
第50回記念開催となった「国際モダンホスピタルショウ2023」で公益社団法人日本看護協会によるセミナー「バイタルサインは『測定』から『評価』の時代へ─プロトコール整備で看護師の役割がより重要に─」(2023年7月13日 東京都江東区・東京国際展示場)が行われました。講師は本誌連載の執筆者でもある青柳智和先生。このセミナーから、日本看護協会が2022年に発行したタスク・シフト/シェアに関するガイドラインをベースにした、看護師がより力を発揮できる働き方についての提案をご紹介します。

![[座長]元日本看護協会会長 国際医療福祉大学大学院 副大学院長 福井トシ子先生](https://images.microcms-assets.io/assets/eb0d1a2254c045f4b87e572f39f0244f/d3f3cc0658d642e69d08a6045630f0ba/hukui-e1696227937699-c744946098f6.png)
![[講師]水戸済生会総合病院 看護師特定行為研修室長 株式会社ラプタープロジェクト代表取締役 青柳智和先生](https://images.microcms-assets.io/assets/eb0d1a2254c045f4b87e572f39f0244f/8c2eb6af6ecd40ec8bc9a5979b758114/aoyagi-e1696228015901-964a0f0417ed.png)
包括指示に基づく検査での情報提供は「診療の補助」に当たる
看護師の仕事とは「診療の補助」と「療養上の世話」である──水戸済生会総合病院(以下、水戸済生会)看護師特定行為研修室長で自身も特定看護師*1として臨床で活躍する青柳智和先生は、セミナ ーの冒頭で看護師の仕事をあらためて確認しました。そして「コロナ禍で看護ができなかった」という看護師の声に疑問を呈し、「コロナ対応は診療の補助である」と強調。療養上の世話とともに重要な看護師の仕事で、どちらも患者さんが看護師に期待する役割だと話します。さらに、夜中に発熱した術後患者さんを例に、療養上の世話や対症療法に加え「熱源精査」も看護師として大切だとしました。「このような臨床推論を行うことは、原因と考えられる疾患に矛盾のない所見を明らかにし、医師への有益な情報提供につながります。その結果、疾患の早期発見・重症化予防、ひいては患者さんが本来求める『病気を治す』ことに結びつきます」と述べました。
日本看護協会がまとめた『看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド*2(以下、ガイドライン)』では、事前に取り決めたプロトコール*3に基づき、看護師が薬剤の投与、採血・検査を実施することを可能としています。青柳先生はこれにも触れ、看護師が検査を行い医師の診断に必要な情報を提供することは、医師の診療の補助に当たるという考えを示しました。さらに、的確な情報の提供が看護師の役割においてますます重要になることも示唆しました。

大学院や特定行為研修などによる知識の習得が看護師に求められる
その一方で、青柳先生は、看護師が検査を実施するための注意点も挙げました。
まず、看護師には、その検査が本当に必要かを見極めるための知識とトレーニングが必要ということ。やみくもな検査は、医原性貧血や患者さんの苦痛、検査費用、医療従事者の負担などに影響を及ぼすおそれがあります。青柳先生は、ガイドラインで検査も含めた包括的指示を活用する看護師について「大学院において高度な看護実践についての教育を修了している等の看護師が行う」としている点に着目。実践的な理解力や思考力、判断力とともに、高度で専門的な知識・技能を学んだ特定看護師もこれに当たると捉えています。ただし、特定看護師の場合、研修を修了しただけでは十分でなく、臨床現場で研鑽を積むことが条件になることも付け加えました。
さらに、医師が出すプロトコールなどの包括的指示については、施設全体で議論を重ね、判断・決定し、施設の責任のもとで実施することが必要だとしています。そして、水戸済生会で実際に使用している検査プロトコールを示し、特定看護師が医師の問診前に実施している予診外来を紹介。同プロトコールを活用して、糖尿病の患者さんの発熱の原因を予測・検査し、適切な診療科につないだ例を解説しました。



業務の整理・整頓やDXの活用で看護師のタスクシフトを推進する
また、青柳先生は、看護師が学び、トレーニングする時間を確保するためにも、看護師のタスクシフトを進めるべきだと訴えました。すべての業務を見直すと、療養上の世話には当たらず、本来看護師が行わなくてもよい業務が明らかになってくるといいます。そのうえで、業務の整理・整頓(業務量を減らし、誰がどのように行うかを整える)を行い、看護補助者だけでなく、臨床検査技師や薬剤師などの他職種の協力を仰ぐことが必要だとしています。
さらに、近年医療分野への導入も検討されているDX *4については、身近なものとして、HN LINE?(医療機器データ通信サポートシステム/ニプロ株式会社)などの通信システムを活用して、タスクシフトと看護業務の効率化を図ることを提案。電子カルテ等とのデータ連携やNEWS(急性期疾患の予後予測スコア)の自動評価など、青柳先生がシステムを実際に活用した体験から、その有用性を示しました。
最後に、青柳先生は「看護師には、患者さんの訴え(要件)を聞き、その陰にある本当のニーズ(要求)をアセスメントし、解決することが重要。そこに看護師の専門性があります。バイタルサインの測定は看護補助者が、記録は医療機器が、アセスメント・評価は看護師がというように、タスクシフトを進めてほしい。時代は過渡期を迎えています。看護師には、指示に基づきながらも自らの裁量で患者さんと対峙する覚悟をもってほしいと思います」と結びました。
青柳先生の話を受け、座長を務めた元日本看護協会会長で国際医療福祉大学大学院副大学院長の福井トシ子先生は、「これからの看護業務の在り方について多くの投げかけがありました。なかでも患者さんの観察の在り方について一石を投じていただいたと思います。看護職が学び続けなければならない根拠も示していただきました。本日の学びも土台にして看護の未来を創って参りましょう」と述べました。
*脚注
*1 水戸済生会総合病院では「特定行為に係る看護師の研修制度」による特定行為研修を修了し、手順書により特定行為を実践している看護師を「特定看護師」と称している。
*2 医師の働き方改革のもとタスクシフト/シェアが進められるなか、看護師がさらなる専門性を発揮し、人々により安全でタイムリーな医療を提供するための基本的な考え方を示したもの。
*3 事前に予測可能な範囲で対応の手順をまとめたもの。診療の補助においては、医師の指示となる。手順書(特定行為を修了した看護師が使用)、クリニカルパス、それ以外の包括的指示がある。
*4 「digital transformation」の略。デジタル技術によりビジネスや社会、生活の形・スタイルを変えること。

2022年6月に刊行した『看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド』。日本看護協会ホームページからダウンロードできる
日本看護協会『看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド』
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2023年10月号 TiaraNo.145より転載しています。
