
北海道道央圏で札幌市に次ぐ人口規模の江別市。市内には63の医療機関がありますが(2024年1月現在)、そのなかの6病院がネットワークを構築し、地域内での円滑な看護連携を図るための「医療機関等看護管理者ネットワーク連絡会議」をスタートさせました。事務局が置かれたのは江別保健所。それぞれに医療機能や診療科が異なる6つの病院と保健所が一体となりどのような看護連携を目指しているのか、その取り組みの様子をお伝えします。


連携による課題解決を目指し看護職の地域ネットワークが誕生
かねてより北海道主体で行ってきた地域看護連携推進事業に携わっていた保健師の佐藤法子さんは、2019年に北海道石狩振興局保健環境部保健行政室(北海道江別保健所。以下、江別保健所)に異動になったことから、江別市内の看護現場の実情について病院への聞き取りを行いました。そしてわかったのは、いずれの施設も人材の確保・育成に課題を抱えているということ。そして、これらは施設が連携して共有・対策することで改善できると感じました。
「異動した年の終わりにコロナ禍に突入し、大変な半面、市内の病院で看護職と活動をともにする機会が得られたのです。そして、懸命に働く看護職や彼らを束ねる看護管理者の姿に触れ、病院間の連携構築がみんなの助けになると思いました」(佐藤さん)
一方で、渓和会江別病院看護部長の市戸理恵さんも地域内での連携を模索していました。
「2021年に現職に就いたのですが、以前は札幌市内の病院で看護部長を務め、その際医療安全管理者による地域ネットワークの活動に参加していました。そこでいろいろと助けられた経験から、江別市にも病院間でつながれるネットワークがあるといいなと思ったのです。以来、会合や研修会など各病院の管理者が集まる機会にみなさんに声をかけ、ネットワーク構築の下地づくりを行っていました。そんなとき佐藤さんとの出会いがあり、思いが一緒であることがわかったのです」(市戸さん)
こうして誕生した「医療機関等看護管理者ネットワーク連絡会議」は、通称「こむぎの会」と名付けられました。江別市が石狩管内で有数の小麦の産地であったこと、小麦の花言葉である「希望」「繁栄」が会議の目指す未来にぴったりだったことがその由来です。メンバーは、江別市立病院、江別すずらん病院、友愛記念病院、江別谷藤病院、野幌病院、そして渓和会江別病院の6病院。看護部長を始め各病院3名程度の管理者が出席しています。事務局は江別保健所が担い、会議は2カ月に1回開催。第1回は2024年2月に開かれました。



看護職の負担軽減にもつながる看護サマリーの共通化へ
6病院は、医療機能や診療科によっておおよそ急性期、療養型、精神科に施設特性が分けられます。限られた地域内のことであり、互いの病院間で患者さんが転院することは少なくありません。その際に問題となっていたのが看護サマリーです。「病院ごとに、サマリーで情報提供する項目も違えば、記入方法も違う。例えば、急性期で問題にしていることと、療養で必要とする情報がずれている。受け入れ病院ではサマリーで伝えられた情報を自院に合わせて翻訳したり、問い合わせたりすることになります。共通のサマリーがあれば、そういった労力がなくなり看護職の負担は軽減します」と市戸さん。そこで会議では、共通のサマリー作成に向け、まずは用語の統一を図ることを決めました。
取材で訪れたのは第3回会議の当日。各病院が自院のサマリーの書式を持ち寄り、変更可能な項目や共通で使用できるスケールなどについて話し合いを進めていました。そして、便性状や認知、疼痛については共通のスケールが使用できそうなこと、食形態については管理栄養士等との調整が必要なことなどがポイントとして挙げられていました。
「施設特性が異なるので、共通スケールには直接必要のない項目も含まれるかもしれません。でも、それを知識として理解することは継続看護を行ううえで無駄ではないという意見も出ており、少しずつ共通サマリーの姿がみえてきました」(市戸さん)
また、佐藤さんが課題として捉えていた人材育成についても、市戸さんは会議のテーマにしたいと考えています。それは、新卒教育を合同で行うという案。例えば、急性期は看護技術、療養はスキンケア、精神科は認知症ケアなど、各病院がそれぞれの特性を生かして講義を分担することで、各病院の教育担当者が効率的に動けるだけでなく、新人看護師にとっては他施設を知る機会になり、さらに仲間づくりにもつながります。
「次の段階として、会議のメンバーと一緒に検討してみたい」と市戸さんは話します。



つながりを広げていくことで地域の看護職を支え育んでいきたい
この会議は地域内の病院同士の連携構築のために組織されたものですが、市戸さんはそれ以外の役割も果たすのではないかといいます。
「看護部長だけでなく、師長や主任など臨床現場の管理者にもメンバーとして参加してもらうことが、次世代の看護管理者の育成にも結びつくと思います。ただそうなると、私たちには目指してもらえる看護管理者像を示していく必要がある。気持ちを引き締めなければなりませんね(笑)」(市戸さん)
佐藤さんが期待するのは地域全体への広がり。「病院の垣根を越えて集まったこの会議でのつながりが、ゆくゆくは診療所や訪問看護ステーション、介護施設など地域を支える看護職まで広がったらいいなと思っています。実はそれを念頭に、会議の名称は『医療施設等』と『等』を入れました」と話します。
看護職がつながることで、さまざまな課題を解決し、それによってみんなで成長できるような地域のあり方を求めようとしている医療機関等看護管理者ネットワーク連絡会議「こむぎの会」。いまはまだ芽を出したばかりかもしれませんが、その思いは江別の地に根付き始めました。やがて地域の看護に豊かな実りをもたらしていく様子を思い浮かべることは難くありません。
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2024年12月号 TiaraNo.152より転載しています。
