
2025年11月8〜9日に第20回医療の質・安全学会学術集会が開催されました(京都府京都市・京都市勧業館みやこめっせ)。
そのなかで行われた教育セミナー「経鼻栄養チューブのマネジメント〜ニプロの小冊子の取り扱い説明と安全対策〜」では、3名の講師がそれぞれの立場から講演。経鼻栄養チューブの管理・介入・確認についての発表がありました。その内容から安全を進めるためのポイントを確認しておきましょう。




ニプロの「経鼻カテーテルのマネジメント」冊子の特徴 富山福祉短期大学看護学科特任教授 山元惠子先生
今回のセミナーでは座長も務める山元惠子先生が、まずは演者としてセミナーのテーマとなっている冊子「経鼻カテーテルのマネジメント」に込めた思いについて述べました。山元先生は、喜田裕也先生とともに冊子の監修も務めています。
経鼻胃管(NGT)は誕生してから100年以上もの間広く活用されてきていますが、一方で事故は続いており、死亡事例も一定数あるといいます。
「この冊子では、問題を解決する、うまく運営するという意味をもつ『マネジメント』という言葉を安全な手技の普及を願って用いました。問題を解決するために、医療・看護・介護・産学の人々が力を集結し、より高い成果を目指す。そのためには、一人ひとりが正しい手技をスキルとして身につけ、安全に実施する。そうすることで死亡事故をなくし、治療のゴールをNGTの使用から脱した「経口摂取」に導くことができます」と山元先生は話します。
山元先生は、「多職種によるチームで活用できる」「新生児・小児・成人・高齢者の違いとリスクを考慮」「最新のエビデンスに基づく情報」など冊子の特徴を紹介しながら、NGT初回挿入留置時のX線撮影による位置確認についてより踏み込んだ解説がされていることも強調しました。そして会場の参加者に向け「死亡事故の発生を自分のものとして捉え、問題解決に貢献してほしい」と呼びかけました。
当院における重症患者に対する早期栄養介入とNGT活用の現状 竹田綜合病院栄養科科長 遠藤美織先生
重症患者さんについて「疾患に加え、治療、ICUの環境、身体的・精神的ストレスなどが重なり、栄養障害のリスクが非常に高い」「不適切な栄養管理は、栄養障害を助長し予後の悪化につながる」「早期経腸栄養は腸管機能の維持や感染症発生の抑制に有用」などの報告を紹介した遠藤美織先生。栄養管理は補助ではなく治療に値するとしました。
さらに「日本国内からも、管理栄養士をICUに配置し、早期経腸栄養開始率が約25%増加、28日死亡率が14%減少、ICU在室日数・在院日数が優位に改善したという報告*があり、2020年診療報酬改定では早期栄養介入管理加算が新設されています」と述べ、重症病態に対する栄養管理の潮流を示しました。
竹田綜合病院ではICU・HCU専任の管理栄養士6名が栄養介入を実施しています。休診日(金曜日夕方〜日曜日)における早期栄養介入の遅れが感じられたため、2023年からは365日体制の勤務に変更。その結果、48時間以内の管理栄養士介入率は高まり、適切なタイミングでNGTによる栄養介入ができるようになりました。遠藤先生は、管理栄養士による循環状態のモニタリング(1日3回)の重要性を述べるとともに、「より質の高い栄養管理を実現させるために、安全管理体制の確認も忘れてはなりません」と言葉を継ぎ、早期栄養介入の実現のために必要なポイントを挙げて講演を締めくくりました。
*矢野目英樹ほか:集中治療室等における重点的な栄養管理が在室日数及び在院日数に及ぼす影響:病院における後ろ向き前後比較研究から.日本健康・栄養システム学会誌.2019;19(2).12-18
確認法の進化:X線4点確認法による経鼻胃管(NGT)挿入後位置確認の課題と限界、検討課題を中心に 光生病院内科・人工透析部長 喜田裕也先生
重症病態をはじめとする多様な病態に対し、また状況の異なる医療・介護現場において経腸栄養管理が行われている現状のなか、喜田裕也先生は医療事故のリスクは依然として高いとしました。「NGTの誤挿入、さらに誤挿入に気づかないまま栄養剤を投与したことによる死亡例もあります。安全性を確保するためには、技術の習得とその支援体制が求められます」と話し、X線撮影による4点確認法の実施を提唱しました。
4点確認法とは、NGT挿入時のX線画像上で?カテーテルが食道に沿っているか/気管の影を避けているか、?カテーテルは気管分岐部や気管支と明確に分離できているか/左気管支とクロスしているか、?カテーテルは横隔膜ラインを正中でクロスしているか、?先端は左横隔膜の下に明確にみえるかという4点を確認し、NGTが正しい位置に挿入できているかを見極めるものです。
喜田先生は、X線画像を示して確認法を解説しました。そして、実際に医療者が誤読影した事例を検証し、注意点を示していきました。さらに「4点確認法を確実に行うためには読影に適した画像が不可欠。放射線技師とスムーズに連携できる環境づくりが必要です。一緒に学ぶことも大切だと思います」と述べました。
「4点確認法によるNGTの位置確認を行うことで、誤読影は確実に減ります。気道への栄養剤・薬剤の誤投与を避けることが可能です」と強調した喜田先生は、みんなで安全性を高めることの重要性を訴えました。
座長の山元先生は「NGTによる栄養管理の有効性を認識し、誤挿入・誤注入を防ぐために医師はしっかりと4点確認ができることが重要。それをチームで情報共有し、死亡事故をなくしていけるようみなさんに拡散していただければと思います」とセミナーを結びました。





「経鼻カテーテルのマネジメント」
監修:山元惠子(富山福祉短期大学特任教授)/喜田裕也(光生病院内科・人工透析部長)/佐藤英章(昭和医科大学医学部外科学講座小児外科部門准教授)
2025年11月作成
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2026年3月号 TiaraNo.159より転載しています。
