
静脈注射の看護師による実施が認められて以来、各医療機関で専門性を備えた「IVナース」の養成が行われています。そしてそこには、養成の過程で生じたさまざまな課題に取り組む教育担当者たちの姿があります。公益財団法人山梨厚生会では、2020年度に「IVナースプロジェクトチーム」を立ち上げ、課題を解消する新たな教育研修の仕組みづくりをスタート。その様子をお伝えします。

地域を支える安全な医療を目指し 会独自の「IVナース」の確立へ
山梨厚生会は1951年に設立された公益財団法人です。設立当初は結核の予防と撲滅を目的としていましたが、時代の要請を受け、地域の総合的な医療を支える存在となっていきました。現在は、山梨厚生病院、塩山市民病院、甲州市立勝沼病院(指定管理者病院*)、山梨市立牧丘病院(同)という4病院のほか、在宅医療・介護、福祉に関連する施設を有しています。
*地方自治法により定められた指定管理者制度により、地方自治体・地方公共団体から維持・管理を委託された公共医療機関
これら4つの病院は、施設規模がまちまちで、診療科によって提供する看護も異なります。ですが同会としては、診療の補助を担う看護師は確かな技術と知識を等しくもち、安全性を担保することが必要と考え、4病院共通の教育研修を実施しています。
IVナースの養成もその1つです。静脈注射については、2002年に看護師による実施が法律で認められるようになり、翌年には日本看護協会が「静脈注射の実施に関する指針」を提示。同会でも、この指針に基づいて看護師による静脈注射を実施してきました。そうするなか、4病院の実情により即した独自のIVナースを確立することになりました。
「IVナース管理プログラム研修(以下、IVナース研修)」がスタートしたのは2019年度。4病院に勤務する看護師に対し、部署で研修未修了者に教育・指導を行うインストラクターの取得を進めました。インストラクターは、静脈注射の基本手技から末梢静脈留置針(PVカテーテル)の挿入や中心静脈カテーテル(CVカテーテル)の管理までができる実施範囲2(レベル?a・b)(表2)を習得することが前提です。そして、2021年には、5年以上の経験があり、管理者またはリーダーの役割を担う看護師がインストラクターとしての認定を受けました。

課題の解消に向けて発足したIVナースプロジェクトチーム
このようにIVナースの養成が進む一方で、課題も見えるようになってきました。同じようにインストラクターの認定を受けていても、所属する部署や診療科によっては、注射業務の実践が少ない人もいます。そのため、インストラクター間の経験に差が出てきてしまうという状況がわかってきました。また、認定時に実技試験を行っているのがPVカテーテル連のみだったため、ほかの注射業務については知識と技術に自信がもてないケースも出てしまっていました。アフターフォローの必要を痛感した同会では、「IVナースプロジェクトチーム(以下、プロジェクトチーム)」を2020年4月に発足。指針やマニュアル、研修などの見直しを行い、IVナース認定の仕組みの再構築を図ることにしました。
プロジェクトチームは、同会の看護管理部門、医療安全対策室、感染管理対策室の代表者に、現場の声を反映させるために4病院看護部の代表者を加え、12人のメンバーで構成されています。甲州市立勝沼病院看護師の田口雅子さんはその1人です。「プロジェクトチームでは、現在実施範囲2の位置付けの再確認と業務内容の精査を行いながら、認定の仕組みを見直しています。それに伴い、研修の組み立てについても検討しています。また、並行して『IVナース管理マニュアル』の改訂作業も行わなければなりません」(田口さん)

田口さんはそれまでも教育委員を務めてきましたが、プロジェクトチームへの参加が決まった2021年に、もう1人のメンバーとともに外部研修(IVナース指導者研修/ニプロ株式会社)を受講。そこで得た知識をチームの活動に生かしています。
IVナース研修がスタートした背景には、看護師の注射技術・知識の底上げを図るという側面もあったようです。そのためか、インストラクターに対する捉え方がスタッフによって違ってきていました。そこで更新制を取り入れ、2022年度から始めたインストラクターフォロー研修では、インストラクターの位置付けと役割への理解を徹底し、みんなが共通認識をもてるようにしました。2023年度のIVナース研修では、さらに幅広い実技試験を導入する方向で進めています。


実技試験導入やマニュアル改訂でIVナース研修をよりよいかたちに
「実技試験の導入については、プロジェクトチームでも意見が分かれました。当会の看護師はその経験年数に幅があり、学生時に受けたカリキュラムにも違いがあります。ハードルを上げることで、スタッフの意欲が低下してしまうのではという懸念もありました」と田口さん。しかし、これまで行ってきた注射業務を単なる手技にせず、根拠を結びつけてもらうことで確かな技術にしたいと考え、チームに実技試験の導入を提案したといいます。さらに、それがインストラクターのスキルを等しく保つことにもつながるとも話します。
「IVナース管理マニュアル」については、より静脈注射に特化したものにして、研修でも役立てられるようにするため、内容の見直しを進めています。「せっかく改訂しても、みてもらえなければ意味がない。研修を受けるときにも役立ててもらえるものを目指しています」(田口さん)
新たなIVナース研修の構築に向けて、プロジェクトチームの活動は現在進行中です。
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2023年6月号 TiaraNo.143より転載しています。
