNo.134より転載しています。
