
お笑い芸人から放送作家に転身しテレビやラジオ、CMの企画・構成などを手掛ける一方で、笑いとコミュニケーションを柱に企業や医療機関、教育機関などでの講演・研修を精力的に行っているWマコト*。コミュニケーションが医療安全にもチーム医療にも欠かせないものなっている現在、医療従事者に何を伝えようとしているのか、その思いを聞きました。当日済衆館病院(愛知県北名古屋市)で行われた医療安全講習会の様子とあわせてお伝えします。
* 吉本総合芸能学院NSC出身で漫才活動やMC活動などを経て放送作家に。ほかにも、イベントやライブのMC、ラジオパーソナリティなどを務める。これまでの研修・講演の数は1,500回以上。CLASSIX株式会社代表取締役。

ある看護関係者との出会いからその活動は医療・看護分野へ
「お笑いの世界で繰り広げられる芸のなかには、とても質の高いコミュニケーションがあります。笑いの現場を3,000回以上体験してきたからこそ分析することができたそのコミュニケーションの法則を、さまざまな分野の方々に知ってもらい、何らかのかたちで役立ててほしいという思いが、研修や講演の活動につながりました」
ツッコミ担当の中山真さんとボケ担当の中原誠さんによるWマコトの2人はこう話します。当初は企業や学校を対象に行っていた活動が医療分野へと広がったきっかけは、ある看護関係者との出会いでした。新聞記事のなかでその人が話していた「医療・看護分野においても笑いとコミュニケーションは大切」という言葉を目にして、医療従事者の活動にも貢献できるのではないかと考えたといいます。

「その方と直接お会いして私たちの思いと活動内容を伝えたところ意気投合。特別にお願いして看護体験をさせていただき、医療・看護業務で求められるコミュニケーションとは何かを体感することができました。さらに医療安全や業務連携などについても学び、私たちが考えたコミュニケーションの法則を医療・看護分野ではどのように生かしてもらえるのか、根拠をもってお伝えできるようになっていきました」(中山さん)


研修を通して2人が医療従事者に伝えたいこと
現在では多くの医療機関や学会などでも研修・講演を行うなか、 Wマコトは医療従事者に向けて何を伝えたいと考えているのでしょう。中山さんは次のように話します。
「笑いは場の雰囲気をよくし、心地よいと感じられる空間にしてくれます。そんななかにいると人はコンディションが高まり、他者の立場を思いやったり共感し合ったりしてコミュニケーションを図り、よりよい関係性がつくりあげられるようになる。患者さん、同僚、他職種など常に多くの人とかかわる医療従事者の方々が、場面場面で笑顔のあるコミュニケーションを行うことで、困難を乗り越えたり、ステップアップしたりすることにつながり、それがより充実した環境を生み出していくことを伝えたいですね」
「何よりもみなさんに元気になってほしい」というのは中原さん。自分たちの研修により、引きこもりの子が自己表現できるようになったり、いじめっ子といじめられっ子が仲良くなった例などを紹介。「自分たち自身も笑いのパワーに助けられてきました。笑いには何かを打開する力がある。仲間づくりにもつながる。それを医療現場のみなさんにも感じてほしいと思います」と言葉をつなぎました。
Wマコトの思いは、笑いにあふれた同日の講習会のなかで受講者のみなさんに伝わったようです。


【研修会リポート】医療法人済衆館 済衆館病院「医療安全講習会」(2024年11月15日開催)
済衆館病院の「医療安全講習会」は2024年11月15日に行われました。受講した職員はおよそ150名。メイン会場にサブ会場を加えたサテライト方式で行われました。当日業務等で出席できなかった人は、オンデマンド配信で講義を視聴します。
同院副院長で脳神経外科部長の飯塚宏さんの紹介で登壇したWマコトの2人は、早速会場に向かって自分たちの仕事である放送作家のイメージについて問いかけました。 2人の明るい笑顔での声かけから会場との掛け合いがスタート。そこには、まさに笑顔とコミュニケーションの実践がありました。
笑いがコミュニケーションをどのように変えていくのか
講義は、テレビなどで活躍するお笑い芸人の話には質の高いコミュニケーション術が存在すること、それがさまざまな分野でも生かせるものであることについての話から始まりました。そして、医療現場で求められる笑いは、幸せやうれしさなどを感じて脳内が心地よい状態になったときの笑い(笑顔)であると話しました。さらに、医療現場ではこの笑いに裏打ちされたコミュニケーション──人を喜ばせる、人を輝かせるコミュニケーションが必要であり、安心・安全につながるとして講義が進められました。
Wマコトは、自ら分析した笑いとコミュニケーションについてのデータをベースに、テレビや舞台で活躍する芸人を例に挙げてクイズを出題し、その答えを会場に問いかけます。それらの質問から「生産性」「共感」「自己開示」「感謝」「失敗」「客観視力」などがポイントとして浮き彫りになり、笑いがコミュニケーションをどのように変え、それがどのような影響をもたらしていくのかが明らかになっていきます。その間も、2人と受講者の掛け合いは続き、会場内は明るい雰囲気に包まれていました。
どのような笑いが求められるかを考え笑顔のあるアプローチを
2人は最後に笑いの5原則を提示しました。「安心・安全」「共感」「承認」「楽しさ(緩和)」「善」が目の前の人を笑顔にするための5つの要素。お笑い芸人も用いているといいます。
「人間は年齢を重ねるごとに笑う回数が減るといわれており、1つの例として、子どもは1日平均300回程度笑うのに対し、70歳代では2回になるという報告もあるようです。また、笑顔は極度の緊張やストレスを緩和するために生まれたという説もあります。複雑化、細分化された現代社会で厳しい現場を担う医療従事者のみなさんには、笑顔を重ねることが自分とチームを守るということを意識して、笑顔を生むアプローチを心がけてほしいと思います」という中原さんの言葉で講義は終了しました。


講習会を終えて

飯塚副院長からの紹介でWマコトさんのことを知り、YouTubeなども拝見して、職員にぜひ生で受講してもらいたいという思いから研修を企画しました。この試みは正解でしたね。会場にいた全員がいつの間にか巻き込まれていました。
研修を通し、日常的に職員間のコミュニケーションがうまく取れていないこともあるのではないかと感じました。この研修をきっかけに声がかけやすくなり、新たな関係づくりに結びつくことに期待しています。
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2025年6月号 TiaraNo.155より転載しています。
