
2024年4月にスタートした「医師の働き方改革」ですが、その施行に先駆けて動き始めたのが「タスクシフト/シェア」です。2019年から厚生労働省による検討会が組織され、2022年には日本看護協会がガイドライン*1を作成するなど、タスクシフト/シェアに関する取り組みが活発化。施行後もその流れは続いています。医療機関ではどのように取り組まれているのか、浜松医療センターの実際をみていきましょう。
*1 「看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド」。医師の働き方改革のもとタスクシフト/シェアが進められるなか、看護師がさらなる専門性を発揮し、人々により安全でタイムリーな医療を提供するための基本的な考え方を示したもの。
「医師の働き方改革」は「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」に基づいて行われたものです。これにより、2024年4月から医師の時間外労働に対する上限規制の適用が始まっていますが、同法では併せて「各医療関係職種の専門性の活用」「地域の実情に応じた医療提供体制の確保」が示されました。タスクシフト/シェアは前者のなかでその推進が謳われています。これにより、診療放射線技師法、臨床検査技師等に関する法律、臨床工学技士法、救急救命士法が改正され、2021年10月から各職種の業務範囲が拡大されました。タスクシフト/シェアは医師の働き方改革の実現には欠かせないピースの1つとなっています。
診療放射線技師による静脈穿刺に向けて浜松医療センターの研修とは
このような背景でスタートしたタスクシフト/シェアは、それぞれの医療機関が自施設の状況に応じて進めています。そのため、時期や方法などにはさまざまなかたちがあるようです。浜松医療センターでは、診療放射線技師(以下、放射線技師)へのタスクシフト/シェアに取り組んでいます。法改正による業務拡大を受けて、造影剤を使用した検査やRI(核医学)検査における静脈路を確保するための穿刺および抜針の業務を放射線技師が行えるよう2024年6月から研修をスタートさせました。放射線技師に対しては診療放射線技師会による告示研修が義務付けられており、それを補うかたちで行うものです。
その講師を務めているのが同センター看護部副看護長の平野麻友美さんです。
「研修では、まず静脈穿刺の際に理解しておくべき知識等についての講義を行い、それを踏まえ模擬血管を使用しての実技トレーニングに進んでもらうようにしました。プログラムやトレーニング方法は基本的に看護部新人教育のものを活用しています」
平野さんは、看護部新人研修や院内研修の企画・運営に携わっておよそ4年。自部署(ICU)での教育にも携わっており、OJTで行われているIV (静脈注射)研修の指導も担っています。
現在同センター内で研修を受けている放射線技師は6名。2024年7〜9月で2回、各2日間の実技トレーニングを行いました。「お互いの業務の都合でタイミングがうまく合わなくなってしまったので、その後は外来看護師2名にも協力してもらい2024年内に実技トレーニングを修了しました」と平野さん。現在は医師のもとで実際の穿刺を行っている放射線技師もいるといいます。
「手順は理解していても、駆血帯の巻き方や消毒の仕方など、実際にやってみなければわからない『実践のコツ』があります。技師の人たちにはそれらも身につけてもらえるように丁寧に指導していきました」(平野さん)




院内研修の見直しにつながったタスクシフト/シェアへのかかわり
今回のタスクシフト/シェアに際し、平野さんは事前に外部研修を受講しました。
「IVナースを指導する人材を育成する『IVナース指導者研修*2』です。当センターでは現在IVナースの認定制度は実施していません。新人教育に際しても IVについてはOJTによる研修が主となるため、現場でより確かな指導ができるスタッフを育成していく必要があると感じていました。タスクシフト/シェアの実施により看護師に指導が求められたのを機に、外部研修を活用することにしました。現在IVをはじめ医療安全の強化を進めていますので、研修受講はその一環としても役立つと考えました」
同センター副院長で看護部長の高橋円香さんはこのように話します。高橋さんは2024年に「教育」「医療安全」「働き方」という3本柱で看護部内に委員会を整備。前年から医療安全マニュアルやIV看護手順の改訂等にも取り組んでいます。
教育担当参事の松岡陽子さんもまた「新人看護師も、放射線技師の人たちも、プログラムを修了したからそれでOKではないと思っています。その後も現場で適切な指導を繰り返し受けられることが大切。そのためにも各部署に多くの指導者を育成していくことを目指したいですね」と話します。
放射線技師へのタスクシフト/シェアと前後して部署によっては研修医による採血も進んでおり、ほかの職種にも「自分たちもできることをやりたい」という意識がみられるようになっているそう。医師だけでなく看護師のタスクシフト/シェアにも目が向けられるようになっているようです。
平野さんは放射線技師に対する研修の前、浜松医科大学医学部附属病院との3カ月の人事交流を経験。人事交流での学びを自部署の体制づくりや教育に活かしています。「『教育』は『共育(共に育つ)』だなとつくづく思います。指導だけの一方通行ではなく、自分も学び成長させてもらっている。それを心に刻みました」と平野さん。
浜松医療センター看護部では、タスクシフト/シェアを通して教育面での見直しを図り、新たな一歩を踏み出そうとしていました。
*2 IVナース育成の指導に必要な知識やスキル、教え方スキル、院内指導設計までを網羅する研修。ニプロ株式会社が2019年度から実施している。








公益財団法人浜松市医療公社 浜松医療センター
静岡県浜松市中央区富塚町328
https://www.hmedc.or.jp
開設/1973年 病床数/606床
職員数/1348名 うち看護職員714名(2025年4月現在)

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2025年8月号 TiaraNo.156より転載しています。
