
「東京都看護協会100%活用」というコンセプトのもと2022年度から行われている「マナビバ 目からウロコの看護セミナー」。その第4回が2025年7月5日に行われました。毎回さまざまなテーマで行われるこのセミナーの背景には、東京都看護協会が今後の事業や教育研修の展開について検討するねらいもあるようです。
同会は何に目を向け、どのような取り組みを考えているのでしょう。研修プログラムの構築に求められるものを考えます。
「交流」を有効に活用して今後の研修のさまざまな可能性を探る
「マナビバ 目からウロコの看護セミナー(以下、マナビバ)」は、会員、非会員にかかわらず、看護職と東京都看護協会が交流する機会としてスタートしました。
「マナビバは当初新人看護職に向けたものでした。しかし現在では、より幅広い層を対象に、そのときに必要と思われるテーマで企画・実施しています」
こう話すのは同会会長の柳橋礼子さん。経験の浅い層に向けた看護の基礎知識、中堅看護職の学び直しにつながるもの、管理職の関心が高い医療DX関連など、これまでにマナビバでテーマとしてきた内容をみてもそれがわかります。なぜそのような方向にシフトチェンジしたのでしょう。
「マナビバのコンセプトである「交流」は、間口を広げたほうがもっと有効に生かせるのではないかと考えたのです。学びの場を提供するとともに、新人、中堅、管理職、そして病院、施設、地域社会など、多様な層やフィールドについて、看護職のニーズを探ったり情報を発信したりする場として活用できるのではないかと。場合によっては、本会の事業を検証することも可能で、結果は次年度につなげられます」(柳橋さん)
この言葉どおり、これまでに実施したテーマは同会が今後の展開も見据えて選択したもので、新たな研修プログラムとしての可能性を探っているといいます。
マナビバのテーマを企画する際には、同会が継続して行ってきた病院訪問で得た声が役立てられています。病院訪問とは、会長をはじめとする役員等が年間を通じて都内の病院を訪れ交流を図るもので、2024年度は146施設を訪問。そこで看護現場の課題や要望を直接くみ上げ、6地区支部や各委員会が得た情報とあわせて、マナビバや各事業企画のベースとして反映させています。






研修プログラムのなかで広がる交流の場東京都看護協会のねらいとは
同会ではマナビバ以外にも新たな交流の場を広げています。近年特に力を入れているのは管理者同士の交流。「病院経営の厳しさが増している状況のなか、管理者が孤軍奮闘しなければならない場面は少なくありません。そんな管理者同士が横のつながりを強化し、情報交換をしたり、悩みを共有したりすることは、各施設の運営にも有益であると考えました」と柳橋さん。ほかにも、男性看護職同士や看護教員と看護管理者の交流会、2025年度の事業で重点を置いている災害支援を念頭に災害拠点病院の看護管理者同士の交流会も実施しています。参加者には今後を考えていく力を得る機会として、同会には参加者の声に触れる機会として、これらの交流会は貴重なものになっているようです。
同会専務理事の野月千春さんは「交流の場では新しい出会いがあり、つながりが生まれます。本会と参加者、参加者同士がつながり、新たな知識や情報とつながれる機会にもなります。交流と同時に、より本会の取り組みを知ってもらえるような情報発信についても積極的に行いたいと思っています」と話します。実際の交流の場やウェブサイト、会報などで広報活動を行っている同会ですが、PRが不足していると感じる面もあるといいます。「若年層に向けた発信を増やすため、Xやインスタグラムを始めています。交流の機会を増やしニーズを探りながら、さまざまなアプローチの仕方を模索していきたいと考えています」というのは同会常務理事の横山孝子さん。若年層に限ったものではありませんが、オンラインやオンデマンドによる研修を増やし、活用しやすい環境づくりにも努めているといいます。



今後の研修を考えるうえで不可欠となる視点とは
同会では2025年度の教育研修テーマの1つとして災害支援に力を入れてきました。リーダーシップやマネジメント能力に重点を置いた「レベル別(看護実践能力習熟段階別)災害看護研修」を新たに開始し、新人向けにはオンデマンド研修の配信を実施。東京都潜在看護師等登録制度の研修プログラム作成やシステム運営も受託しています。
「このように1つの分野のなかでも、さまざまな角度からより多くの看護職が活用できる研修企画を準備しています。特にリーダーシップやマネジメントに関する研修などは個別の施設内でつくりあげるのは難しい面が多い。そういう場合には、本会の研修を各施設の院内教育プログラムに組み込むという考え方もあると思っています」(柳橋さん)
横山さんによるとすでにそういう事例もあるようで、今後の活用も期待されるといいます。
医療DXの導入が進むなか、研修にもそれに応じた変化が求められています。
柳橋さんは「今後ITを使いこなす世代が中心にな ってくることを考えると、それに対応した研修が必要になる。まずは看護学生も含め若い人と交流を図り、研修の見直しにもつなげていきたいですね。現場でのITの活用にはしっかりとしたシステムとルールづくりが大前提ですが、例えばAIをシミュレーション研修などに用いることは可能かもしれないと個人的には思っています。若い人にもそういうことを考えてほしい。その機会をつくることも大切になるでしょう」と話します。
さまざまなかたちで提供する「交流」は研修を構築するための同会のキーワードであるようです。
公益社団法人東京都看護協会
東京都新宿区西新宿4-2-19
https://www.tna.or.jp

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2026年1月号 TiaraNo.158より転載しています。
