
ニプロ株式会社では、2019年度新たに「IVナース指導者養成研修」をスタートさせました。静脈注射や静脈路確保、輸液管理を安全で確実に行える知識と技術を有することが認定された看護師「IVナース」を育成する指導者の養成を行うこの研修で、受講者は指導者として身につけておきたい多様なスキルを学びます。前号に引き続き、その研修の模様をご紹介します。

受講生は講師の政岡先生から修了証が手渡された
受講者が作成したシナリオを実践・検証する<6日目(最終日)>
2019年度の研修は、9?12月の土・日曜計6日間、医療研修施設 ニプロiMEP(滋賀県草津市)で行われ、9名の看護師のみなさんが受講。研修6日目で最終日となる2019年12月1日は、実習を中心に研修が行われました。講師は、前日に引き続き国立循環器病研究センターに勤務する教授システム学修士の政岡祐輝先生です。受講生の学びに働きかける6名のファシリテーターも参加しました。
この日のテーマは「IVナース院内指導プログラムの作成と実施」です。まずは、前日に学んだコーチングスキルやラーニングファシリテーションの知識を生かし、受講生があらかじめ選択しておいたテーマに基づいて研修プログラムを作成しました。
研修プログラムにはシナリオ基盤型シミュレーションを用いました。振り返りをしながら知識や技術を向上させるシミュレーションでは、自施設の状況に即したシナリオが重要になります。政岡先生がシナリオ作成のポイントを解説した後、受講者が各自でシナリオをまとめました。
午後からは、グループごとに、受講生が作成したシナリオによる指導実習を行いました。輸液ポンプのアラーム対応やアナフィラキシーショックへの対応といった設定のもと、同じ指導者が2回ずつシミュレーションを実施。場面の切り替えや切り上げ方なども含め、シナリオを確認していました。


受講生が各自作成したシナリオに基づいてシミュレーションを実施
9名の受講生が修了証を手にそれぞれに手応えを確認<修了式>
実習を終えた受講生は、グループごとに着席し、修了式となりました。政岡先生が、一人ひとりに修了証を手渡し、受講生を労いました。東京、青森、石川など遠方から参加した受講者もおり、eラーニングによる自己学習、業務や家庭生活の調整、研修ごとの予習・復習など、それぞれに大変さを感じたこともあったでしょう。修了証を手に感極まる人も。政岡先生やファシリテーターらに見送られて退室する受講生たちは、研修の手応えがうかがえる清々しい表情をしていました。
「IVナース指導者養成研修」は今後も実施していく予定です。本誌でも随時お知らせしていきますので、興味のある方は参考にしてください。

ファシリテーターの皆さんが受講生一人ひとりにアドバイス
自施設に合わせてプログラムが組み立てられる 「応用力」のある指導者の養成を目指す

セミナー監修者:道又元裕先生<国際医療福祉大学成田病院 看護部長>
2002年9月に厚生労働省が行政解釈を変更し、看護職による静脈注射が診療補助行為の範疇とされるようになりました。これを受けて、翌年に日本看護協会が「看護師等による静脈注射の実施に関する指針」を発出しましたが、看護職に対する教育や体制整備などは、主に各医療機関が行うものとなっています。
静脈注射の実施において重要となるのは、基本的な手技を確実に安全に提供することです。こういうと簡単なことのように思えてしまうかもしれませんが、患者さんは決して同じではありません。年齢や性別、疾患や病態、発達段階などに応じて、それぞれに適した対応が求められます。そのため、静脈注射の実施者には、科学的根拠や解剖生理、さらに法律などの理解が求められます。そして、誰もが同じ認識とプロセスのもと、同一の手技を実践できることが大切になります。つまり手技の標準化です。標準化されれば、看護職はより自信をもって手技が実践でき、安全面での不安も軽減されます。医療機関が変わっても、手技が変わることはありません。
今回の「IVナース指導者養成研修」では、優れた指導者を育成するだけでなく、受講者には静脈注射についての学習成果を各医療機関にもち帰り、それを施設内に定着させていただきたいと考えています。
研修の特徴としては、(1)研修前eラーニングの導入(基本的知識の確認と指導についてのイメージの構築)、(2)静脈注射についての多角的な知識・技術の提供(教育のコアとなる知識の獲得)、(3)シミュレーション教育についての研修の実施(各施設で研修をつくり上げる能力の取得)が挙げられます。この研修プログラムを経て、受講者が自らの思考力を養い、研修で得た内容を応用できるようにすることが、最終的な目標です。標準となり得る知識・技術をベースに、各施設の状況に応じた研修プログラムを構築できる「応用力」をもった指導者を養成することで、彼らが学んだ知識・技術を施設に根付かせ、それが標準化の一歩になるのではと考えています。
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2020年8月号 TiaraNo.128より転載しています。