
看護の質の向上に向けてさまざまな事業を行って東京都看護協会(東京都新宿区)が教育研修事業のひとつとして行っている「マナビバ」の第3回が開催されました(2024年9月7日・東京都看護協会会館)。今回のテーマは「目からウロコの看護セミナー」。若手から中堅まで幅広い年代の看護職たちが参加し、これからの看護に必要なものや自らの看護のあり方について考え、振り返る場としていました。同協会の取り組みと当日の内容をご紹介します。

東京都看護協会 柳橋礼子会長
幅広い看護職を対象に誰もが参加できる「マナビバ」
「マナビバ」は2022年度から行われている東京都看護協会主催のイベントです。「東京都看護協会100%活用」というコンセプトのもと、会員資格の有無にかかわらず、看護職同士、さらに看護職と協会が交流する機会として実施されています。当初は新人看護職に向けた交流の場として始まったものですが、現在ではより幅広い層を対象に、そのときに必要と思われるテーマを選択してさまざまな角度から企画がなされています。
実施は基本的に年に1回。第3回となる今回は、これまでの思い込みや古い習慣から抜け出し、看護技術や知識のアップデートを図ることを目的に、「バイタルサイン、フィジカルアセスメントで見抜く報告のベストタイミング─報告の『型』を身に着けよう─」と「明日から実践できるスキンケア─見て・触って・体験しよう─」という2題のセミナーが行われました。当日は約80名が参加。熱心に耳を傾ける様子が印象的でした。


「マナビバ」のテーマは多種多様目的に合わせた活用が可能
「これまでマナビバで行ってきたセミナーのテーマを振り返ってみると、モニタ管理、健康を保つ睡眠法、エンゼルケア、コミュニケーションスキル、学び続けるための学習法など、看護職の基本から日常の看護スキルを高めるものまで、その内容は多岐にわたっています。看護のニーズや時代の流れに応じて情報を発信し、より多くの看護職のみなさんに学びや交流の機会を提供したいと考えた結果です」
東京都看護協会会長の柳橋礼子さんはこのように話し、当日の参加者が病棟看護師だけでなく、外来看護師や訪問看護師、離職者などにも及んでいることから、「いろいろな目的をもって利用してもらえるところがマナビバのよいところではないか」といいます。
タスクシフトの流れのなか、看護職に判断が求められる場面が増えてくることが予測されます。柳橋さんは「特に夜勤時や療養型施設ではそういった場面は少なくないでしょう。過去の経験と大まかな知識でなんとなく業務を行っていては成長が期待できません。とはいえ、全てにおいてスキルを高めるのはなかなか難しい。ですから、まずは自分の得意なスキルを伸ばしていくことを考えてもらえたらと思います。マナビバでは、看護職が自分の強みをつくるためにやれることを発信していけたらいいなと思 っています」と話します。
医療DXの推進が叫ばれる今、看護の分野でもIoTやAIなどを使いこなせるスキルが必要になってくると思われます。
「それらのツールを活用することで、看護職が自分自身で考えなくなるのではと危惧する向きもありますが、マンパワーを補い、質や安全を確保するには必要なアイテムであることは事実。だからこそ、システムをきちんと理解して活用しながら、『これは変だぞ』『こうしたほうがいいぞ』など気づける知識と技術──看護の本質の部分の能力を高めていくことが重要になると思います」(柳橋さん)
今後は管理職向けにDX関連のテーマでマナビバが行えたらという柳橋さん。マナビバは来年度以降も継続予定なのでチェックしていきたいものです。



セミナーリポート|バイタルサイン、フィジカルアセスメントで見抜く報告のベストタイミング─報告の「型」を身に着けよう─

「診療=診断と治療」を補助するために報告に必要な看護師のスキル
セミナーのタイトルに掲げた「報告のベストタイミング」について、青柳智和先生(水戸済生会総合病院看護師特定行為研修室長)は「検査あるいは治療が必要なときがそのタイミングである」と述べました。医師の役割は診断と治療であり、看護師の役割は療養上の世話と医師の診療の補助です。青柳先生は、看護師には「診療=診断と治療」を補助することが求められ、報告はそれにあたるとしました。
そのうえで、報告のタイミングを見抜くためのポイントとなる「感度」「特異度」「尤度比」について解説。感度は「その所見がなければその疾患ではないといえること(除外診断)」、特異度は「その所見があればその疾患であるといえること(確定診断)」、尤度比は「その疾患らしさ(感度と特異度の比)」を示すとし、大動脈解離とインフルエンザのそれぞれの場合にあてはめて説明を行いました。青柳先生は「これらの概念を臨床で生かすことにより、どんな疾患であるかが予測しやすくなる」と話しました。
一方で、患者さんの症状・状態をみて「何か変だな」と思ったとき、それがどのような病気であるかを類推できることも重要になると青柳先生。特に、感染する疾患と死に至る疾患(状態)を見逃さないという視点をもつことが肝心だと話します。それには、緊急性(急ぐ必要がある)、重症度(重症化する)、有病率(あり得る病気)、治療可能性(治せる病気)から見極めを行うことが必要になることから、肺血栓塞栓症を発症した男性の事例に沿ってどのように考えればよいかを確認しました。
特定行為研修を修了することで新たな時代を生きる看護師に近づく
さらに、報告内容を探る過程で検査データが必要になった場合、青柳先生はプロトコールがあれば看護師も検査を行うことができるとしました。日本看護協会による「看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド」*では、事前に取り決めたプロトコールに基づき、看護師が薬剤の投与、採血・検査を実施することを可能としています。それを行うには「大学院において高度な看護実践についての教育を修了している等の看護師が行う」という条件がありますが、青柳先生は特定行為研修もそこに含まれるのではないかという見解を示しました。
青柳先生は「特定行為研修を修了することで、プロトコールのもと採血および検査の実施判断ができるようになることは、ベストなタイミングで必要な報告ができる看護師になれるということ」とし、「タスクシフトなどにより環境が変化するなか、看護師には新たな時代を生きる覚悟をもってほしい」と述べました。
* 医師の働き方改革のもとタスクシフト/シェアが進められるなか、看護師がさらなる専門性を発揮し、人々により安全でタイムリーな医療を提供するための基本的な考え方を示したもの。

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2024年12月号 TiaraNo.152より転載しています。
