
第54回日本看護学会学術集会において、ランチョンセミナー「バイタルサインは『測定』から『評価』の時代へ─プロトコール整備で看護師の役割がより重要に─」(2023年9月29日 大阪府大阪市・大阪国際会議場)が行われました。講師に青柳智和先生を迎え、看護師は何に目を向け、自らの役割をどのように捉えればいいのか、その在り方を提案しました。プロトコール*1の活用とタスク・シフト/シェアによって、看護師が誇りをもって働いていくためのポイントをご紹介します。
*1 事前に予測可能な範囲で対応の手順をまとめたもの。診療の補助においては、医師の指示となる。手順書(特定行為研修を修了した看護師が使用)、クリニカルパス、それ以外の包括的指示がある。

![[座長]大阪大学医学部附属病院副病院長・看護部長 岩崎朋之先生](https://images.microcms-assets.io/assets/eb0d1a2254c045f4b87e572f39f0244f/d6dce5039e274461b21032a901d15c5a/iwasaki-e2cf9b189122.png)
![[講師]水戸済生会総合病院看護師特定行為研修室長 株式会社ラプタープロジェクト代表取締役 青柳智和先生](https://images.microcms-assets.io/assets/eb0d1a2254c045f4b87e572f39f0244f/256c9f0c8be64bf18386722141fe6869/aoyagi-f6668d8d459b.png)
「診療の補助」は「診断と治療の補助」臨床推論により看護師ができること
「看護師に必要なものは『誇り』『追究』『信頼』。これらを究めることで、看護師は社会的により高みに上れるのではないかと思います。そのためにも私たちは、仕事に誇りをもち続けられるよう、自らの能力を引き上げ、最大限に発揮できる道を考えていかなければなりません」
講演の冒頭、講師である青柳智和先生(水戸済生会総合病院看護師特定行為研修室長)はこのように述べました。そのうえで、看護師の仕事は「診療の補助」と「療養上の世話」であることをあらためて確認。患者さんの発熱を例に話を進めました。「患者さんは発熱による汗を拭いてもらえたら嬉しいと思うでしょう。これはいわゆる療養上の世話です。その一方で、どうして発熱しているかを知りたいという要望ももっています。もちろん原因を診断するのは医師ですが、その診断にいち早く結びつけるため、看護師はできることをすべき。それが診療の補助のなかにあります」と青柳先生。このケースでは、医師による予測指示(包括的指示)として、クーリングや解熱鎮痛薬投与、場合によっては血液培養の手配などが考えられますが、青柳先生は、看護師にはさらに発熱の原因を追及してほしいといいます。
「臨床推論により、どのような疾患の可能性があり、それを示す所見がみられるかという視点から看護師が情報を提供できれば、医師はより早く診断・治療を行うことができる。診断と治療、すなわち診療を補助する看護師の仕事を果たすことができるわけです。患者さんの目的は疾患を治すこと。それは、医師も看護師も同じです。そう考えれば、私たち看護師が何をすればよいのかがみえてくると思います」(青柳先生)


プロトコールの活用には看護師への高度な教育が必要
ただし、「そのためにはプロトコールの整備が必要」と青柳先生は話します。水戸済生会総合病院では検査プロトコールを作成、月1回程度のペースで見直し・改定が図られているといいます。これに基づいて看護師が検査を行うことが認められています。
「このプロトコールは特定行為研修を修了した看護師に限ったものですが、発熱、意識レベル低下、呼吸状態の悪化など特定の状態を確認したときに、採血やX線造影など必要な検査を看護師の判断で行うことができるようにしています」(青柳先生)
日本看護協会による「看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド*2(以下、ガイドライン)」でも、事前に取り決めたプロトコールに基づき、看護師が薬剤の投与、採血・検査を実施することを可能としています。また、そこには条件があり、検査も含めた包括的指示を活用するには「大学院において高度な看護実践についての教育を修了している等の看護師が行う」としています。青柳先生もプロトコールの活用には知識・技術の習得とトレーニングが必要であるとし、一方で、特定行為研修もそこに含まれるのではないかという見解を示しました。
「患者さんに異常があった場合、看護師がプロトコールあるいは特定行為の手順書を活用し、即座に対応できるというのは大きな力です。それは医療を変えていく力にもなると思います」(青柳先生)
*2 医師の働き方改革のもとタスクシフト/シェアが進められるなか、看護師がさらなる専門性を発揮し、人々により安全でタイムリーな医療を提供するための基本的な考え方を示したもの。


タスク・シフト/シェアを進め看護師の今後の役割に目を向けよう
さらに青柳先生は、プロトコール等の活用により、看護師がより踏み込んだ動きをするには、タスク・シフト/シェアを進めることも必要だと訴えました。医師の仕事を引き受けるだけでなく、看護師でなくてもよい仕事を手渡すこともタスク・シフト/シェア。青柳先生は「看護師はバイタルサイン測定が必要かどうかはアセスメントしますが、電子体温計・自動血圧計による体温・血圧測定、パルスオキシメータの装着はほかの職種にお願いするなど、業務を見直して整理・整頓していくことが大切」と述べ、ITやDX*3の使用も検討すべきだとしました。
そして、看護業務の効率化を図るため、具体例としてHN LINE?(医療機器データ通信サポートシステム/ニプロ株式会社)の自動評価などの機能を取り上げ、なかでもNEWS*4はそのリスクが数値で表示されるため対応の基準にしやすく、急変時対応などのプロトコールに採用できるのではないかとしました。
青柳先生は最後に「特定行為もITの活用も、私たちが時代の分水嶺にいることを示している。21世紀を生きる看護師として、自らに誇りをもち、患者さんのための追究を欠かさず、他職種と信頼し合いながら、自分たちに何が期待されているか覚悟をもって見極めてほしいと思います。私たちにしかできない仕事を創造していきましょう」と呼びかけました。
座長を務めた大阪大学医学部附属病院副病院長で看護部長の岩崎朋之先生は、「看護師が診療の補助というところをいかに深め、役割を拡大していくのかということを考える好機になりました。医師の労働時間規制を2024年に控える今、皆さんは本日の話を参考にして明日からの改革に向かっていただければと思います」と述べました。
*3 「digital transformation」の略。デジタル技術によりビジネスや社会、生活の形・スタイルを変えること。
*4 急性期疾患の予後予測スコア

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2024年6月号 TiaraNo.149より転載しています。
