重症不整脈(無脈性VTとVf)のアルゴリズムと対応のポイントのサムネイル画像
解説
持田 麻矢のプロフィール画像

持田 麻矢

聖マリアンナ医科大学病院 救命救急センター 熱傷センター 主任 集中ケア 認定看護師

解説者の記事一覧

重症不整脈とは

心室頻拍(VT)

 VT(心室頻拍:ventricular tachycardia)とは、心室期外収縮(VPC)が連続して発生し、心拍数が100 ~ 250回/分になる頻脈をいいます。幅広いQRS波(0.12秒以上)が規則正しく連続して出現します(図1)。病態生理としては、心室においてリエントリーまたは異所性刺激が連続して発生することにより、VTが出現します。

VT(心室頻拍:ventricular tachycardia)の心電図の波形
平手裕市 著:平手先生のモニター心電図講座ベーシック編、エス・ エム・エス、2012、p80.

 頻拍の持続時間により「非持続性心室頻拍(Non-sustained VT)」(持続時間が30秒以内)と「持続性心室頻拍(sustained VT)」(持続時間が30秒以上)などに分類されます。

 VTでは、血行動態が安定していれば意識は清明で、動悸や呼吸困難が主症状となりますが、血行動態が悪化し心拍出量を保つことができなくなれば、意識を消失します。血行動態が安定しない、脈を触れることができないVTを「無脈性VT(pulseless VT)」といいます。これらは心室細動(Vf)に移行する可能性があるため、緊急処置を要します。

心室細動(Vf )

 Vf(心室細動:ventricular fibrillation)とは、心室筋細胞がばらばらに興奮をしている状態で、突然死の原因の多くを占める非常に危険な不整脈です。振幅も周波数も全く不規則な波が連続して見られます(図2)。

Vf(心室細動:ventricular fibrillation)の心電図波形
平手裕市 著:平手先生のモニター心電図講座ベーシック編、エス・ エム・エス、2012、p81.

 心室全体が無秩序に収縮、拡張を起こしているため、正常なポンプ機能を維持することができなくなります。そのため、心拍出量を保つことができず、脳や全身に血液を送ることができなくなり、その状態が持続すると短時間で死に至るため、緊急処置を要します。

無脈性の心室頻拍(VT)・心室細動(Vf)への対応

Step1〜5 BLSを実施する

基本的には心停止を発見したときと同様の対応になります。「心停止[心静止・PEA(無脈性電気活動)]への急変対応 6ステップ」と同様、BLSを実施します。このときに、AED、もしくは除細動器を依頼することを忘れずに行いましょう。

Step6 ALSを実施する

 医師や急変対応システムが到着したら、CPR(心肺蘇生)を続けながら、まずは状況を医師に伝えます。医師の指示に備え、気管挿管の準備と静脈路の確保をします。

無脈性VT/Vfの場合には、除細動と抗不整脈薬を使用します。頸動脈拍動が確認できず、モニターで無脈性VT/Vfが確認されたら、まずは除細動(二相性:120 ~ 200J)を行い、直ちにCPRを再開します。CPRを2分間実施したら頸動脈脈拍確認、心電図モニターを確認します。頸動脈脈拍が確認できず、無脈性VT/Vfが持続していることが確認されたら再度除細動を行いCPRを再開します。無脈性VT/Vfの場合にはCPR実施中にアドレナリン1mgの投与と、抗不整脈薬(アミオダロン、ニフェカラント、リドカイン)の投与を行います。また心電図でトルサド・ド・ポアンツ(図3)を認めた場合には硫酸マグネシウムを投与します。

トルサド・ド・ポアンツの心電図波形
大上丈彦 著、森皆ねじ子 著・絵:ねじ子とパン太郎のモニター心 電図、エス・エム・エス、2014、p46.

血行動態が安定している心室頻拍(VT)への対応

Step1 意識を確認する

 まずは意識状態を確認します。血行動態が安定しているVTでは、心拍出量を維持することができている状態にあるため、意識は清明であることがあります。ただし、後に血行動態が不安定になり意識が消失することや、無脈性VT/Vfへ移行する可能性があることを念頭におき、緊急時の対応ができるよう準備を整えておきます。また、冷汗や顔面蒼白などのショック徴候を認めている場合も同様です。

Step2 脈拍、血圧を確認する

 意識を保つことができている場合には血行動態が安定していると考えられますが、血圧を測定し、VTが出現する前と比べて変化があるのかどうかを確認します。

Step3 医師へ報告する

 血行動態が安定しているVTであっても、いつ重症化するかわかりません。また、急性冠症候群や電解質異常などが原因となって生じている現象と考えられます。早期に医師へ報告し指示を仰ぐ必要があります。

Step4 機器、救急カートを準備する

 意識があり、血行動態が安定していれば12誘導心電図記録を行ったうえで、抗不整脈薬を用いてVTを停止させます。血行動態が不安定な場合には、カルディオバージョン(同期通電)が行われることがあるので、除細動器が使用できるよう準備しておきます。また処置中に無脈性VT/Vfへ移行する可能性があるため、心電図モニターの監視を行い、状態変化時には直ちにCPRを開始します。

 抗不整脈薬は、血行動態が安定している場合、心機能正常例にはNaチャネル遮断薬(プロイカインアミド)、心機能低下例には、アミオダロン、ニフェカラントが使用されます。ジギタリスは異所性興奮を亢進させてしまうため、禁忌となります。

Step5 検査の準備をする

 VTが出現した原因を検索するために、血液検査、心エコーが行われるので、検査の準備を整えます。

無脈性VT、Vfの対応チャート
文献❶❷を参考に作成

参考 ・ 引用文献

❶日本救急医療財団、日本救急蘇生ガイドライン策定小委員会:わが国の新しい救急蘇生ガイドライン(骨子)【ALS】確定版(http://www.qqzaidan.jp/qqsosei/guideline_ALS.htm)(2014年11月閲覧)
❷三上剛人:ALS(二次救命処置)、「クリティカルケア実践の根拠」、道又元裕ほか編集、照林社、2012.p26-34.
❸五関善成ほか:心室頻拍、心室細動、「ナースのためのやさしくわかるモニター心電図」、山科章監修、ナツメ社、2007.p58-65.
❹奥村謙:循環器疾患 不整脈、「病気がみえるvol.2循環器」、医療情報科学研究所編、メディックメディア、2012.p102-112.
❺奥村謙:心室頻拍、心室細動、「病気がみえるvol.2循環器」、医療情報科学研究所編、メディックメディア、2012.p128-132.
❻平手裕市 著:平手先生のモニター心電図講座ベーシック編、エス・エム・エス、2012、p80、81.

\ この記事をシェアする /