
看護師向けイベント「ナースフェス2025」(主催:株式会社エス・エム・エス)においてDXセミナー「アセスメント力向上セミナー 心電図編〜VPCから考える報告のコツ〜」(2025年5月17日 東京都渋谷区・渋谷ヒカリエ/共催:ニプロ株式会社)が行われました。受講者は、年齢、性別、看護歴などが異なる看護師たち。講師の青柳智和先生が、アセスメント力を軸にこれからの看護師に求められるものについて話しました。その内容をリポートします。

![[座長]若本恵子先生<虎の門病院 副院長兼看護部長>](https://images.microcms-assets.io/assets/eb0d1a2254c045f4b87e572f39f0244f/3af6f4d5987b47e3a0719b51dfd8b990/wakamoto-7707cd58db79.png)
![[講師]青柳智和先生<株式会社ラプタープロジェクト代表取締役 水戸済生会総合病院 特定行為研修責任者>](https://images.microcms-assets.io/assets/eb0d1a2254c045f4b87e572f39f0244f/6d9297bb6085491f80f58d3cbbde5d4c/aoyagi-b44878f6d9a6.png)
心室性期外収縮(VPC)の波形から看護師が読み取るべきもの
講演は座長を務めた若本恵子先生(虎の門病院副院長兼看護部長)の挨拶でスタート。講師の青柳智和先生(株式会社ラプタープロジェクト代表取締役/水戸済生会総合病院特定行為研修責任者)は、まず演壇のスクリーンに心電図の波形を映し出し、会場に向けて「この波形は何ですか」と問いかけました。受講者たちはスマートフォンでアンケートに回答。結果はリアルタイムで集計され、77%が「心室性期外収縮(VPC)」と回答しました。
「この波形はVPCという異常が起きていることを示しています。まずこれを読み取れるのは必要なこと。患者さんに今何が起こっているのかがわかります。ただ、そこから先どのようにアセスメントを組み立ていくかが看護師には重要。VPCが生じた理由やその先の可能性について、アセスメント、つまり評価するということです」と青柳先生。そのためには「要求」と「要件」の違いを意識してほしいといいます。「例えば、必要に迫られて身体抑制が行われている患者さんから『外せ』(要件)と言われた場合、なぜ外してほしいのかを問いかけたら『背中がかゆい(のでかいてほしい)』(要求)ということがわかるかもしれない。この場合、要件は医師の判断が必要な内容なので、すぐに満たすのは難しい。しかし、要求であれば看護師の対応で満たせます。そうすれば患者さんが抱える問題は解消されます」と話し、目の前の事象だけでなく、その向こう側を類推する姿勢が看護師には求められるとしました。
VPCが起こったとき、何をアセスメントして、どのように医師へ報告するか、青柳先生はSBAR*1に基づいてみていきました。このなかで独自に考案したC3-R2法も紹介。C3-R2法とは、SBARを活用する際に、3つのカテゴリ(現病歴、バイタル、身体所見)と2つの提案(来て欲しいか、初動)をあてはめることで、医師の診断に役立つ情報を提供できるようにしていくものです。
「VPCの原因の予測につながる情報を伝え、採血などのオーダーを促します」(青柳先生)
*1 迅速にもれなく的確な情報伝達を行うための手法。網羅する情報「S:situation(状況)」「B:background(背景)」「A:assessment(アセスメント)」「R:recommendation(提案)」の頭文字を取って称されている。


看護師の役割を見直すことが医療の質向上にもつながる
ここで青柳先生は、プロトコールが整備されていれば、医師への情報提供の時点で看護師が採血データを示し、診断を早めることができるとしました。日本看護協会による「看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド*2」では、「大学院において高度な看護実践についての教育を修了している等の看護師が行う」という条件付きで、事前に取り決めたプロトコールに基づいて、看護師が薬剤の投与、採血・検査を実施することを可能としています。「特定行為研修もその教育に含まれると考えられ、水戸済生会総合病院では特定行為研修を修了した看護師が検査プロトコールにより採血を実施しています」と青柳先生。さらに「採血やX線検査、尿検査など少し時間を要する検査を看護師が行えるようになれば、診断は早まり、医療の質が向上すると思います」と述べ、そのためにはタスク・シフト/シェアを進めることも必要だと訴えました。
タスク・シフト/シェアには業務の見直しと整理が求められます。例えば、電子体温計・自動血圧計による体温・血圧測定、パルスオキシメーターの装着はほかの職種が行い、看護師はバイタルサイン測定の必要性やデータをアセスメントするなどの業務の整理を行います。青柳先生は、この場合ITやDX*3も選択肢の1つだといいます。
そして、看護業務の効率化を図るための例としてHN LINE?(医療機器データ通信サポートシステム/ニプロ株式会社)を挙げ、その仕組みを紹介。電子カルテ等とのデータ連携やNEWS(急性期疾患の予後予測スコア)の自動評価などの機能を取り上げ、なかでもNEWSはそのリスクが数値で表示されるため対応の基準にしやすいとしました。
特定行為がスタンダートとなるよう看護師の関心の高まりに期待
このように看護師に求められる役割が変化していることを受け、青柳先生は講義の最後に受講者に向け、特定行為への関心についてアンケートを行いました。特定行為の仕組みについて意見を求められた若本先生は、自身が入職した頃とは医療現場の常識が大きく変化していると話しました。
「かつては、現場の臨機応変さを許容するような、いわゆる曖昧な部分が広かったように感じます。ですから、現在のように特定行為として制度化され、ガイドラインをもってスタンダードになっていくことは重要なことだと思っています」(若本先生)
特定行為研修修了者は1万名超*4を数えると青柳先生。「会場内にも今後研修を受けたいと考えている人がいました。看護師の役割が拡大する流れのなか、多くの看護師が特定行為に関心をもち、徐々にでも準備を始めることに期待しています」と述べました。
若本先生は「とても実践的な内容で、新たな視点もありました。明日からでも役立てていきたいものです」と講義を結びました。
*2 医師の働き方改革のもとタスクシフト/シェアが進められるなか、看護師がさらなる専門性を発揮し、人々により安全でタイムリーな医療を提供するための基本的な考え方を示したもの。
*3 保健・医療・介護を進める各段階において発生する情報やデータについて、業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化などを図ることで、国民自身による予防を促進し、良質な医療やケアを受けられるよう社会や生活の形を変えること。
*4 2025年3月時点で1万1840名(厚生労働省)。



本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2025年10月号 TiaraNo.157より転載しています。
