検査値が何を示しているのか、また検査データを踏まえてどのような看護を行えばいいのか、実際のデータをもとに読み解いてみましょう。今回は、「DIC(播種性血管内凝固症候群)」です。
事例
6カ月前から出てきた紫斑が急激に広がったために来院した患者さん(女性80歳)で、主訴・症状は以下のとおりでした。
息切れ(2カ月前から)
紫斑(手足/6カ月前から)
検査データ[入院時]
赤沈
- 赤沈(mm/時):3
血液一般検査
- RBC(万/μl):289
- Hb(g/dl):9.6
- Ht(%):28.5
- WBC(/μl):7000
- 好中球(%):70
- 単球(%):8
- リンパ球(%):22
- Plt(万/μl):6.4
凝固検査
- APTT(秒):57.0
- APTT 対照(秒):35.0
- PT(秒):14.2
- PT 対照(秒):12.0
- FIB(mg/dl):53
- FDP(μg/ml):80
- D-ダイマー(μg/ml):50
検査値の読み方のポイント
6カ月前から出てきた紫斑が急激に広がったために来院した患者さんです。
血液検査では、Plt(血小板数)が6.4万/μlとかなり低値です。そのため出血傾向となり、皮下出血(紫斑)が出現したと考えられます。血液凝固検査では、PT(プロトロンビン時間)が14.2秒、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)が57秒と、基準値よりも延長が認められます。
一般にPTの基準値は10~12秒、APTTは30~40秒で、対照値よりもPTで2秒以上、APTTで10秒以上長ければ異常とされます。いずれも抗凝固薬の効果の鑑別にも用いられ、PTはワーファリンで、APTTはヘパリンで使用されます。
そのほか、凝固因子であるFIB(フィブリノゲン)とその分解産物であるFDP、D-ダイマーの値もみます。FIBは53mg/dlと低値で、FDPが80μg/mlと上昇、D-ダイマーは50μg/mlと高値を示しています。
FDPは、止血するために働いたFIBによってできた過剰な血栓が溶かされるとき(繊維素溶解現象/線溶)に作られます。D-ダイマーは、さらにその一部として発生するフィブリン分解物です。両者とも異常値なので、血栓形成と線溶が亢進していることがわかります。
ここでは、赤沈(赤血球沈降速度)にも注目します。赤沈は、FIBの増加とRBCの減少で亢進します。FIBは凝固因子であるとともに、炎症で増加する性質があります。そのため、炎症でFIBが増加すると、赤沈は亢進します。つまり、赤沈は炎症で亢進することになります。
この患者さんは貧血でRBCが減少しているので、赤沈が亢進してもよいのですが、3mm/時と遅延していました。これはFIBが減少していることを強く疑わせます。
診断のポイント
PTの延長、Pltの減少、FIBの減少(赤沈遅延から間接的に疑われる)、FDPの上昇という4つの結果から、DIC(播種性血管内凝固症候群)であると診断されます。これらの4項目は、DIC基準として診断の指標となっているものです。

DICの診断スコア(厚生労働省基準)

DICの診断スコア(厚生労働省基準)
診断・経過観察時に必要なその他の検査
DICの原因疾患の鑑別のため、血管造影検査を行いました。その結果、血栓性静脈炎が発見され、それが慢性のDICを引き起こしているという珍しいケースであることがわかりました。
看護のポイント
インスリン濃度を間違えず、確実に投与
患者さんは糖尿病性ケトアシドーシスによる意識障害であることから、まずは、脱水の改善と血糖値を安定させるため、大量輸液とインスリン投与が行われます。インスリン濃度を間違えず、確実に投与することが大切です。
凝固系のデータを監視しながら、DIC症状を評価
DICの多くは重症疾患を基礎疾患とし、それに伴って発症します。したがって、基礎疾患の治療によって全身状態が安定してくれば、DIC症状も安定します。症状の改善には抗凝固療法が行われます。凝固系のデータを監視しながら、DIC症状を評価していくことが大切です。
ただし、治療開始時にはまだ微小血栓があるため、二次的に脳や肺など、どこかで塞栓が生じる恐れがあります。患者さんの全身状態のアセスメントを慎重に行う必要があります。
出血しないように注意
出血傾向であることから、採血時、口腔ケアや清潔ケアを行うときは、出血しないように注意し、事前には異常出血がないかも確認します。紫斑がみられる場合には、マーキングをし、紫斑の拡大があるかどうかを観察します。患者さんのADLが自立している場合は、出血しやすい状態であることを説明し、生活指導を 行うようにします。
原因疾患を確定する
この症例の患者さんは、検査結果から二次性病変が考えられるため、原因疾患を確定する必要があります。線溶亢進型か凝固優位型なのかを見極め、適切な治療が選択できるようにする必要があります。この患者さんの場合、高齢でもあるため、自覚症状が捉えにくい可能性があります。
十分に観察し、検査データなどから客観的に評価する必要もあります。
(『ナース専科マガジン』2013年8月号から改変引用)
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