
2015年に看護師の特定行為研修制度(特定行為に係る看護師の研修制度)が創設されてから3年。看護師の新たな役割が注目されてきています。HOSPEX Japan 2018看護セミナー「世界に追い付け! 特定看護師?チーム医療の真のメンバーとなるために?」(主催:日本能率協会、共催:東京都看護協会、企画協力:ニプロ株式会社)での青柳智和さんの講演から、これからの看護師に求められるものを探ります。

講師:青柳智和さん
プロフィール:水戸済生会総合病院 看護師特定行為研修事務局長
株式会社ラプタープロジェクト代表
水戸済生会総合病院や近森会近森病院などでICU、ER、手術室、一般病棟、RRT(ラピッド・レスポンス・チーム)、PICC(末梢挿入式中心静脈カテーテル)チーム、看護師特定行為研修の創設を経験。2006年から臨床で必要とされる基礎看護教育のセミナー「出直し看護塾」を全国で展開
これからの医療に必要とされるチームプレー
病院に来る患者さんの目的は「診断と治療(診療)」です。これは基本的に医師が行うものですが、日常の医師の業務はそれだけではありません。「近年医師の過重労働が問題になっています。これは、医師を疲弊させるだけでなく、診療の質や量の面から患者さんに不利益を生み出すことにもつながっています。医療者にとって『患者さんのため』は最も大切となるキーワード。この状況を少しでも解消していくためには、医師が行わなくてもいい業務はほかの職種が担うといったチームプレーが必要だと思います」と青柳智和さんは話します。

チームプレーを行うためには、各職種が各メンバーの役割を明確に理解し、指示がなくてもそのときに自分ができることを実践できること、状況に応じてできる人ができることをやることが必要です。現在国が進めている働き方改革のなかで厚生労働省検討会が提言している「タスクシフト・タスクシェアリング」がこれです。
「医師でなくてもできることは看護師が、看護師でなくてもできることはほかの職種がというように、業務をシェアするわけですが、そのためにはチームの各職種が同じ方向に向かうことが重要です。また、シェアするためのルール作りも必要。各自がそのルールを理解し、目的を明確化させて進むことが条件となります」(青柳さん)

講演中の青柳さん
変わる医療の仕組みの一端を担う特定看護師
このような流れのなかで注目されているのが特定看護師。正確には特定行為に係る看護師の研修制度を修了した看護師のことです。医師の指示なしに手順書に沿って特定の診療補助を行います。
「米国など海外では、PA*1やNP*2が活躍しています。彼らが医療行為の一部を担うことで、医師は医師にしかできない高度な専門性を発揮することができています」(青柳さん)
特定看護師は、PAやNPと同義ではありませんが、医療チームにおいて力強い存在になり得るもの。患者さんにも有益をもたらします。例えば、看護師が医師から予測指示を受けたとします。看護師はそれに従って処置を行いますが、原因への対応はなされず、患者さんは苦しいまま医師の治療を待つことになります。もしこの段階で、看護師が的確なアセスメントを行い、何らかの対応を行うことができれば、患者さんの苦痛はいち早く解消されることになります。
「こういった事態を担うのが特定看護師。どうしても『行為』に注目したくなりますが、実はアセスメントがより重要となるのです。社会背景に伴う患者構成の変化や治療の高度化によって医療が複雑になっているいま、その仕組みが見直され始めています。特定看護師が当たり前になる時期が来るかもしれません。特定看護師はアセスメントに長けたジェネラリストだと私は思っています。看護師の皆さんは、臨床での多様な経験を重ねて、医療チームを支える力になってほしいですね」(青柳さん)

これからの看護師像を考えるとき、特定看護師は大きな意味をもってくるといえそうです。
*1 physician assistant。医師が行う医療行為の一部をカバーする医療資格者
*2 nurse practitioner。医師の指示を受けずに一定レベルの診断や治療を行う看護職
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2019年4月号 TiaraNo.121より転載しています。