

医療・福祉施設のための設備・機器の総合展示会であるHOSPEX Japan 2021で看護セミナー「安全な医療をめざして──経鼻栄養チューブの安全管理──」(現地開催/ LIVE配信:2021年11月26日 東京都江東区・東京国際展示場)が開催されました。これは「医療安全全国共同行動 3a:危険手技の安全な実施 経鼻栄養チューブ挿入時の位置確認の徹底」をベースに安全な経腸栄養法について考えるもの。そのセミナーから講演の内容をリポートします。

講演1:行動目標 3a 経鼻栄養チューブ挿入時の位置確認の徹底──現状と課題
一般財団法人竹田健康財団 竹田綜合病院 須田 喜代美 先生
医療安全全国共同行動における行動目標の1つ「3a:危険な手技の安全な実施 経鼻栄養チューブ挿入時の位置確認の徹底【2009年対策 Ver.2】」(p.3参照)について、須田先生は、(1)経鼻経腸栄養の適応、(2)適切なチューブの選択、(3)デバイスの安全使用と管理、(4)チューブの挿入手技、(5)現状の課題と限界という5項目から解説をしました。
適切なチューブの選択では、まず排液用チューブを栄養用として使用しないことを強調。ポリ塩化ビニル製であるため、長期間使用すると硬くなって屈曲が起こりやすく、食道穿孔などにつながる恐れがあるといいます。,/p>
デバイスの安全使用と管理としては、切り替えが進む新たな誤接続防止コネクタを使用する際の工夫を紹介しました。プライミング時にシリンジの先端部まで栄養剤を充填しない、接続・取り外しは留置側を上にして行うなど、実践的なポイントを挙げました。また、チューブの挿入後は留置位置を複数の方法で確認することが重要としました。今後広まることが予測されるスカイブルー法についても紹介しました。須田先生は、最後に「医療デバイスが原因と考えられる有害事象の分析をする第三者機関が必要。また、事故が起こりにくい安全・確実なデバイスの開発にも期待しています」と結びました。

講演2:経鼻栄養チューブの関連事故講演2 からみた課題
医療法人琴仁会光生病院 内科、人工透析部長 喜田 裕也 先生
喜田先生は、行動目標3aが目標とする経鼻栄養チ ューブの挿入・留置手技に伴う有害事象とこれに起因する死亡を防ぐためには、「初回挿入留置時のX線撮影による位置確認」が重要としました。そのうえで、 2000〜2018年に発生した20の死亡事例を分析、その課題について解説しました。
誤挿入による気胸の発生や誤挿入がなくても起こ った鼻出血を事故原因として上げ、さらに画像診断エラーに着目。エラーを起こさないためには、X線撮影時にチューブの先端のみでなく、走行路をみることが重要としました。その場合注意すべき基準点は、(1)食道に沿っているか、(2)気管分岐部で気管支と明確に分離できるか、(3)横隔膜を正中で通過しているか、(4)先端は左横隔膜の下に明確にみえるか。これらを踏まえて、誤読影の起こりがちな画像の見方を説明しました。そのほか、チューブ留置後のpHチェックにおいても解釈困難事例があること、在宅・介護施設では位置確認の方法についての検討が進んでいないことも課題として挙げました。
まとめとして、喜田先生はX線による確認は信頼度が高いものの限界があるとし、「挿入手技・確認の基本を再確認することも忘れてはなりません」と述べました。

講演3:経腸栄養製品のコネクタ形状(ISO80369-3)導入後の現場の課題
北里大学病院 医療の質・安全推進室 荒井 有美 先生
誤接続防止コネクタの国際規格(ISO[IEC]80369シリーズ)の導入に伴い、経腸栄養製品でも現在切り替えが進んでいます。荒井先生は、医療安全全国共同行動メーリングリストを通じて得られた情報から、新規格製品の導入後の現状と課題について報告しました。
それによると、回答があった85件の約77%で導入が済んでおり、うち約31%にトラブルがあったといいます。トラブル内容としては「接続部が外れなくなった」「コネクタ部が破損した」「接続部の汚れが落ちない」などが多くなっていました。荒井先生は、新規格製品による問題点の検証で「接続部の汚れ」「吸い上げができない」「コストがかかる」などを挙げました。そのうえで、各施設での対応例から対策のヒントが得られるとし、情報を共有できる仕組みづくりが必要と話しました。,/p>
荒井先生は、「切り替えに際しての取り組みとして周知・連携・指導がキーワードとなるが、それだけでは解決できない問題があり、現場で起こっていることを日本医療評価機構医療事故情報収集等事業やPMDA(医薬品医療機器総合機構)、メーカーなどに伝える姿勢が大切」と訴えました。そして「それを公表し、医療従事者が知ることのできる環境をつくることで防げるトラブルもある」としました。
セミナーのまとめとして、東京都看護協会会長の山元惠子先生は「経鼻栄養チューブの管理の方法は、何十年もの間変わっておらず、用いられる医療用材料や機器も変わっていない。安全な管理を行うために、みんなで考え取り組んでいく必要があると思います」と述べました。さらに、医療安全全国共同行動の取り組みを紹介し、今回のセミナーで使用した冊子も活用して、安全な医療を目指していくことを呼びかけました。



「医療安全全国共同行動」と「行動目標・推奨する対策」
「医療安全全国共同行動“いのちをまもるパートナーズ”」とは、医療の質・安全学会、日本病院団体協議会、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護協会、日本病院薬剤師会、日本臨床工学技士会の呼びかけで始まったキャンペーン事業。医療行為にかかわる有害事象と有害事象に起因する入院中の死亡を低減するため、9 つの目標と推奨対策を、 広く早く全国の医療機関に広めることが目的です。 2008〜2013年に行われ、この事業に基づいた活動は現在も引き継がれています。
今回のテーマとなった「行動目標3a:危険手技の安全な実施 経鼻栄養チューブ挿入時の位置確認の徹底」では、?経鼻栄養チューブの挿入と位置確認のためのマニ ュアルの策定および遵守、?空気聴診法を位置確認の確定判断基準にしない、?初回挿入留置時はX線撮影で位置確認を行う、?pH測定による補強確認を励行する(チ ャレンジ)という対策を推奨しています。
これに基づいて冊子(写真)がまとめられており、推奨する対策の手技とポイント、エビデンスが解説されています。
冊子『経鼻栄養チューブの安全な挿入と管理─経鼻栄養チューブ挿入に伴う事故の現状と安全管理に関する今後の課題─』

一般社団法人医療安全全国共同行動 いのちをまもるパートナーズ http://kyodokodo.jp
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2022年4月号 TiaraNo.136より転載しています。
