
2022年度から看護基礎教育の新カリキュラムが実施され、臨地実習だけでは不足しがちな臨床経験を補う方法として、シミュレーション教育が注目されています。この流れを受け、シミュレーション教育のひとつの手法としてロールプレイの魅力に迫る「素敵な看護をプロデュース!ロールプレイで看護のこころに火をつけろ!」が医療研修施設ニプロiMEP(滋賀県草津市)で開催されました。教育上の日頃の悩みを解消し学びを深めた受講者の様子をリポートします。

看護基礎教育・現任教育の指導者がロールプレイの知識と実施を学ぶ
今回行われたセミナーは、カリキュラム第5次改正に伴い本格的に導入が進むシミュレーション教育のなかでも、卒前卒後の現場課題に着目し展開しやすい「ロールプレイ」を用い、その知識と実施方法を学ぼうというもの。主に看護基礎教育を担う看護教員や現任教育を担当する看護師などの指導者が対象です。講師は、?橋聖子先生(折尾愛真高等学校看護科看護専攻科教諭)と内藤知佐子先生(愛媛大学医学部附属病院総合臨床研修センター助教)。e-ラーニング「学研ナーシングサポート」による事前学習と、医療研修施設ニプロiMEPでの研修(2024年2月25日開催)を組み合わせたプログラムになっています。研修当日は、午前中は講義メイン、午後には動画作成を中心としたグループワーク(以下、GW)に取り組みました。午前中の講義はオンラインで配信され、オンラインコースに参加した受講者が一緒に学びました。
【午前/講義+GW】学習者に何を体験・学習してもらうか想定したロールプレイを目指そう
受講者は、e-ラーニングでの患者体験を振り返り、?橋先生と内藤先生による講義やディスカッションなどによって、ロールプレイの意義と臨床場面を教材化する秘訣を学びました。
内藤先生は講義のなかで「ロールプレイでは、学習者が各役割を演じることでその体験を味わい、主体的な気づきを得ることができます。そのために指導者は、学習者が役になりきれるような準備を行うことが大切」と話しました。そして、さまざまな教育の現場においてロールプレイの教材動画を作成することで、シナリオを組み立てると同時に演じる側も体験し、教材化に向けたより具体的な感覚を体得してもらうことが必要と述べました。さらに、指導者が学習者に対する発問と応答を効果的に実施するポイントを提示し、学習者が発言しやすい環境づくりを目指すことが重要と伝えました。
ロールプレイを授業で積極的に導入している?橋先生は、学習者が看護について自身に問いかけるような心の動きをもたらすロールプレイを目指すことが大切と話しました。そのためには「学習者に何を学ばせるか、どのように学ばせればよいかを検討することが必要。課題を認識・発見することで看護に前向きになれる、メッセージ性のあるテーマにして議論を深める、楽しみながら実感できるものがあるなど、いくつかのポイントを踏まえることで、ロールプレイがデザインしやすくなる」と述べました。






【午後/GW+発表】自らロールプレイを実践することで学習者としての心の動きを感じよう
受講者は5つのグループに分かれてワンカット3分以内の教材動画作成に臨み、?橋先生と内藤先生はラウンドしながら各グループの取り組みを見守りました。
まずは、対象と何を伝えたいのかを吟味して場面を選定し、シナリオを作成。短い動画であっても、登場人物とその行動にはストーリーに沿った設定が必要です。グループごとに熱心なやりとりが行われていました。シナリオが完成したら、いよいよ動画撮影がスタート。扮装を凝らして演じる人、全体を通して流れを確認する人、動画を撮影する人と、メンバー各自がそれぞれの役割を果たします。作成を進めるなかで、グループとしての連帯が強まっていく様子がうかがえました。
完成した動画は全員が「学習者目線」で視聴。テーマは「食事配膳時の患者さんへのかかわり(新人看護師対象)」「患者さんの立場に立った情報収集(看護学生対象)」「治療を拒否する患者さんへの対応(一般看護師対象)」「バイタルサイン測定時の新人看護師へのかかわり(看護師教育担当者対象)」「服薬をためらう患者さんへの対応(ベテラン看護師対象)」とさまざまです。上映後、学習者目線で視聴した受講者からは自ら得た気づきが発表され、作成したグループが動画のねらいや工夫などを解説。その様子からはロールプレイ活用の手応えが感じられました。
最後に今回のセミナーを通して感じたことを各受講者が発表して共有。ロールプレイ体験により、これまでの指導方法や自身の看護を顧みたという人が少なくありませんでした。指導する側も学習者体験をする機会をもつことが必要だということを確認し、この体験をもとに「素敵な看護を目指したい」という火が受講者のこころに灯ったようです。






研修を終えて〜講師の先生から

?橋聖子さん<折尾愛真高等学校 看護科看護専攻科教諭>
ロールプレイを学びながら、学習者だけでなく指導者も看護の魅力を再確認できる内容にしたいという思いから、あえてアクティブラーニングを主体にセミナーを企画しました。受講者の皆さんがロールプレイの実践と講師や受講者との対話で発見した自らの気づきや思いは、これからを変えていく力になると思います。自分を信じて今回感じたことを生かしてほしいですね。

内藤知佐子さん<愛媛大学医学部附属病院 総合臨床研修センター助教>
今回のセミナーでは、ロールプレイを作り上げることで「これならできそう」「こんなふうに使いたい」と受講者の皆さんに思ってもらい、その後の実践につながるものを持ち帰れるようにしたいと考えました。その結果、ロールプレイへの苦手意識を払拭できたという受講者もいて、私たちとしてはうれしい副次効果でした。指導者として新たな展開が始まることに期待しています。
*この研修はニプロ株式会社医療研修施設ニプロiMEPと株式会社学研メディカルサポートとのコラボレーション企画として開催されました。
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2024年8月号 TiaraNo.150より転載しています。
