ペースメーカー挿入中の患者さんが心停止! どう対応する?のサムネイル画像
執筆
Pのプロフィール画像

P

看護師 ライター 診療看護師(NP)

執筆者の記事一覧

「モニター波形」と「実際の心収縮」はイコールではない

まず整理しておきたいのは、「モニター上に波形が見えていること」と「循環動態が保たれていること」はイコールではないということです。

モニター心電図が見ているのは、「心臓の動き」ではなく、あくまで「心臓の電気的活動」です。本来、心臓は電気的刺激が生じたあとに収縮・拡張を行いますが、刺激があっても心筋が正常に収縮しなかったり、収縮しても十分な量の血液を送り出せなかったりすることがあります。実際の心筋の収縮や全身に血液を送り出せているかどうかをモニター心電図のみから判断することはできません。

特に、ペースメーカー挿入中の患者さんの場合、スパイク波形やペーシング波形が表示され、心臓が動いているかのようにみえます。しかし、これは単に「ペースメーカーから電気的刺激が出ている状態」を表しているに過ぎません。電気的刺激があっても、心臓が動かなければ全身に血液が送られず、意識の消失や脈の触知不能を起こし、心停止に陥ります。

つまり、「ペースメーカーが電気的刺激を出すこと(ペーシング)」「その刺激で心臓が実際に収縮すること」「収縮の結果として有効な血流が生じること」は、通常は一連の流れとして連動していますが、最後まで正常につながるとは限らないということです。モニター上に電気的刺激(波形)が見えていても、途中の連動が途絶えて循環が保たれないケースがあると知っておくことが重要です。

患者さんの状態を優先して判断・対応する

心停止しているにもかかわらず、モニター上で波形が見えていると、「本当に心停止なのだろうか……」と判断に迷う場面もあるでしょう。

しかし、心停止の判断は波形だけで決めるのではなく、常に患者さんの状態を優先して判断します。意識がない、声をかけても反応がない、正常な呼吸がない(あえぎ様呼吸など)、頸動脈で脈が触れないといった場合は心停止と判断し、ただちに応援を呼び、心肺蘇生(CPR)を開始します。また、脈が触れているかどうか判断に迷う場合であっても、呼びかけに反応がなく、正常な呼吸がなければ、心停止とみなして動き始めるのが最も安全です。

例えば、モニター上は60回/分で規則的なペーシング波形が出ていたとしても、意識や正常な呼吸がなく、頸動脈も触れなければ、心停止として対応を進めます。その際、動脈ライン(Aライン)が留置されていれば動脈圧波形を確認し、波形が平坦であれば循環動態が保たれていないことが裏付けられます。

また、SpO₂モニターでの脈波の変化や人工呼吸器管理における呼気二酸化炭素(EtCO₂)波形の急激な低下も、循環停止を判断する重要な情報となります。医師への報告と並行してすぐに応援を呼び、集まったスタッフと心停止であることを確認できたら、ペースメーカーの有無にかかわらず、ただちにCPRを開始します。

看護師に求められるのは、心電図の波形だけにとらわれず、目の前の患者さんの状態を踏まえて判断・対応していくことです。たとえペーシング波形が見えていても、患者さんの反応がなく、正常な呼吸や脈がなければ、心停止としてCPRを開始するという基本を徹底し、迅速な救命活動につなげていきましょう。

\ この記事をシェアする /