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第59回 日本糖尿病学会年次学術集会 ランチョンセミナー14 糖尿病内科に求められる“Act Against Amputation”のサムネイル画像
解説
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小林寅喆

東邦大学看護学部感染制御学 教授

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2016年5月19~21日、第59回日本糖尿病学会年次学術集会が京都で開催されました。増え続ける糖尿病の治療のあり方が問われるなか、最新の知見が結集、19日に行われた「糖尿病内科に求められる“Act Against Amputation”」では 、糖尿病患者さんの足の切断を防ぐために医療従事者が取り組むべき課題が提示されました。
今回はその様子をレポートします。


糖尿病患者の増加と足病変の現状

厚生労働省の患者調査によると、糖尿病の患者数は、2011年には約270万人(文献1)、2014年には約316万6,000人(文献2)と、年々増加しています。糖尿病の合併症の1つでもある足病変は、60歳以上のおよそ700万人にみられ、重症化して、足の切断に至る患者さんは年間約1万人に上るといわれています*1。

下北沢病院糖尿病センターのディレクターである富田益臣さんはこうした現状を踏まえ、今後も高齢化の進展により糖尿病患者数が増えるとともに、足病変の患者さんも増加していくことが予想されると話します。

また、足病変の治癒には長い期間を要すること、特に高位切断例では予後が思わしくない(文献3、4)実態を伝え(図1)、次のことを強調しました。

糖尿病足病変の主な治癒日数と予後説明図

「何よりも大切なことは、足病変の予防と早期発見です。そこで、医療従事者は足をみて“何が危ないのか”“いつ受診させるのか”という共通のアラームをもち、患者さんに“どうなったら危ないのか”“何が危ないのか”をきちんと伝えることが重要です」

足病変の発症リスク因子には、主に神経障害、血流障害、高足底圧(足底腱膜の肥厚)の3つがあり、これらの因子について、事例を挙げて、診断の経過や治療などの解説がありました。

血流障害のある患者さんの例では、陥入爪からの感染により壊疽が生じ、足背動脈の血管内治療を行ったものの、足趾までは血行が改善されず、切断の検討に至ったといいます。また、重症下肢虚血の患者さんの例では、典型的な症状である間欠性跛行がみられない人も多いことから、あらためて早期発見・治療の大切さと難しさが示されました。

*1 日本フットケア学会、日本下肢救済足病学会、日本メドトロニック調べ。

足診療の体制とチーム医療

富田さんは、日本における足診療の現状についても言及しています。東京都済生会中央病院の糖尿病患者さん1,105人を診察する医師16人に行われた調査報告によれば、足の診察状況はわずか5.3%だったとのことでした(文献5)。

足の診察には、血流、皮膚・爪、神経、筋・骨格、歩行などにかかわる複数の関係する診療科の知識が必要であり、難易度が高いとしながらも、平成28(2016)年度診療報酬改定で加わった「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」についても触れ、次のように説明しました。

「下肢切断に至ると、医療機関における人員不足、患者さんの通院困難、循環動態の変化、ADLの低下による全身状態の悪化などさまざまな問題が生じます。そこで、早期に足病変に対応しようと、この加算が新設されたのです。こうした足の診察を推進する流れは今後も続いていくと考えています」

また、アメリカ、カナダなど海外20カ国では、すでに足の診療に必要な知識を備えている“podiatrist(足病医)”が存在していることが紹介されました。その一方で、日本では、関係する診療科による連携した診療体制やチーム医療の取り組みが浸透していない現状があり、これらの推進を図っていくことが必要であると指摘します(図2)。

日本の足の専門医分類図

さらに、今後は早期発見から治療まで一貫して管理できる専門施設をつくることが課題であるとし、その先駆けとして、下北沢病院に足病総合センターが2016年6月に開設予定*2であると報告しました。

*2 2016年6月6日に開設され、診療が開始されました。

Act Against Amputationの取り組み

富田さんはまず、糖尿病足病変をマネジメントするために重要な5つの要素(図3)を挙げ、足病変の予防には外来での足のスクリーニング、セルフケア教育や定期的なフットケアの実施が大切だと話します。

糖尿病足病変をマネジメントするための5つの要素説明表

一方でこれまでの経験から、教育入院やフットケア外来に力を入れていても、足病変の発症・再発を完全に防ぐのは難しいと話したうえで、多くの人に足病変について知ってもらうことが大切だとし、自らが参加する「Act Against Amputation (AAA) 」( 代表理事・杏林大学医学部形成外科大浦紀彦教授)の取り組みを紹介しました。

AAAは、下肢の切断を減らすために、患者さんとそのご家族、医療従事者にとって必要な情報の集約・発信・啓発を目的とした一般社団法人です。富田さんは、特に患者さんから患者さんへ伝える情報が有効だと話し、AAAから糖尿病ネットワークを通じて発信している患者さんの手記を紹介しました。

そして、「糖尿病足病変の予防には、患者さんの社会・臨床背景からリスクを予想し、ハイリスクの患者さんからアプローチしていくことが大切」だとし、AAAのウェブサイト(http://www.dm-net.co.jp/footcare/aaa/)で公開されている「AAAスコアシート」の活用を勧めました。

さらに、「内科医、糖尿病療養指導士そして看護師が足のアライメントの異常や神経・血流障害を早期発見して介入していくことが必要です。ぜひ一緒に取り組んでいきましょう」と呼びかけ、AAAの取り組みを次の3点にまとめました。

「これからの10年間で、①予防的な取り組み、②足診療の標準化、③早期介入と重症化予防のためのチーム医療の構築、が課題です」

座長である、かなもり内科の金森晃さんは「足病医のいない日本では関係する診療科や多職種が連携しながら、各施設で足診療の体制をチーム医療として整えていくことが大切です」と言葉を結びました。

引用文献

1)厚生労働省:平成23年(2011)患者調査の概況
2)厚生労働省:平成26年(2014)患者調査の概況
3)Pickwell KM, et al:Diabetic foot disease:impact of ulcer location on ulcer healing. Diabetes Metab Res Rev 2013;29:377-83.
4)Goldner MG:The fate of the second leg in the diabetic amputee. Diabetes 1960;9:100-3.
5)Kabeya Y,et al:Quality control in diabetes care using a method of statistical process control.Diabetology Int 2014;5:219-28.

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