
「特定行為に係る看護師の研修制度(特定行為研修)」が2015年にスタートして以来、研修を修了した看護師が臨床でさまざまな特定行為を実践するようになっています。末梢留置型中心静脈注射用カテーテル(PICC)の挿入もその1つ。近年ではエコー(超音波画像診断装置)を用いた挿入が増えていることから、エコーガイド下で確実な穿刺を行うためのセミナー「第1回エコー・PICCセミナー」(2024年9月21日/ニプロ株式会社神戸支店)が実施されました。

PICC(peripherally inserted central venous catheter)とは、末梢留置型中心静脈注射用カテーテルのことで、肘または上腕の静脈を穿刺して上大静脈内に先端を留置させる中心静脈カテーテルです。挿入時の重篤な合併症リスクが鎖骨下穿刺よりも低いとされ1)、中心静脈栄養や刺激性薬剤投与、末梢静脈路の確保が困難なケースなどで実施されます。
PICCの挿入は「特定行為に係る看護師の研修制度」において特定行為の1つとされ、研修を修了した看護師が指示書のもと臨床で行えるようになりました。その際、より安全性を高めるために、エコーガイド下で挿入を行うことが増えています。
このような動きを受け、エコーガイド下でのPICC穿刺の確かな技術の習得を支援するため、ニプロ株式会社神戸支店が「第1回エコー・PICCセミナー」を開催しました。セミナーにはおよそ30名の看護師・医師・臨床工学技士が参加。特定行為研修を修了した2名の講師が講義と実技演習を行いました。
エコーを用いた末梢静脈穿刺のコツ <医療法人伯鳳会 赤穂中央病院 医療安全管理室 課長 勝平真司先生>

勝平真司先生は、?デバイス選択アルゴリズム、?エコーを使うメリット、?エコーを用いた末梢静脈穿刺のコツという内容で講義を進めました。
まずは、日本VADコンソーシアム*によるアルゴリズムをもとに、どのような場合にPICCを選択するかを解説。「侵襲性の低い薬剤で投与期間が1週間以上の場合」「侵襲性の高い薬剤で投与期間が3カ月未満の場合」に主にPICCが選択されるといいます。そのうえで、「留置する血管、穿刺部位を決めるとき」「穿刺針を刺入するとき」「先端位置を確認・調整するとき」にエコーを使用するとよいとしました。
続いてエコーを使用するメリットを挙げるなか、勝平先生が強調したのは、患者さんとの信頼関係が構築できるということ。穿刺困難でつらい体験をしてきた患者さんに対し、エコーを使用してスムーズな穿刺を行ったことで喜ばれ、その後コミュニケーションが活発になった事例を紹介し、今後穿刺時のエコー使用が進むことを示唆しました。一方で、看護師がエコーの使用に慣れていない現実にも触れ、エコーについての知識の習得とトレーニングの必要性を説きました。
勝平先生は、エコーガイド下穿刺のコツとして、手技の訓練も含め準備は完璧に整える、エコーに慣れる、穿刺部位を視診、触診、エコーによりアセスメントするなどを示しました。特に注意点として、エコーを使用して穿刺を進める際には、針とプローブを同時に動かさず、針・プローブはミリ単位で操作することを挙げました。また、患者さんの負担や血管攣縮を考慮しうまくいかない場合は粘らず、止めることも選択肢の1つであると述べました。
* 静脈アクセスデバイス(Vascular Access Device:VAD)について、使用時の合併症等現状の問題を踏まえ、最適な輸液治療を議論、共有し、患者さんによりよい治療を提供することを目的に組織されたコンソーシアム(共同体)。各専門分野からの参加がある。
エコーを用いたPICC留置・管理の実際 <社会医療法人財団聖フランシスコ会 姫路聖マリア病院 感染管理室副室長/看護管理師長 今川嘉樹先生>

PICCの目的・適応・種類について確認した後、今川嘉樹先生は挿入肢および血管の選択の仕方について解説しました。挿入肢については、一般的に右側から入れるのが安全とされる1)ものの、患者さんの希望やベッドサイド環境などに応じて選択してよいと述べ、どちら側からでも適切な位置に留置することが大事としました。血管を選択する場合は、基本として尺側皮静脈が第一選択となりますが、患者さんによって状態が変わってきます。今川先生は「血管径の太い静脈」という視点から選択を行っており、これは合併症予防にもつながるといいます。
一方エコーの使用については、勝平先生同様慣れることが必要とし、シミュレーター等を用いて練習を繰り返した自身の体験を紹介しました。
また、穿刺から留置に至る間の実施のポイントとして駆血帯を外すタイミング、ガイドワイヤが進まないときに考えられる理由、カテーテル挿入時に生じる抵抗にも触れ、考え方や対処法について話しました。その際にはデバイスの変更を検討することがあるので、どのような種類があるかメーカーに確認しておくなどの備えが必要であるとしました。
今川先生は、静脈炎、カテーテル関連血流感染、血栓など、PICC留置後に発生する合併症やPICC抜去困難事例も解説し、ケアバンドルによる血流感染対策は必須と述べました。
最後に、穿刺した針がどのように進むかなどエコー画像(動画)によって示しながら、PICC挿入の実際について解説を行いました。






講師の先生から
勝平真司先生
これからは看護師によるエコーの使用が広がっていくのではないでしょうか。聴診器の代わりにエコーを持って患者さんのベッドサイドに行く看護師が増えるかもしれません。参加者のみなさんには、今回のセミナーで得た静脈穿刺時のエコーの使い方などを職場の仲間に広めてほしい。エコーは低侵襲であることが大きなメリット。患者さんの苦痛軽減のためにもどんどん使用していくべきだと思います。
今川喜樹先生
本セミナーで実際にエコーを手にして針先が画像上でどのように見えるかを自身で再確認できたことは、参加者のみなさんには貴重な機会ではなかったかと思います。実際に臨床でPICCを実施している人は多かったのですが、症例数は少ないようで、経験を重ねるにはまだまだ至らないようでした。今回のセミナーで得た知識、体験した感覚を持ち帰って次の実践に生かすことで症例数が増えていけばいいですね。
参考文献
1)高橋優人,?他:末梢挿入型中心静脈カテーテル先端位置・合併症の左右差比較.?日本耳鼻咽喉科学会会報 2021;124(2);122-127.
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2025年2月号 TiaraNo.153より転載しています。
